sphereと乗り心地の関係(sphere damperの重要性)について | Les Citroen dans la Vie ハイドロファン シトロエンC5 シトロエンC6 と日々のブログ

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ハイドロシトロエンには様々な種類のsphereがあるために、形状・容積・窒素圧・orifice径などこれらの物理的な要因がサスペンションの快適性に「どのように」、「なぜ」影響するのかを理解するのは簡単なことではありません。
 ハイドロシトロエン乗りなら、誰でも経験から分かることは、ガスが抜けてsphereの圧力が低下すると乗り心地が悪化するということです。一見、同じ容積なら、ダンパーのように気体の圧力が小さい方がサスペンションは柔らかいのではと思われます。私の知り合いの理科の先生もそう答えました。しかし、ハイドロニューマチックシステムでは真逆になります。それはポンプによりシステムが常に145~170barに加圧されているからです。
 便宜上、単純化して考えてみます。例えば、400ccで初期圧力40barのsphereがあるとします。初期圧力とはsphereに刻印されている圧力です。そして、サスペンションシステムの動作圧力が100barだと仮定します。イグニッションをオンにすると、サスペンションが定位置になるためにオイルがポンプによって送り出され、sphere内の窒素が動作圧力の100barまで加圧されます。高校の理科で習ったボイルの法則で、温度が一定なら気体の体積×圧力は一定なので、そのときの体積は400×40÷100=160ccになります。
 もし、同じ容積で初期圧力80barのsphereなら、動作圧力100barまで加圧されたときの体積は400×80÷100=320ccになります。同じ動作圧力ならば、よりガスの体積が大きいsphereの方が、初期圧力が動作圧力を超えていない限り、柔らかいということになるでしょう。また、sphereのダンパー穴orificeが大きい方が減衰力が低く、乗り心地が柔らかく感じられるというのも穴ほじりをしたことがあるハイドロ乗りならば経験するところです。

 つまり、容積が大きく、窒素圧が高く、orifice径が大きいsphereほど乗り心地が柔らかいと考えて良いと思われます。

 

 

上の表は私が調べた各種sphereの容積・窒素圧・orifice径の一覧表です。主に日本導入モデルを中心にまとめてみました。特に前段の表ではC5のsphereのバリエーションについてまとめてみましたが、年式やグレードで多岐に渡ることが分かります。他のバネ車ならば、コイルスプリングやダンパーで調整するところをそれぞれのグレードの特質を考慮してsphereで細かく調整しているのだと思います。こうやって見るとCXのsphereが一番柔らかい感じがします。逆にハイドラクティブサスの車はorifice径がかなり小さいことが分かります。

 

C5 Phase1のsphereスペック表(Automobile Citroen C5 Handbook Private cars 2002 P.210)

 

1つ未解明なのが、C5のsphereの表示です。今までのsphereは500/75/1.90のように容積・窒素圧・orifice径が表示されていましたが、C5以降のsphereの場合にはハイドラクティブ3も3 plusの車もsphereのスペック表示のorifice径のところが0.90/0.48のように数字が2つになっています。これについては前の数字がorificeの直径mm、そして後ろの数字が後述するreaf valveの複数の穴の直径mmらしいです。従って、この場合はorifice径が0.9mmでreaf valveの穴の直径が0.48mmx複数個を指すようです。シトロエン社の技術資料が見つからなかったので公式資料ではありませんが、フランス語のシトロエンに関する有名な掲示板planet-citroen.comにこの件に関するスレッドが存在します。他にもヨーロッパの他の掲示板でも同様の指摘が散見され、多分この理解で正しいと思われます。アクセス権の関係で直接そのスレッドには飛べないので、ホームのリンクを参考までに貼っておきます。

 

 

 

上の画像はXM Series2のsphere damper(amortisseur)のカッタウェイ画像です。中央のorificeにはフタがなく自由にオイルが行き来できることが分かります。また、一方で、右上の画像のように直径3mmの穴が8つ空いています。これがleaf valve(clapet)です。4つの穴が飛び出ています(凸穴)。残りの4つ穴は引っ込んでいます(凹穴)。そして、裏側は逆になっています(凸→凹、凹→凸)。イン・アウトどちら側に流れるにしても、凹穴から入ったオイルを、出口の凸穴上のスプリングワッシャー(entreboise)がフタになってふさぎますので、大きな油圧がかかった時だけスプリングワッシャーが押されてオイルが流れるという仕組みです。

以下に示した図はsphere damper(amortisseur de sphere de suspension)のカッタウェイ概念図です。

上図の説明を英訳すると

shock absorber detail (optional depending on the type of sphere)

1) leaf valve

2) body of damper

3) leak hole

4) spacer

5) axle

Damping is obtained by braking the passage of LHM between the suspension cylinder and the sphere by a system of deformable valves which obtain calibrated orifices. The leak hole in the center of the shock absorber body allows direct passage of the green liquid. The aim is to reduce the damping effect for low amplitudes.

 

日本語に訳すと以下のような意味だと思われます。

「(sphereの)ダンパーの詳細(sphereの種類に応じたオプション)

1) リーフバルブ

2) ダンパー本体

3) オリフィス

4) スペーサー

5) ダンパー軸

ダンピングは、調整されたオリフィスを持つ可変バルブシステムによって、サスペンションシリンダーと球体(sphere)の間のLHMの通過にブレーキをかけることによって得られます。 ショックアブソーバー本体の中央にあるリーク穴(orifice)により、緑色の液体(LHM)が直接通過します。 目的は、低振幅のダンピング効果を軽減することです。」

 

C5のsphereでいうと青い真ん中の穴が0.9mmのorifice、damper(amortisseur)の両側に見える青い穴が0.48mmのleaf valves(clapets)となります。

前述のように、このダンパー穴だけではなくleaf valveの穴を塞いでいるスプリングワッシャー(entreboise)も重要なダンピング制御機能を担っています。下図はXM Series2のsphere damperのディスク部分も含むカッタウェイ概念図です。複数の厚みの異なるディスクで制御されていることが分かると思います。これらのセッティングについても今後分かりましたらアップしたい思います。

 

引用:french car forum、Citroen BX do-it-yourself、xantia007.free.fr

 

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