「三河物語」を読む | Ma vie en Citroen C5 et C6 ハイドロファン シトロエンC5とC6 との日々のブログ

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古典が好きだけれど、難解な文体や表現が無理という人のために現代語訳した古典が売られています。私は高校生の頃に教育社新書の原本現代語訳シリーズを結構読んでいました。その中のお気に入りが大久保彦左衛門著の「三河物語」です。この本には徳川家と大久保家の深い関わりについて書かれているだけでなく、徳川家の苦難の歴史についてよく書かれています。最終的には天下を取った家康ですが、その人生は苦難の連続だったと言えます。そんなことも今のような困難な時代に大河ドラマなどで家康の生涯が取り上げられる所以でしょう。

 家康が多くのピンチを乗り越えて天下を取るまでに至った理由についてはさまざまな分析があるようですが、歴史家の磯田道史氏はあるテレビ番組の中で、「恨みを克服し、敵であった者も寛大に許し、自分の力として取り込んでいったこと」を挙げていました。

 例えば、若き家康、最大のピンチであった三河一向一揆では徳川家臣団が信仰と主家への忠誠の間で分裂してしまい、後に有力なブレーンとなる本田正信なども一向一揆側に与し、敵対したにも関わらず、寛大に許しています。また、三方ヶ原の戦いで武田軍に手痛い目に遭い、打ち取られる寸前のところをやっと逃げた家康ですが、後に、武田氏が滅亡した後はその遺臣を大量に自軍に迎え入れています。

 このような「恨みを克服する力」によって徳川家は強くなったという側面もあると分析しておられました。

 

 一方、私たちの生活ではどうでしょうか。皆さんは他人に受けた仕打ちを綺麗さっぱりと忘れられる方でしょうか。それとも、恨みを忘れずにきっちりと報復する方でしょうか。私は元来が、忘れっぽい性格なのと気分が変わりやすく、一つの気持ちを維持するのが難しく、結構忘れてしまう方です。

 後は、恨みや怒りなど負の気持ちに任せて行った行動は後から振り返ってみると負の結果を呼んでも、プラスの方向になったことがないような気がします。一時的な感情に任せた行動は後悔することばかりです。

 自分にも忘れがたい経験があります。ある営業所で上司に仕事のミスの責任をごっそりなすりつけられただけでなく本社に内部告発されたことがあります。会社的に私の落ち度とされて処分もくらい、その仕事の後始末もさせられ大変な目に遭いました。自分を告発したその上司を心底憎んで、本当に倒してやろうとも思いましたが、時間が経つうちに、その上司を憎んで仕返しを考えている自分が嫌になったのと、このまま他人を憎み続けるだけの自分がおぞましく、かつ、そこから何かが生まれてくるとは到底思えず、本当は、はらわたが煮えくりかえる思いでしたが、その上司が人事異動となり、送別会の時に私はその上司に腕時計を贈りました。周りのみんなからは「おまえは馬鹿だ」と言われましたが、そのとき何故か恨みを恨みで返すのではなく、自分が誰に対しても正しい行動を取ることが一番自分が後悔しない方法だと思えたのです。仮に復讐してやり返しても自分が汚れてしまい、さらなる空しさや惨めさしか残らないと思いました。その上司が送別会の時に私に言いました。「自分の息子は高校生で免許取り立ての時に死亡事故を起こしてしまい、妻は仕事で重い障害を負って、自分ほど不幸なやつはいないと思い、それ以来、他人が疎ましく思え、おまえにもあんな仕打ちをしたのに、おまえはよく働いてくれた」と言いました。そんな話を聞いたら彼がとても惨めでかわいそうになりました。甘いと言われるかもしれませんが、一見極悪非道なやつでももみんな理由があり、そのバックボーンが分かるとその寂しさが分かります。人間なんて所詮寂しい存在です。しかも、人生は本当に短いです。その短い人生を人の汚い部分を見て嫌な気持ちで過ごすのか、それとも、人の美しい部分を探し求めて豊かな気持ちで過ごすのかを考えると自ずから結論は出ます。例えるなら、世界には不毛な砂漠もあれば、心から感動するような絶景もあります。自分は不毛な景色を見て嘆いて生きるより、そんな美しい景色を見て心豊かに生きていきたいと思います。とにかく「悩んだら人として一番正しいと思うことをやる」というのは短期的にはマイナスに思えても、長期的には一番良い結果を生むように思います。何より自分の心がとても楽になったと思います。

 

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