サルヒツの酒飲みライフ♪【第230回】
シン・タカチヨ A-TYPE 破 unconscious force
製造年月:2023年11月
生産者:髙千代酒造㈱
所在地:新潟県南魚沼市
タイプ:純米無濾過生原酒
使用米:一本〆100%
精米歩合:扁平精米65%
アルコール:12度
販売価格:1,800円(税別)
※特約店販売・季節限定品
※味覚の表現は飽くまで個人的なものです
ひつぞうです。今回の酒は南魚沼の髙千代酒造が送る、昼酒専用の新シリーズ《シン・タカチヨ》。そのA-TYPE【破】です。扁平精米による低アルコールの純米生原酒で、飲み口は軽くそしてジューシー。安易な比較はいけませんが、新政のPrivate Laboシリーズのコンセプトを髣髴します。極少販売なので見つけたら即買いですね。以下、テイスティングメモです。(12月27日賞味)
★ ★ ★
12月27日。この日が仕事納めだった。コロナ以降は納会も挨拶もなくなった。淡々と仕事を終えた僕は新幹線で車中の人となった。頂き物の橋本五郎著『宿命に生き運命に挑む』のページを繰る。読売新聞のタカ派論説委員だけにいつもながら舌鋒鋭いが、「死」を意識する年齢になったのか、亡母や亡友への想いを連ねた章句が続き、思わず涙した。歳を重ねると経験が想像力を補い、共感力が増すという。人恋しくなる師走の夜だった。
「おっかえり!」 飲もーぜ
帰宅してみれば飲む気満々で転げ出てくるサルがいた。
「いろいろ作った」
シン・タカチヨを開けることにした。鮮度が命の無濾過生原酒。ひとり一本限定販売だった。
厳重に紫外線防止フィルムに覆われた表ラベルはアルファレッドのような艶っぽさ。高千代は幾度か飲んだことがあるが、特約店銘柄のなかでは可もなく不可もなく(失礼)という印象。しかし、このシン・タカチヨに関しては、何処の店も諸手を挙げての大絶賛。厭でも期待が高まる。
扁平精米は広島の機械メーカーサタケが2018年に開発した特殊精米機で可能になった。最初にコラボしたのは今田酒造店の富久長HENPEIだったと記憶する。低精米で雑味の素となる蛋白質を無駄なく除去。芳醇な味わいと優れたキレを生み出す。さて髙千代酒造の企みはいかに。
ラベルに記載はないが、使用される好適米は新潟で開発された一本〆。初めて耳にする名前だが、五百万石と青森の豊盃米の交配種。五百万石由来のキレとフレッシュさ、穏やかさに、豊盃米の旨味が加味された味わいになるとか。その先は造り手次第だろう。
ラベルの指示に従ってフルートグラスで。apero timeと記されているので食前酒の位置づけなのかも。
肌理細やかな泡がグラス内部に付着している。頂戴してみた。
ん!これは!
「うみゃい!」
舌触りはまさにシルキー。シュワシュワとミクロの泡がダイヤモンドダストのように煌めきながら消えてゆく。味わいは優しい甘酸。甘酸っぱく、そして繊細な和三盆のような甘さ。もちろん低アルなので無駄な力強さなど端から存在しない。そして潔くキレる。これは酒だけで良かったかも知れない(笑)。
「アホか!いろいろ作ったのにー」 どーしてくれんだ!
福井の西京焼 カリフラワーと豚バラの肉巻き 茗荷
ということで数種類を少しづつ皿にうけて頂戴した。
「腹減らして帰ってくると思ってもう一品作ってある」 できた妻だの
ありがたい妻心。
おサル特定ネギ焼
これか…。食べ過ぎかも…。
「もう一枚焼けるにゃ」 喜べ
初のシン・タカチヨ。蔵の意気込みを感じた。unconscious force。やや意訳すれば「無自覚の潜在力」。幾らでも深読みできるネーミングだが、若年層にもウケる潜在的なテイストを日本酒は持っている。それを試験的に生み出そう。そういう蔵元の意思表示なのではないだろうか。ラインナップは増殖中。機会あればゲットしよう。
「全部食べてね」 クドいようだけど
期待に応えたのは言うまでもない。
(おわり)
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