10年ほど前のことです。
私は知的の特別支援学校高等部が一番長かったのですが、
高等部の授業で重度重複学級の国数の時間に入りました。
国数・・・週4時間(内、私は2時間入りました)
全体の活動のあと、20分間の個別課題を行います。
生徒3人、教員2人です。
そのうちの1人は、発語なし、指示や言葉の理解はあいまいで
意味のある行動、筋道だった活動が難しい生徒さんでした。
これまでの中学部の記録を見ても、席に座っていることはできますが、
物を持って箱に入れることはあいまいとの記録。
①始点→終点 2週間
全体の活動のあとに20分間の個別課題を行います。
最初の課題は「始点→終点」の練習です。
例えば、物を動かす時に
置いてある地点が始点
動かすところが終点
レールについている物を左から右に動かすことはできました。
(カーテンレールのイメージ)
いくつか、始点、終点の教材は時間かからずにできました
②いよいよ、物を箱に入れる練習 1ケ月間
最初は教員が手を添えて、ビー玉を握らせ、箱に入れるのですが、
握ったままにぎにぎと、感触遊びをして離しません。
※ビー玉は口に入れる子は他の大きなものにしましょう
予想通りです(笑)
何回も入れる練習をします。
入れるという動作は
目で見る→見て手で持つ→もって、視線と手を動かす→手を離して入れる
(目と手の協応動作)
1ケ月かけても、なかなかビー玉を手から離すことができませんでした
③プラスチックの箱に入れて、コトンという音を楽しむ 1ケ月
これは学校でよく行うのですが、
箱の上面は、ビー玉くらいの穴をあけて、入れさせます。
ポイントは 穴がビー玉とピッタシくらいですと、興味をひきます。
子供は型はめもそうですが、カチっとはまるもの、音がするものが好きです。
入れる動作に対して「入れて」と言葉をつけて、ラベリングします。
1ケ月くらいで手を離して入れるようになりました
④ペットボトルを用意して、中に入れる練習に入りました 2週間
音はしなくなりますが、
ビー玉をちょうど同じくらいの穴に入れる面白さもあります。
2週間くらいで手を離して入れるようになりました
最初からここまでで、3ケ月かかりました
⑤そして、いよいよ本番です。
小箱の中にビー玉を入れる練習です。
上面は何もないので、広くなりました。
なかなか手から離しません。
離して落としても、また拾ってにぎにぎします。
3ケ月かけても、手から離して入れることはできませんでした
私「小中でもやってきて、定着していないし、違うことにしようか」
教員A「週4回できるし、今年はこれを続けましょう」
私「うーん、そうするかなあ???」
高等部に上がってきて、「物を箱にいれる」のができていない生徒は
練習しても、なかなか身につかないのを見てきましたので、
無理かなと思っていました。
ところがある日、A先生が「先週、箱に入れたよ」と報告してきました。
4ケ月目になんとできるようになったのです
最初は1個、、、3個、、、、5個と数を増やしていきました
言葉で書くと簡単にできたように見えますが、実際に3ケ月かかってもできないと、
無理かなと思ってしまいますね、、、
生徒さんはその間ゆつくりと理解していったのですね。繰り返してみるものです。
⑥順調にできてきたので、試しに
給食袋を持たせて歩かせ、
箱のところにいって、「いれて」と指示すると、 給食袋を箱に入れました
おー、やったあ できるんだー
箱に入れるということがわかってきたのでできたのですね。
ここまでくると教えるコツもわかってきました
皿をもって歩き、重ねることもできました。(疑似給食片付け)
他にも、帰りに給食袋をリュツクに入れる
連絡帳をカゴに入れる
机の上の物を箱に入れて片付ける
こともできました。
ひとつのことが身につくと、生活の中で様々に広がっていきます。
ゆっくりとやり方を理解していく生徒さんはいます。
短い時間、工夫して繰り返し行えば、道は開けるのです。