サルヒツの酒飲みライフ♪【第231回】
白老 特別純米生原酒 五百万石 2023BY
製造年月:2023年12月
生産者:澤田酒造㈱
所在地:愛知県常滑市
タイプ:特別純米 槽場直汲 生原酒
使用米:富山県産五百万石100%
精米歩合:60%
アルコール:17~18度
販売価格:1,557円(税別)
※特約店販売・季節限定品
※味覚の表現は飽くまで個人的なものです
ひつぞうです。今回の酒は陶芸で知られる常滑の白老。その季節酒を頂戴しました。外食は一度飲んだことがありますが、未開栓で家飲みするのは初めて。以下、テイスティングメモです。(12月28日賞味)
★ ★ ★
12月28日。例年この日は南ア深南部の雪山登山にテントを担いで繰り出していた。しかし、二拠点生活では事前調査もできず、パッキングもできず、そもそもモチベーションがあがらない。あがったとしても、昨年の豪雨でアプローチ林道の復旧の目途が立っていない。年賀状を書くなど欝欝と雑用をこなしているうちに一日はあっという間に過ぎていった。
「山いかないの?」
遠出は温泉だけでいい。でも酒だけは飲む。そんな年末年始休暇の初日だった。
白老を醸す澤田酒造の創業は嘉永元(1848)年。170年余りの歴史を誇る老舗蔵だ。看板銘柄の名前は“精米の純白、老成した技”などの意味を重ねて、初代・澤田儀平治翁が考案したそうだ。普通酒から大吟醸までレパートリーの幅は広い。しかも見学OKの観光蔵。となると(トレンドの)ドメーヌ化にも不向き。デリケートな酒造りが難しい運営スタイルと言える。
「ショップで買うとだいたい普通酒の味だもんね」 例外もあるけど
だかしかしである。日本酒好きが集まる大阪の名物居酒屋で飲んだ白老は、本当に旨味たっぷりでコクもあり、ジューシー。こんな酒が知多半島にあったのか。かつて八年も暮らしながら、今更手にしたその味に驚いた。ならば特約店銘柄は特別な造りに違いない。その検証がこの日一番の目的だった。
「ただ飲みたいだけのくせに」
米は富山県の五百万石。それを古式ゆかしく和釜と木甑を用いた伝統製法で醸す。圧搾は機械式だが槽汲みなので鮮度は折り紙つき。日本酒度+12なのでしっかりドライ。そんなところだ。
注いでみる。
「ほうほう」
酒の魅力に囚われて二年余り。磨けばいいというものではなく、一番うまいのは特別純米と判ってきた。何事も極端はいけない。そして余計なものも要らない。できれば搾りたて。結果的に生原酒ということになる。
どうだろう。酒屋に届いたその日のうちに購入したのだが。
「まだ変化がないにゃ」
すると…
「アワアワになってきた!」
しっかりガスが活きていた。頂いてみよう。
「昨晩飲んだお酒(シン・タカチヨ)みたいな優しい酸味と果実味があるね」
予想外だった。アカシアの蜂蜜に似た上品な薫りと、果実味を帯びた繊細な甘酸が口いっぱいに広がる。白ぶどう、洋梨、ライチなど、印象が微妙に交錯する。正体を探ろうと舌に転がしたものの、風味は水のようにサッと消えて、苦味が押し返す波のように襲ってきた。なんとも複雑。単なる辛口の酒ではないね。旨いよこれ。
「ちょうどいいものが届いたんだよ」 ヒヒヒ
なにか企んでる?
「箱詰めのお魚が届いてるのち!」
まじ?
ほとんど氷だね(笑)
掻き出した。なんと五島のブリではないの!これ旨いんだよ。
「だから頼んだ」 切ろうぜ
暖流と寒流がぶつかる五島の沖合は優れた漁場として知られ、魚の種類も豊富。特に今の季節は脂が乗ったブリが最高だ。
とりあえず脂の多い腹身を数枚カットした。山葵はもちろん伊豆湯ヶ島産。
「ぜんぜん山葵効かんね」 うまひ♪
判っていたけどね。飽くまで風味づけ。脂の甘味と白老の複雑繊細な味がベストマリアージュ。
特約店銘柄は極上品。セオリーに間違いがないことが証明された。そして、お気に入りの銘柄が一つ増えた。どうでもいいけど余ったブリは?
「ヅケにする。あとはブリしゃぶだの」 全部食べんでよい
この夜のブリ祭りはこれにて終了。休みは長い。酒の仕入れに努めなければ。
「登山いいの?」
(おわり)
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