西ヨーロッパの旅行と文化の道しるべ | Kunstmarkt von Heinrich Gustav  

Kunstmarkt von Heinrich Gustav  

ドイツの首都Berlin、Brandenburg州及び比叡山延暦寺、徳島県鳴門市の公認の芸術家(画家) Heinrich Gustav(奥山実秋)の書き記した論文、随筆、格言集。

大抵の日本人は余の経歴を知ると、必ずと言っても良い位ヨーロッパの事について色々と質問して来る。
そこで今回は特に質問頻度の高い「西欧旅行」の案内を簡単にさせてもらうのだが、此れはあくまで余個人の知識と経験によるものである。
故にどこまで読者の御役に立てるのか存じ得ない事は了承してもらいたい。
西ヨーロッパ数ある国の中で最も旅行する価値があるのは何と言ってもイタリアイタリアフランスフランスドイツドイツ」の順番であると思われる。

 Veduta aerea di Piazza San Marco,  Venezia ↑

 La Basillica di San Marco,  Venezia

 Palazzo Vecchio,  Firenze

 Cattedrale la facciata,  Firenze

 Colosso,  Roma

 Il Pantheon,  Roma

先ずイタリアイタリアだが、世界で最もUNESCO世界遺産に登録されている場所(2014年現時点で計49か所)が多いだけにヨーロッパで最も観光旅行者の多い国である。

かつて1663年、フランス国王LouisⅩⅣ世によって創設された首都Parisの国立芸大、音大に於けるコンクールで最高位の"Prix de Rome"(ローマ賞)があり、受賞した学生は1~3年間のRoma留学を無償で授かったのである。

(此の奨学金付き留学制度は1968年まで続いた。)

又、余がドイツの芸大在学中に学部長や社会史の教授から、そして其の他のドイツ人の友人達からも、「ヨーロッパの歴史と文化を学習、経験する上でイタリアは最も観る価値のある国だ。」と勧めれれた程である。
主な見所はファッションの本場Milano、水の都Venezia、文化の町Bologna、 Renaissance(文芸復興)発祥の芸術都市Firenze、斜塔で有名なPisa、 Sienaの歴史的町並み、 紀元前からの首都Roma、 南イタリアの最大の都市Napoli等が挙げられる。
又、此の国は1861年にSardinia王国を中心にした国家統一が成されるまで所謂「群雄割拠」の状態であった故、各地方にLokalcharakter(地方性、即ち日本の「県民性」に該当する)が今でも根強く残っている 。
又、物価も大変安い故、文化財や歴史的町並みを探訪するのみでなく、買い物も存分に楽しめる。
特に美術品、伝統工芸品や骨董品等は大変注目に値する。


更にイタリア製品はデザインが優れている事で有名なので、衣料品、革製品、貴金属の装飾品等も魅力的な物が数多くある。
本来イタリア人はラテン系の民族なので、ドイツや北欧諸国のゲルマン民族程、体は大きくないので、服のサイズも比較的日本人に合い易い。
他にも其の地方や町にしかない個性的な品物を購入するのも一興である。
食文化でもイタリア料理は数あるヨーロッパ料理の中で、最も日本人の味覚に適合し易いのではないかと思われる。
何故なら、ドイツ料理やハンガリー料理は肉料理中心の濃口の味付けなのに対して、イタリア料理は魚料理も多く、素材を生かした薄口の味付けだからである。
ただ残念な事に、此の国には泥棒が多い故、美しい景観や買い物に夢中になって貴重品や荷物を盗まれない様に注意が肝心である。
大抵イタリア人は明朗で人懐こくて親切だが、英語は余り通用しないので、ドイツ語等は尚更である。
ただ幸運にも余は特別受講していた医学大学の「解剖学」の授業に必要なラテン語を其れなりに勉強していたので、ラテン語に最も近いイタリア語の旅行で使う単語を直ぐに覚える事が出来た。
そもそもラテン語は紀元前7世紀頃にイタリア半島で確立された言語で、当時の古代ローマ帝国の公用語であった。
ラテン語が近代化したのがイタリア語なので、即ちイタリア語はラテン語の直系の子孫という事になる。
現在ラテン語は話し言葉として使われる事はないが、其れでもヨーロッパの学問のあらゆる分野の専門用語として利用されている。

