旅の思い出「東明山興福寺」 明代の意匠が残る名刹(長崎市) | ひつぞうとおサル妻の山旅日記

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東明山 興福寺

℡)095-822-1076

 

往訪日:2024年4月29日

所在地:長崎市寺町4‐32

開館:7時~20時(無休)

料金:一般300円 中高200円 小学100円

アクセス:長崎道・長崎芒塚ICから約8分

駐車場:門前3台(無料)

■国指定重要文化財(1961年)

※堂宇内撮影NG

 

《唐人情緒漂う境内》

 

続いて向かった先は東明山興福寺。国内最初の黄檗宗唐寺として知られる。眼鏡橋から約7分ほどの距離で、やや高台の斜面に寺町は横並びに広がっていたが、山門のベンガラ色から、そこが中国ゆかりの寺だと容易に判った。

 

「赤い色があるだけで中国風だにゃ」サル

 

中國では赤と金はおめでたい色だし。

 

 

山門

 

入母屋式単層屋根。この角度じゃ判らんけど。黄檗宗は日本に一番新しく伝わった禅宗の一派。当時の長崎は禁教令真っ最中なので、キリスト教徒の疑いを掛けられまいと中国人は積極的にブディストだとアピールした。初代・真円が媽祖堂として建てたのが興福寺の起源とされる。

 

「なに?マソって?」サル

 

中国で崇められる海の神様だよ。

 

「仏教じゃないの?」サル

 

中国にも神仏習合はあったからな。二代目は眼鏡橋を建造した黙子如定。ひとつ飛んで四代目が隠元隆輝(1592-1673)なんだ。

 

「知っているよ。いんげん豆伝えた人でしょ?」サル

 

さすが。料理絡みは強いね。

 

 

思ってたより観光客は少ない。暑いさなか徒歩でここまで来るのはしんどいかもね。

 

 

9代目までは唐僧だったけど、10代以降は現在の32代まで和僧のお坊様が護っている。

 

「そうなんだ」サル

 

内部は移築された寺の伽藍だけではなく、歴史的建造物が配置されていた。

 

 

重文 大雄宝殿(本堂)

 

1663年の大火で類焼したため、興福寺の堂宇の殆どが後の時代の再建。本堂の天井には巨大な瑠璃燈(撮影不可)が掲げられていた。上海で作られた清朝の精緻な工芸がすばらしい。初夏の強い日差しでやや蒸し暑い一日だったが、堂内はヒンヤリとして(和僧の時代になって久しいにも関わらず)お香のかおりが中国を感じさせた。

 

 

アーチが美しい蛇腹型天井に注目。彫刻も顔料もよく残っている。重文だけあって美術的にも建築的にも見所が多い。組子細工もみごと。

 

 

氷裂式組子の丸窓

 

文字通り、氷を砕いたような文様が組子で作られている。今まで見たことがない意匠。中国本土にもこれだけ精密な工芸は残っていないそうだ。

 

 

原爆被害の前は丸窓の外も総ガラス張りで、ステンドグラス風の美しさを誇っていたそうな。

 

 

床には砂岩が敷き詰められている。

 

 

庫裡

 

庫裡に下がる魚板。叩いて「御飯だよー」と告げるあれだね。鱖魚(けつぎょ)という中国伝説の怪魚をモチーフにしている。明朝の魚板として日本唯一の貴重品。数百年叩かれて腹部が欠損している。

 

 

媽祖堂

 

媽祖が安置(撮影禁止)。

 

 

扁額「海天司命」(1670年)

 

 

鐘鼓楼(1691年再建)。二階に梵鐘が吊られていたが戦時中の金属供出で遺っていない。

 

 

正面から。二階の火灯窓が中国風。隅鬼瓦の他に大黒天が彫られているのも珍しいそうだ。

 

 

重文 旧唐人屋敷門(1689年)

 

唐人屋敷の遺構。1960(昭和35)年に移築。

 

 

三江会所門(1880年)

 

江南、浙江、江西の三省出身者が寄進して造った集会所の門。原爆被害で門だけが残った。

 

 

中央に門を配置し、両脇に長屋門式の建物が続く。二段式高い敷居は、放し飼いの豚の進入を防ぐための豚返し

 

 

門の内側の漆喰に三江会の碑が埋め込まれていた。

 

 

ちなみに予約すれば中国の精進料理《普茶料理》を頂くことができる。

 

 

後から拵えた庭園でも充分美しい。

 

 

中島聖堂遺構大学門(1711年)

 

1959(昭和34)年に移築。儒学の聖堂の門らしい。西から天気がまた崩れてきたな。

 

 

外国人が数名いるだけで静かに鑑賞できた。

 

 

隠元禅師の雄渾な扁額「初登宝地」が見降ろしていた。

 

長崎の唐寺といえば崇福寺も有名だが、天気も傾いてきたので観光はここまで。

 

「よく考えたらお昼食べてないよ」サル

 

夢中になると寝食を忘れるタイプなのだった。

 

(旅はつづく)

 

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