ぐるめ探訪「楽味」 地元に根づいた創作系京料理(長崎市) | ひつぞうとおサル妻の山旅日記

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サルヒツのグルメ探訪♪【第235回】

創作京料理 楽味

℡)095-848-3240

 

カテゴリ:日本料理

往訪日:2024年4月29日

所在地:長崎市浜口町5‐11

営業時間:(水曜定休)

(L)12時~14時

(D)18時~22時

アクセス:路面電車・大学病院駅から徒歩2分

■約10席(個室+カウンター)

■予算:(D)6,500円(税別)+酒

■予約:完全予約制

■カード:可

 

《今にも香ばしい香りが漂ってきそう》

 

長崎二泊目の夜は少し足を延ばして、路面電車で大学病院前に向かった。斎藤茂吉が赴任した長崎医専の近くと思うと感懐深い。店が並ぶ浜口町は爆心地に近く、区画の小さな昔ながらの住宅街の一画だった。

 

 

客は他に一組だけ。墓参りのあとのようで、そこにアウェイのサルヒツが紛れ込んでしまった格好だ。この日は月曜。主だった店はほとんど休みだった。とは言え、こうした地元密着の店も嫌いではない。ただ、正真正銘のアウェイ状態に陥った時、眼も当てられないというだけだ。あとは運次第。

 

「お店は行ってみないとね」サル

 

ネット情報だけを信じてもね。

 

個室の小上がりに通された。まずはお酒をと言われたので「なにがありますか?」と訊く。幾つか定番の名前が並んだのでゆきの美人にした。去年の集中豪雨で壊滅的被害をうけた秋田酒造へのカンパである。

 

 

「好きだから飲んでると正直にいえ」サル

 

そうです。

 

 

まずは八寸。小ぶりでも沢山あると愉しい。

 

(左から)サーモン蕪巻、黄身味噌漬け、バイ貝、厚焼き玉子、味噌田楽、茹で蛸、ヒラスの一夜干し、笹寿司、タラバガニと卵の裏漉し、貝柱と小松菜のヌタ和え

 

 

笹寿司の中身はシマアジだった。酢が効いていて旨い。というよりも造り置きなので(もたせるためもあるのだろう)八寸全体に酢と砂糖が効いている。

 

「酒がないにゃ」サル

 

違う銘柄を頼もうとすると、奥から旦那が「ウチの料理には〆張鶴があうんだよ。辛口だからね」と宣われた。そう言われては「でもやっぱりこれを」と言えない。それに旦那の無垢の笑顔を見せられては。

 

 

ということで〆張鶴。新潟の酒は大好きだが、最早オールドブランドだよね。ま、いいか。

 

「一所懸命やってるし」サル

 

どうだろう。年の頃70歳を超えているのではないだろうか。それなのに厨房は旦那ひとり。配膳はパートの女性だけなので、旦那も自ずと加勢することになる。

 

「めちゃゼイゼイ言っているよ」サル

 

ダイジョウブなのか。こてんといっちゃうのでは…。

 

そんな不安を抱かせるほど息遣いは激しい。座敷までの距離は2㍍なんだけど。

 

 

椀物

 

具は鯛、大根、素麺。鯛は塩で身を締めたのち茹でる。なのでプリプリで身が崩れない。

 

 

造り

 

順にシマアジ、大トロ、鯛

 

感想など述べる必要はないだろう。トロは脂が溶け始めているほど。シマアジも鯛も弾力があってシコシコ。大阪や東京の割烹で造りといえば「長崎産」が鉄板。それをカジュアルに頂戴できるのが楽味の魅力だ。

 

 

焼物

 

チマキ風に出てきた。なんでしょう?

 

 

連子鯛(れんこだい)の塩釜焼ちまき風である。こうすることで余分な水気が抜けて旨味が凝縮する。具は椎茸、大根、人参。繋ぎは卵。ちなみに連子鯛とはキダイの地域名。

 

(ネットから拝借しました)

(キダイでーす)

 

真鯛と較べると確かに黄色い。なんて書いちゃうと一級格下のように聞こえるが、味は真鯛にまけない。むしろ鯛特有の臭みもなく美味!

 

「美味♪」サル

 

 

続いてキハダとアワビの鉄板焼き

 

もはや京料理というより創作系。これで6,500円。コスパの良さは納得。

 

「いい店だにゃ」サル

 

 

強肴

 

紫芋羊羹、破竹、ウルイ、海老と卵の和え物、山独活の胡麻和え

 

山独活はアク封じに素揚げにしてある。まだまだドンドン出てきそう…。

 

「旦那さん息切れしながら造っているにゃ」サル

 

 

そして出てきたのが山菜天麩羅だった。

 

順にフキノトウ、甘鯛ころも揚げ、コゴミ、コシアブラ。長崎ではまず出ない山菜が余程自慢とみえて「新潟の友達から送ってもらったんだよ」と何処かで聞いたような説明がついた。思わず「新潟で登山をしていたのでお馴染みの山菜です」と余計なことを口走ってしまった。「美味しい山菜ですもんね」という同意の気持ちを伝えたかったのだが。

 

「そうなんだよね」サル 失敗失敗

 

旦那の舌鋒は稍々怯んでしまった気がした。話の腰を折ったようで悪かったな。

 

 

最後はご飯となめこの赤出汁で終了。

 

 

最後まで丁寧なもてなしだった。隣りの部屋から幼い男の子と爺さんの愉しそうな声が聞こえていた。

 

子供の頃、贅沢な外食の記憶はあまりないが、福岡の金の隈にある水炊き専門店「とり勝」にはよく連れていってくれた。内庭の池に面したを座敷の個室で、最初に出てくる鶏刺し(とりわけ砂ずり)と鶏皮ポン酢、そして鶏肝の旨煮が大層旨かった。気になって調べたら、昭和40年創業時の大将がいまだ現役で店は続いていた。この楽味もそんな店なのかもしれない。

 

「その頃から味覚が酒飲みだにゃ」サル

 

親は一滴も飲まないんだけどね。

 

面白い店と言っては申し訳ないが、味や食材の論評を交わすタイプの店と違って、人間模様が透けて見えて面白かった。もちろんオーソドックスな京料理は九州の味の濃さも載って万人うけする味だった。

 

 

帰りも市内電車で帰った。一段灯りを落したレトロな電飾だった。


「行き先間違えたのは報告しないのち?」サル

 

最後は酔い覚ましに歩いた。長崎は今日は晴れだった。

 

(旅はつづく)

 

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