 L'Arc de Triomphe,  Paris

 Notre-Dame, Paris

 La Tour Eiffel,  Paris

 La Cháteau Versailles

 La Cháteau Versailles,  La Galerie des Glaces

 La Cháteau Versailles,  La Salon de Mars

次にフランスフランスだが、この国民が「我らが"Hexagone"(六角形の国)には何でもある。」と言う様に、国土もヨーロッパで最も広くそれぞれの県や都市で様々な異なる文化や自然を体験出来る。(UNESCO世界遺産は現時点で計38か所)
主な見所として、「花の都」と称される首都Parisは19世紀前半までは街路が雑然と入り組んだ複雑な構造だったが、1850年代に時の皇帝Napoleon3世によって現在の「凱旋門」を中心とした放射線状の整然とした構造に大きく変貌した。

Paris市内の数多くの文化財の中でも芸術家の余としては何と言っても世界最高峰の美術館Musée du Louvreが最も見る価値があった。
其の郊外に立つVersailles宮殿は"Le Roi Soleil"(太陽王)Louis.14世の命令によって建設されたヨーロッパ最大のBarock様式の宮殿で、ヨーロッパ各国の王宮が此の宮殿を手本に建てられた。
其の他、北部ではGotik様式のKathedrale(大聖堂)としてAmien、 Rouen、 Reims、 Chartres、 Strasbourg、そしてMt. St.Michelの修道院が見応えがある様である。
西部ではChâteau de Chambord、Château de Chenonceau、Château d'Amboise等のLoire川沿いの城郭群が非常に魅力的である。  
聞く処によると一方南部では、保養地で有名なNice, 古い港町Marseille、そしてMontpelierの歴史的町並み等も面白いそうである。
日本人はフランスと聞くと、どうしても首都Parisを連想する人が圧倒的に多い。
しかし、実際此の国はヨーロッパ最大の「農業国」なのである。
おかしな表現をする様だが、此の国を人間に譬えると、頭(首都)が芸術家で体(地方)は農業者なのである。
だから昔の貴族に代表される様な優雅で華美な生活を送っているのは、首都Parisに住む一部の上流階級の者だけであって、地方の大多数の国民は寧ろ素朴で質素な生活を営んでいる事が多い。
例を挙げれば、日本では高級洋食の象徴である「フランス料理」は実際の処、専らParisの上流階級の食文化であって、他の地方の料理はより素朴、質素でいて、其の地方独自の特色があるのが面白い。
日本政府は自国の農業を余り重宝していない様だが、其れに対しフランスの政府や自治体は自国の農業を本当に大事にしているので、日本がフランスから最も学ぶべきは此の事ではないかと思う。
又、フランスもイタリア同様に物価も日本に比べると安いので、文化財や歴史的町並みを探訪するだけでなく、買い物も十分に楽しめる。
一般的にフランスの特産品と云えば、やはり世界的に認知度が高いのは香水、化粧品、衣料品、美術工芸品、等であろう。


フランス人も又、イタリア人同様にデザイン感覚が優れているので、両国で衣料品はブランド品以外にもお洒落な物、面白い物が結構見つかる。
又、元来ラテン系の民族なので、体は左程大きくないので、服のサイズも比較的日本人に合い易い。(ただサイズ表示は日本とは異なるので、注意が必要である。)
裏話として何故フランスでこうも香水が普及したかと云うと、前記の通り首都Parisは19世紀前半までは複雑な構造であった上に、衛生面でも立ち遅れていた。
故に(信じられない様な事だが)当時は家庭の排泄物を家の窓から路上に投棄する事が常識の如く行われていたのであった。
其れ故に往時のParisの街路では排泄物が散乱し、悪臭が漂っていたそうである。
しかもヨーロッパ人は殆どが「肉食文化」に属している関係で、アジア人に比べて体臭が強い。
其の臭いを誤魔化す為に普及したのがParfum(香水)だったのである。
そして過去の衛生上の問題を払拭すべく、1850年代の大規模な首都改造計画によって多くの下水道が新設されたのである。
御陰でParisの下水道普及率は、現在でもヨーロッパ第1位なのである。

