このたびは、熊本県地震で被害に遭われた皆様には心よりお見舞い申し上げます。
熊本地震は、熊本県を中心に大分県やその周辺地域まで被害をもたらした、いわゆる「直下型地震」です。
平成28年4月14日の前震、4月16日の本震と、震度7以上が連続して襲ったという意味では、未曾有の地震であったといえるのではないでしょうか。
また、本震後の余震も続いており、布田川-日奈久断層系沿いに余震の震源地が移動していくといった現象も想定外だったでしょう。
今回の大地震は、他にも「想定外」がありました。
・当初、活断層分布が想定されてなかった北東方向(阿蘇カルデラ)へ伸びており、大分県側でも被害が大きい。
・地震の象徴をなっている「阿蘇大橋」の崩落。地震動による橋梁上部工が崩落したのではなく、橋梁近傍の山で大規模地すべり性崩壊が発生し、その地すべり土塊で橋梁上部工が押し流された。当初設計では想定しようのない外力による橋梁の被害。
私は、大学で地質学を専攻し、卒業後20年間は土木地質コンサルに携わっていました。今回の大地震ほど、「想定外」のものを感じたと同時に、自然現象の前ではまだまだ知られていないことがたくさんあるものだと痛感しました。
実は、私も、熊本県のあるダム建設に伴う設計にかかわっていまして、布田川-日奈久断層系についても調査したことがあるのですが、北東方向への分布を示す根拠を見つけることはできませんでした。
何故かといいますと、阿蘇カルデラ内には沖積層とよばれる若い年代の地層が被覆しており、活断層の証拠となる段差等の微地形が消されている(見えなくなっている)からなのです。
ちなみに、一般に、活断層の調査方法は、以下の流れで行います。
①
古文書などの文献調査
②
地形解析(空中写真や地形図を解析して、活断層と考えられる段差などの微地形を抽出する)
上記①②の結果により、活断層と疑われる場所について③~⑤の詳細な調査を行います。
③
現地踏査(現地で微地形を確認)
④
物理探査(間接的観察方法:人工的な地震を起こして地下の断層分布を調べる)
⑤
ボーリング調査やトレンチ調査(直接的観察方法)
一番有効なのは、⑤のトレンチ調査(大きな溝を掘って断層を直接確認する)ですが、莫大なコストも掛かるし、調査範囲が狭く、いわゆる点でのデータになってしまいます。
このように、断層位置を特定するのでも大変!!
ましてや、その断層が、活断層なのか死断層(活動のないもの)、活断層なら活動はいつなのか?・・・・・・・なんてわかるのは夢のまた夢です。
活地震は、1000年周期で起こるといわれていますが、数100年の誤差は地質時代ではあたりまえ。その誤差は人類にとっては、人の一生涯ぶん。
果たして地震予知ができる日がくるのでしょうか??
容赦なき大自然の脅威!!
日本列島で暮らす上では、「まな板の鯉」かもしれませんね。