《三ツ星プラスの味を堪能しよう》
ひつぞうです。続いて湯主一條の【食事篇】です。
★ ★ ★
陽が暮れた。煌々と明りが灯る本館。雰囲気倍増だ。
かつての賑わいを想像しつつ、食事処《匠庵》に向かった。ミシュランガイド宮城で三つ星プラスを獲得したそうだ。これは後で知った話。
さり気ない装飾が観る者の気持ちを和ませてくれる。
「乙女ジジイだからにゃ」
それぞれ個室のテーブルで。
本日のメニュー。
まずは食前酒から。白石産ササニシキを使用した甘酒。
=前菜=
左上:蓮根・海老・三つ葉山椒味噌和え
中央:春菊・えのき茸・菊の浸し
右上:カリフラワー葛寄せ
下:(12時から時計回りに)
白菜海老ロール蒸し&胡麻酢
エシャロット黄身衣揚げ
慈姑煮、チーズ市松砧巻
鮟鱇友和え
真鱈昆布〆寿司&からすみ
助子煮こごり
ちまちま確認しながら実食。杏仁豆腐のようだが、しっかりカリフラワーの風味が広がる。季節の慈姑に正月らしい市松砧巻が美しい。
ところで友和えってなに?
「鮟鱇の身と肝を和えたものだにゃ。元が同じだから友和え」
なるほど。鮟肝は生臭さが苦手だけど、さすが三ツ星シェフの仕事。美味しいよ。助子は?
「スケソウダラの卵。スケの子だにゃ」
明太子と違うの?
「こっちは熟成してない本生」
なるほど。
違い棚にもちょっとした飾りつけ。
「酒頼もう」
特約店系はないみたい。
「限定って書いてあるけど」
へえ。蔵王酒造も造りを変えたんだね。四合瓶で7,000円(税別)か。定価の4.8倍はやり過ぎでは(笑)。新政並みだよ。
「場所代、場所代」 ケチ臭いやつめ
頂戴してみることにした。
ZAO Kシリーズ【寒来】 初しぼり直汲み
生産者:蔵王酒造㈱
製造年月:2023年12月
所在地:宮城県白石市
タイプ:特別純米酒 生原酒
使用米:美山錦100%
精米歩合:55%
アルコール:16度
市販定価:1,457円(税別)
なるほど。仙台らしく食中酒向きのスッキリ系。酢酸イソアミル系かな、マジックインキの匂いがする。確かに旨いよ。
=お造り=
鯛薄造り
紫蘇ドレッシングで頂く。
至福の味。
=旬の物=
毛蟹酢
こちらは定番の土佐酢で。しばし沈黙が続く。
壁には唐の詩人、王維の七言絶句『元二を送る』。きっと大家の書なのだろう。
=蓋物=
鰊の奉書煮 蕪 芹 友地餡
身欠き鰊の奉書煮。鰊でとった餡に浸して季節の芹と蕪を飾る。懐石の定番。
=焼物=
焼物は肉と魚から選ぶ。
+3000円で黒毛和牛焼(恐らくロース)からフィレステーキにアップ可能。ということで僕は肉、おサルは魚でオーダーしてシェアした。
黒毛和牛フィレステーキ(+3,000円)
「やっぱりヒレでしょ」
おサル、ヒレじゃなくてフィレよ。
「いいじゃん。別に」 好きにしたい!
パーティをパーテーと発音するのが許せない性質なのよ。
「サルの魚、きたきた♪」
鰆の冬野菜の包み焼 添え野菜(菊芋・蓮根・春菊・曲り葱他)
包み焼。ひと手間が嬉しい。宮城県特産のまがり葱が甘い。
=鍋物=
これも鰤と豚から選べるが、鰤で意見が一致。
鰤鍋 仙台芹 蔵王大根
「綺麗なブリだのー♪」
自宅で散々食べ飽かしてまたブリとは。。どんだけブリ好きなんだよ(笑)。
=お食事・香の物・止め椀=
宮城産ひとめぼれを使った牛蒡飯にすいとん汁。モチモチで大層美味しかった。
=水菓子=
南瓜のチーズケーキ 林檎のコンポート ラズベリーソース
僕らについてくれたスタッフの男性は恐ろしく背が高くて、時々何とも言えない高笑いを発する。ついつられて自分も笑う。笑うって素晴らしい。まさに福きたる鎌先の夜。御馳走様でした。
「飲み足りない」 キッパリ
バー《都路里》に行くことにした。
時の橋を渡って一階へ。定刻の20時になるまで館内をブラブラ。
=BAR 都路里=
そして一番乗り。でも誰も来なかった。なんとなく気恥ずかしい。
「ヤル気満々過ぎたにゃ」
それぞれ一杯ずつ飲んで寝ることにした。
ちょっと甘口でスパイシー。ドライジンの余韻が心地よい眠りに誘ってくれた。
=翌 朝=
近頃酒を飲むとすぐに眠くなる。なので、おサルのおもしろ寝姿をカメラに収められず。こんな些細な処に歳を重ねた自分を感じる。翌朝の天気は曇り空。少し肌寒かった。
ひとり旅館周辺を散策。山の辺の道を走ろうかと思ったが、熊の出没が原因なのだろう、進入禁止になっていた。大騒ぎだった昨秋の熊騒動、今年はどうなるのだろうか。
=朝 食=
朝食も同じ場所で。前日と同じトールマンが案内してくれる。澄ました表情をして、突然破顔一笑するので油断できない。なかなか愛嬌のあるスタッフである。
本日の献立。まずはドリンクから。
100%オレンジジュース
「あれ?最初からおいてある」 好きに選べないんだ?
想像だけど、夕食の最後に朝食の飲み物の希望を訊かれたんじゃなかったっけ。
小鉢は青畑豆、松前昆布、縮みほうれん草浸し。手作り豆腐と野菜サラダがつく。
=祝い盛=
(12時から時計回りに)海老艶煮、蛸柔らか煮、栗きんとん、鰊昆布巻、蔵王鴨桑焼、かます床漬、河豚煮凝り、牛南蛮焼、筍旨煮、千社唐(ちちゃとう)、梅蕪イクラ、紅白結び蒲鉾、鶏松風焼、黒豆甘煮。全14種。
朝食も大層盛りだくさんだった(笑)。
因みにおサルさ、なんで松風焼っていうか知っている?
「知らん」 またかよ
表は芥子粒の飾りがあって賑やかだけど、裏は寂しいよね。
「うら寂しい」
松風も…
「もの悲しい」?
うら寂しいでしょ!
=雑煮=
こちらの宿も普通の雑煮。最近は焼きハゼなど面倒なものは加えないのかも知れない。
=鍋物=
名物、蛸団子鍋。かなりお腹いっぱい…。
フルーツとずんだ餅。甘い物は入るから不思議。
最後に自家製ヨーグルト。ごちそうさまでした。
ということでお部屋の炬燵で読書したり、おサルは相変わらずスマホをニチったり。あっという間の滞在だった。
帰りは再び黒塗りの送迎車で駐車場まで送って頂いた。食事よし、建物よし、そして、もてなしよし。良い宿だった。
「リフレッシュした」♪
(おわり)
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