扨、余は思うにこの2国のParis, Milano Collectionのブランドはは言うまでもなく世界的に知られ人気も高いのだが、現地人達から聞く話によると、彼らは(Paris, Milano Collectionのブランド店の従業員ですら)日本人のブランド品好きには有り難いどころか、寧ろ呆れ返っている様である。
現地の歴史や文化に殆ど興味を示さず、これ等のブランド品を見境も無く買いあさっている輩は大抵の場合、無学、無教養な庶民出の「成り上がり者」か、虚栄心と自己顕示欲だけが旺盛な低能の「見栄っ張り」かのいずれかである。
貴族的な考えを述べるのだが、高貴な血筋に生まれし者は其の「家柄」自体がブランドみたいな物なので、自分を必要以上に誇示する必要は無いのである。
"Sei bescheiden im Wohlstand !"「裕福の中にも慎みを持て!

」此れが各国の貴族の家訓なのである!

家柄、能力、個性、容姿にも恵まれず、ブランド品を身に着けないと自分の存在すら示す事が出来ない連中を余は半分滑稽、半分哀れに思えるのである。
更に※歴史的背景を元に考察してみると、此の様な傾向のもう1つの原因として、アジア人のヨーロッパ人に対する憧れと人種的な劣等感があるのではないかと推測される。
(※19世紀の終盤になると、日本とシャム(現在のタイ)以外のアジア諸国は悉くヨーロッパ列強国の植民地にされて支配を受けていた。)

 

 Berlin Stadtzentrum mit Schloß u, Kirchen (um 1865)

 Schloß Sans Souci  Potsdam (Brb)

 Bremer Rathaus (HB)

 Herrenhausen  Hannover (Nsa)

 Stadtzentrum  Hameln (Nsa)

 Dom zu Köln (N-W)

 Römer Rathaus  Frankfurt a,M (Hes)

 Burg Gutenfels und Pfalzgrafenstein am Rhein (R-P)

 Stadtansicht  Heidelberg mit Schloß (B-W)

 Stadtansicht Schwäbisch=Hall (B-W)

 Residenzschloß Würzburg (Bay)

 Schloß Neuschwanstein (Bay)

 Schloß Waldburg  Eisenach (Thü)

そしてドイツドイツだが、実は余自身が学業と仕事(芸術活動、其の他)の為、1989年から2003年まで足掛け13年も住んで、16個のBundesland(州)全てに於いて主要美術館、博物館並びに数百件の城、宮殿、教会、市庁舎、其の他の文化財を観て回って来た国であるので当たり前の事の様に知っている!
増して我がドイツ人の(高学歴な)友人達でさえ>Du kennst Deutschland mehr als uns !<(君は私達より遥かにドイツを知っている。)と言う位である。
此の国の特徴として、1871年に我がPreußen王国が国家統一を成し遂げるまでの長い歴史の中で「群雄割拠」していた事から、各地方にLokalcharakter(地方性)がイタリア同様に今でも根強く残っている事である 。
更に第二次世界大戦後の東西分裂から1990年に再統一されるまで約半世紀に亘ってほぼ断絶していたので、東西の国民の生活水準や感覚に大きな隔たりが今でも見受けられる。
此の国を知り過ぎている余としては何処から紹介すれば良いのか迷ってしまうのだが、日本人に最も人気のある西側の観光地として、Romantischer Straße(ロマンチック街道)、 我が最初の学習地Bremenから HamelnにかけてのMärchen Straße(メルヘン街道)、Burgen u, Schlößer am Rhein(ライン川沿いの城郭群)、ヨーロッパ最大のDom zu Köln(ケルンの大聖堂)、歴史都市Heidelberg、 南ドイツ最大の都市München、Schloß Neuschwanstein(ノイシュヴァンシュタイン城)等が挙げられる。
Deutsche Einheit(ドイツ統一)以来、西側の国民が旧東ドイツにも簡単に旅行出来る様になって以来、我が地元である首都Berlin、Preußenの宮殿都市Potsdam、"Kunststadt"(芸術の都)と称される我が母校のあるDresden、ヨーロッパ最初の陶磁器の町Meißen、 学問の町Weimar、 Waldburg城と大作曲家J.S.Bachの生地として有名なEisenach等も人気がある。

(同ブログの記事「奇跡が起こった!ドイツ統一と我が学生時代、そして芸術の都Dresdenの復興」参照)

