アドリブ将軍モッタの『イチ確』 -14ページ目

名古屋




故郷を離れ、友とも離れ…


ただいま、第二の故郷を漫喫中


やっぱり名古屋は面白いじゃんね!


持つべきものは、友と現金と少しのアドリブ



さて、遊び打ちをしますかな

最終章 ~トモニアユム~

僕の名前は本田弘樹


どこにでもいる貧乏学生だけど、この数ヶ月は生きてきた中で一番と言えるほど濃厚な日々を送っている


昔から心のどこかで追い求めていた幼馴染み美山菜々の正体が、まさかパチスロの師匠である桐島菜々だなんて、誰が予想できただろうか


それこそ、そんな出来事を予想できるのなら、僕は借金に無縁のギャンブラーだっただろう


えっ?桐島菜々とどうなったかって?


簡潔に言えば何も変わらない


変化を求めないスタイル…と、カッコイイことを言いたいが、やはり変化を生むにはリスクを負わなければならない


僕はそう思うんだ


※本田弘樹(イメージ)





※桐島菜々(イメージ)






………………


チュンチュン、チュンチュン


本田「ふあ~あああ…。もう朝か」


気持ちのイイ朝を感じられるのは、何年ぶりだろうか


布団から出て、顔を洗い、パンとコーヒーで朝食をしながらニュースを見る。歯を磨き、レパートリーの少ない服から今日の服装をコーディネート


約束の時間まで30分前、ここでボロアパートを出る。大塚愛の『さくらんぼ』を永遠リピートしながら目的地まで歩く


平凡だが幸せだ


目的地が見えた。元気を出して


本田「菜々、おはよう!」


桐島「集合5分前。やるね本ちゃん♪」


今日は菜々と再会して初めてのデートだ。もちろんパチスロはデートにカウントしない


桐島「どこに行こうか?」


本田「今日は俺に任せてくれよ」


今日はアメリカ人とフランス人を合体させたような、ダンディーなエスコートを意識している


いつもより微かにキーを低く声を発する


本田「さぁ、電車に乗ろう」


僕が彼女を引っ張り、しかし要所要所でのレディーファーストは忘れない


ランチは少し奮発してイタリアン


本田「この魚のムニエル美味しいね」


桐島「うん。あのね、本ちゃん…。その…伝えようと思ったんだけど…」


頬を赤く染める菜々。たまにこんな顔をするからカワイイ。反則に近いよ


本田「どうしたんだい菜々?そんなに顔を赤くしてさ。まるで、このサラダに入ってるトマトのようだよ!とぅ、ハッハッハ」


ジョークを混ぜて会話。場の空気を和ませながら、相手のリラックスされる


これぞアメリカとフランスの米仏オリジナル


桐島「あの…チャック…開いてるよ」


本田「ハッハッハ…ふへっ!?」


社会の窓を開いて、相手との関係をオープンに。そして社会の窓に気付くのも女性から


まさにレディーファースト


しかし、言われたままで終わるわけにはいかない。間髪入れずに僕のターン


本田「ハッハッハ。本当にチャック開いてたね。でも、菜々も胸元開いてるよ?キリッ」


桐島「こ、こらっ!これは、その…これはわざとだよ。だってデートだから…」


チャックの次は口が開いた。ヨダレも出た


本田「さて、次に行こうか」


次は動物園。菜々は昔から動物が大好きだ


小さい頃に、菜々にどんな動物が好きかと聞いたことがあった。その返ってきた言葉が今も忘れられない


「人を食い殺しそうなのが大チュキ♪」


現在もそうなのだろうか?


