名建築を歩く「横浜市イギリス館(旧イギリス総領事公邸)」(横浜市・山手町) | ひつぞうとおサル妻の山旅日記

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ひつぞうです。
おサル妻との山旅を中心に日々の出来事を綴ってみます。

名建築シリーズ79

横浜市イギリス館(旧イギリス総領事公邸)

 

往訪日:2024年4月14日

所在地:神奈川県横浜市中区山手町115-3

見学:9:30~17:00(第四水曜日休館)

料金:無料

アクセス:みなとみらい線・元町・中華街駅から徒歩8分

■設計:イギリス工務局

■施工:不明

■竣工:1937(昭和12)年

※撮影OKです

 

《アンシンメトリカルなデザインが秀逸》

 

ひつぞうです。茨城日帰り旅行の翌日も飽きずに建築散歩。横浜市イギリス館を訪ねました。ここは1927(昭和12)年に建設された旧英国総領事公邸。1969年に総領事が帰国したため土地と建物は競売にふされて横浜市が購入。コンサート会場や会議室として開放されており、また2002年から二階展示室も公開されています。初めて訪ねました。

 

★ ★ ★

 

横浜の山手西洋館はほぼ歩き尽くしているが、ここだけ未踏だったので潰しておくことにした。

 

「地元だと行かないよにゃー」サル

 

 

設計はイギリス工務局上海事務所。イギリス総領事館(現在の横浜開港記念館旧館)と同じ部局だが、公館と公邸ということでデザインはまるきり違う。

 

「さすがに総領事だけにお庭も広いね」サル

 

 

正門脇にはBRITISH CONSULAR ERSIDENCEの文字。総領事公邸だった証しだ。

 

 

正門前にロータリーがある。この日一階では子供の演奏会が開催されていた。建築探偵は静かになりを潜めて見学することにした。

 

 

鉄筋コンクリート造の二階建て。白御影石による付柱が囲む。この時代のSRC造は珍しいそうだ。資材はすべて上海から運んだという。

 

 

一階の西側には曲線のボウ・ウィンドウ

 

「おされ♪」サル

 

 

正面の窓やバルコニーが非対称なのに対してベランダ側はベイ・ウィンドウの張出部を中心に据えた左右対称のデザイン。臙脂色の瓦屋根が鮮やかなコロニアルスタイルだ。ちょうど花壇の花も見頃だった。

 

「それでは内部へ」サル

 

 

美しいシェル構造の壁龕がお出迎え。

 

 

一階は発表会の真っ最中。見学できないので二階へ。

 

 

見事な手彫りの渦巻き。

 

 

SRC造なので窓のデザインの自由度は高い。敢えてアーチ型を狙ったのだろう。

 

 

部屋配置は御覧のとおり。順番に観察していく。

 

 

=復元展示室(寝室)=

 

 

修復された寝室。総領事夫妻が利用していた。奥にはスリーピングポーチと呼ばれる休憩室が繋がる。

 

「扉がないんだね」サル

 

 

反対から見た室内。

 

 

暖炉は壁面に埋め込む設計。その分間取りが広く感じられる。

 

 

=復元展示室(休憩室)=

 

 

休憩室を覗いてみよう。

 

 

この丸窓は見所の一つ。船窓の形をモチーフにしたのではないかと言われている。

 

 

=展示室(ゲストルーム)=

 

 

次はゲストルーム。つまり招待者の寝室だ。調度品はすべて横浜発祥の横浜家具

 

 

恐らく寝具やクローゼットが設えてあったのではないだろうか。

 

 

反対側のスリーピングポーチ。ここに三体の彫刻が展示されていた。

 

 

いずれも横浜市ゆかりの彫刻家・井上信道(1909-2008)の作品。井上は徒に細部に執着せずに大胆にフォルムを抉り出す。そんな作風だ。(左から)キング総領事夫人、山手聖公会復興に尽力したダグラス・W・オバートン教授、アメリカ総領事のライオネル・M・サマーズ氏。

 

 

=集会室=

 

 

作り付けの衣裳ダンス。昭和初期としては珍しいそうだ。この日は利用されていなかったので見学できた。

 

=厨房=

 

 

最後は一階奥の台所。全体を象牙色で統一しているところは他の部屋と共通。敢えて配管などの設備を隠さなかったのだろうか。ある意味現代風だ。

 

構造的にはこの時代の洋風住宅建築の典型を見られる一方、ベランダや正面のデザインに設計者のこだわりを感じさせるものがあった。このあともう一箇所寄り道した。

 

「よく判らんけど付いていくだよ」サル

 

(つづく)

 

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