次にドイツ製品について記すのだが、全く"Deutsches Temperament"(ドイツ気質)とは何事も徹底的にする完全主義的な所があって(余自身もそうなのだが)、あらゆる製品の完成度が高く、手抜かりが無いのである。
実例として、機械製品、陶磁器、金属製品、木製品、ガラス製品、皮革製品、文房具、印刷物、CD、等は全て世界最高水準を満たしている


一般的にドイツ製品は同じ物品でもフランスやイタリア製品に比べて値段が高い。
其れは何故かと言うと、ドイツ製品は他のヨーロッパ諸国の製品と比べても、材質はより優れた物を使っているし、製作の上でもより高度な技術と正確な検査と確実な管理をしているからなのである。
又、技術者のAusbildung(教育、育成)に於いても他国を凌ぐ高い水準で行われている。
ドイツ企業のProduktkonzept(製作概念)を日本企業の其れと比較しても、日本の場合は購買者の需要や要望に適合させる「客観型」なのに対し、ドイツの場合は自分達独自のProduktkonzept(製作概念)を打ち立て、其れで購買者を納得させる「主観型」なのである。
両国の製品は世界でも最高級と讃えられているが、此れが根本的な違いなのである。
技術や製品のみならずドイツ人は生活に於いても徹底的なRationalismus(合理主義)を採っている。
生活用品でも出来る限り修理して使い続けるし、リサイクルも積極的に行っている。
従って廃棄物の量がヨーロッパ最大の工業国としては意外な程少ない。
使えなくなった物をすぐ捨てる日本人は、特に此の事をドイツ人より学ぶべきではなかろうか。

地球飛行機以上の通り西ヨーロッパ3国について簡単に紹介して来たが、正直申して余は(ほぼ完全に感覚がドイツ人化した者として)ヨーロッパを旅行して感動出来る人を羨ましく思ってしまう。
大文豪J.W.v.Goethe先生の言葉>Wenn schöne Regenbogen über viertel Stunde dauert, betrachtet niemand mehr .<(美しい虹も15分以上続けば、誰も見なくなる。)の如く、ドイツでの生活や其の他のヨーロッパ諸国(デンマーク、オランダ、スイス、オーストリア、チェコ、ポーランド、他)への旅行に慣れ過ぎた者には、最早大きな感動は無いのである。

又、日本にも「来て見れば、左程でもなし、富士の山」と言う川柳がある様に、世界的に有名な観光名所が必ずしも大きな感動や美しい思い出をもたらすとは限らないのである。

余の個人的な経験からしても、旅行とは最初は名所から始めても、結局は自分が本当に観たい物や、経験したい所を訪ねて行くのである。

ヨーロッパの文化に慣れ切った余は寧ろ日本の伝統文化や工芸品、仏教、古典芸能を嗜む人の方にずっと魅力を感じてしまうのである。
残念な事に最近の日本人の若い世代では自国の歴史、伝統、文化に関心を持つ人が減りつつある様である。

明治初期に日本で西洋式技術教育の発展と、日英関係に貢献したイギリスの技師、教育者のHenry Dyerは「日本人は我々の文明を自分達の発展の為に利用するだけで良いのだ。自分達の過去を忘れて外国の真似ばかりする国は永遠に偉大な国家には成り得ない。」と言っている。
又、同時期に来日したドイツ人建築家Hermann Endeと共に幾つもの西洋式の国家建造物を設計したドイツ人建築家Wilhelm Böckmannも日本の歴史、文化、自然に深く感動し、帰国後

"Reise nach Japan"(日本旅行記)を1886年に著した位である。
更には、明治時代に日本に招かれて29年に亘る滞在期間に西洋医学を普及、発展させたドイツ人医師 Erwin von Bälzでさえ、洋服は日本人の体形に相応しくない事や、当時の日本政府が極端な「欧化主義」に奔走した事を戒めていた位である。
其れは明治時代であろうと今日であろうと同じ事で、欧米人が敬意や魅力を感じるのはあくまで「日本の伝統文化」であり「日本人らしい日本人」なのである!
余は相変わらずドイツとは「腐れ縁」で、今でも此の国を主題にした作品を毎日の様に描いては公共事業としての個展を徳島県の鳴門市ドイツ館にて、2008年以来毎年繰り返している状況である。
其れだけに日本人には是非とも自国の伝統文化や工芸品、仏教、古典芸能や美徳を大切に後世まで守り伝えてもらいたいのである!


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