本田「菜々はどんな動物が好きなの?」


桐島「そうねぇ~。ワニとかライオンとか虎とか大蛇とかかなぁ~」


人間は簡単に変わらないらしい。その言葉が菜々らしく、少し嬉しかった


動物園に入ったら、菜々の行動に合わせるだけだ。パチスロに厳しい菜々も、動物の前では普通の女の子


桐島「うわぁ~♪ライオンさんだよ!あのキバ素敵だよぉ!カワユス☆☆」


お前の方がカワユスだよ…


そう伝えたかったが、僕は強烈な腹痛のため急いでトイレに駆け込んだ


本田「ハァ~。スッキリした」


紙が少なかったため、ケツの拭き具合が完全に足りないのはここだけの話


桐島「ちゃんと下痢したか?」


本田「おバカ。教科書通りのウンコだよ」


温かいコーヒーを飲みながら、のんびりと園内を歩く。リアルが充実している


桐島「ねぇ、本ちゃん。本ちゃんは好きな動物とかいる?」


本田「そうだなぁ~。ネコかな!」


桐島「ネコなんだ!じゃあ…ニャン!」


本田「な、なんだよ!?」


桐島「私は今からネコだニャン!これで本ちゃんは私を好きになるニャン♪」


本田「子供か!」


たぶん…いや、きっと僕だけにしか見せない菜々の素顔。この幸せがいつまで続くのか…。そんなことばかり考えてしまう


でも、少し大人になれた僕は思う


今までは、幸せになることが難しいなんて思っていた。でも本当は、幸せになることは意外にも簡単で…むしろ実感してないだけで、みんな幸せに浸っていて…


それに気付いていないんだと


だから幸せになることが難しいんじゃなくて、その幸せを大切に護ることが難しいんだ


それに気付けた僕は、少なくともこの瞬間だけは世界で一番の幸せ者なのだと思えた


だから僕は決意する。目の前にある選択肢の中から未来(こたえ)を選び、それがどんなにリスクあるものだとしても、迷いなく決断する


本田「菜々、話しがあるんだ」


…………


………………


………………………


ーーーーー10年後ーーーーー


僕の名前は本田弘樹


大学卒業後に大手パチンコ店に入社


2年前から店長を任されており、色々と面倒が多い業界なだけに、泣きたくなるような日もある。それも含めて幸せと言える日々を送れている


本田「ただいま~」


「あっ、パパお帰りなさーい!」


本田「ただいま、未来(みく)。ちゃんと幼稚園でもイイ子にしてるか~」


だらしなかった僕も今では父親だ


もちろん父親としてはまだまだ半人前かもしれないけど、護るものがあることは刺激にもなるし、人間的にも大きくなれる


ミク「ねぇ~パパ!」


本田「どうした?」


ミク「ママの足にはね、何で赤いヒモが巻いてあるの?しかもボロボロだよ~」


本田「ハッハッハ。あれはパパとママの婚約指輪なんだよ~」


ミク「へぇ~。あれが給料3ヶ月分なんだね」


本田「まぁ~ね。ハハハ…」


子供の成長は早い。同じように月日が流れるのも早いものだ


たぶん、あっという間に子供の反抗期が来て、あっという間に親離れをして、あっという間に大人になって、あっという間に僕らはおじいちゃんになる


それでも変わらないものもある


僕が子供の頃に交わした約束とその気持ちを忘れない限り、この幸せは永遠に続くのだろう


ガチャッ


「アナタ、お帰りなさい」


本田「ただいま」


僕らの物語はまだ終わらない


一緒に歩もう。いつまでも…いつまでも…


これは僕と菜々が共に歩む、ほんの一部のお話しなのでした…


☆~おしまい~☆

第四章 ~約束~

本田「うっ…こ、ここは?」


カーテンの隙間から微かに漏れる太陽の光


映画のワンシーンにも使われるようなシチュエーションで目を覚ましたにも関わらず、清々しい朝を迎えれないのは、酷い頭痛と部屋中に染み込んだ消毒液の匂いのせいだ


本田「ここは病院なんだ…」


小さい頃に、大きな病気で世話になった雰囲気は、そう簡単には忘れない


だるい体を全力で起こそうとしたら、左足に覚えのない重さがあった


桐島菜々だ


桐島「ん…うん?あっ!本田くん大丈夫!?ゴメンね!本当にゴメンね!」


ここで状況を理解した


前日に高熱で病院に運ばれたんだと…


本田「あの…イベントは?」


桐島「あぁ…本田くんの付き添いで病院に来て、そのままだから。今日は行ってない」


また役に立てなかった…


その罪悪感で、酷い頭痛も一瞬で治った


本田「なんか…すみません」


桐島「本田くんが謝ることないよ…」


クールな桐島菜々は、いつもと変わらないが、こんな重い空気は珍しい


僕は思い付くだけの話題をフッた


本田「桐島さんって恋人とかいるんすか?」


桐島「なによ、いきなり…」


本田「あぁ~、すみません…」


桐島「恋人…ていうか、将来を約束した人はいるよ。昔の話だけどね…エヘヘ」


初めて見る桐島菜々の憎たらしいデレた顔。普段話さない恋愛トークに、僕の好奇心は増していく


本田「その人って、どんな人ですか?」


桐島「生まれた頃から一緒にいてね…仲のイイ幼馴染みって言うのかな。だけど私の父親が蒸発したから、その人とは11歳の時に離れたのよ。その時、相手に恋愛感情があったかわからないけど…少なくとも私は好きだったな」


本田「なんか僕と似てますね。僕も同じようなことが昔あって、その時どうして告白しなかったのか後悔してるんですよ」


桐島「そうなんだ…」


なぜか空気が重いままだ


桐島「…リ、リンゴでも剥こうか!」


いつになく慌てる桐島菜々。イスから立ち上がったときに、足が痺れていたのか床に倒れた


桐島「イテテテ…」


本田「大丈夫ですか?」


僕は手を差し出した


桐島「ゴメンね。ドジッちゃった」


何気なく桐島菜々の足が視界に入った。よく見ると足首に、ボロボロの赤いミサンガ


本田「ハハハッ。桐島さんもこういうのするんですね!意外だなぁ~」


桐島「本当に忘れちゃったの?本田くんも青いミサンガしてたはずだよ…」


その言葉に僕はピンときた


本田「…あっ、少し前に切れたんだった!ちょっと…ていうことは…」


僕が数ヵ月前に切れた青いミサンガは、10年前に離ればなれになった幼馴染みとの繋がりの証だった


その娘の名前は『美山菜々』


ミサンガに願いを込め、そして子供ながらに将来を約束した女の子だった


ーーーーー10年前ーーーーーー


美山「明日でお別れだね…本ちゃん」


本田「なに悲しい顔してんだよ!俺達はどんなに離れても一生友達だぜ、菜々!」


美山「そんなの嫌だよ」


本田「な、なんだよ!いくら俺のこと嫌いでも離れる前日くらい合わせろよ!別にウソでもイイのにさ!」


美山「だから嫌よ!本ちゃんのバカ!」


本田「なんだよ!おまっ」


美山「ひぐっ…いっ…一生…ど、とも…友達なんて、私には耐えられないよ…」


本田「な、泣くなよ…。あっ!菜々、手を出してよ!」


僕は離れることを知ってから、密かにお揃いのミサンガを買っていた


当時お金がなかった僕が、可愛がっていたブタの貯金箱を叩き割って購入した少し値の張るミサンガだ


美山「本ちゃん…これなに?」


本田「母ちゃんが言ってたんだ!お願い事してね、これをはめると願い事が叶うんだってさ!」


美山「私、これ大切にする!願い事が叶うまで、ずっと付けてるね!」


本田「菜々!これでいつでも一緒だ!」


美山「うん!えへへ…ずっと一緒♪」


…………


………………


………………………


本田「ていうことは、桐島って…まさか母方の名字!?じゃあ、あの泣き虫だった菜々なのか!?」


桐島「気付くの遅いよ本ちゃん…グスッ」


本田「ご、ゴメン!でも、イメチェンし過ぎてわかんないよ!汗」


桐島「そうかもね。そういえば、本ちゃん、あのとき…あのミサンガにはどんな願い事をしたの?」


本田「また菜々に会えますように…てね」


桐島「だから、ミサンガ切れてたんだね」


本田「かもな!なら、菜々の願い事は?」


桐島「わ、私は…」


桐島菜々…いや、菜々は少し顔をうつむかせ、何か迷ってるようだった


桐島「本ちゃん!」


本田「は、はい!」


桐島「本ちゃんは私がいない間にスゴくだらしなくなってて、それでパチスロもスゴく下手!正直見てらんない!」


本田「…………」


桐島「でも、それでも私は約束を破ろうとは思わない!思うわけないよ!」


本田「菜々…」


桐島「ずっと一緒だよ。本ちゃん…私の約束は、『また出会って、そして今度は離れない』ただ、それだけなんだよ」


子供の頃に交わした約束


それは小さくて弱々しい二人の願い


だけど、誰よりも強い願いだった


僕達が本当の意味で再会できたのは、寒い寒い…だけど心が温かい12月のことでした


第四章 ~約束~ 完