サルヒツの酒飲みライフ♪【第226回】
吾有事 fresh&juicy 純米大吟醸 無濾過生原酒 青ラベル
製造年月:2023年11月
生産者:奥羽自慢㈱
所在地:山形県鶴岡市
タイプ:純米大吟醸 無濾過生原酒
使用米:山形県産雪女神100%
精米歩合:50%
アルコール:16度
杜氏:阿部龍弥氏
販売価格:2,000円(税別)
※特約店販売・季節限定品
※味覚の表現は飽くまで個人的なものです
ひつぞうです。今回初登場の吾有事。「わがうじ」と読みます。以前、山形の特約店でズラリと並ぶその姿に一目惚れ。いずれ飲んでやろうと思ったものの、意外に首都圏では取り扱い店が限定されていて、漸くこの日を迎えることができました。以下、テイスティングメモです。(12月14日賞味)
★ ★ ★
吾有事は山形県鶴岡市の奥羽自慢㈱で醸される酒だ。しかし、元は1724(享保9)年創業の佐藤仁左衛門酒造場と云った。長らく地酒《奥羽自慢》を造り続けてきたが、御多分に漏れず、後継者難と日本酒の消費低迷を理由に休眠。
しかし、有志は常に現れる。
良いものを失ってはいけない。そんな呼び声をあげた楯野川酒造が中心となって再建プロジェクトが始まった。そして、H29BYより若いスタッフ中心の体制で酒造りが軌道に乗る。醸造責任者の安倍龍弥さんは当時26歳。そう。山形の酒造場はどこも仲がいい。
「山川光男もあるしのー」
秋田、福島、栃木、山口、佐賀。県単位で仲よしな処が多いよね。
ちょうど寒仕込みの酒が特約店のショーケースに並ぶ季節だった。吾有事といえば、まずはこの無濾過生原酒《fresh&juicy》シリーズ。ラベルの色で米の個性が判る。
他に白ラベル(美山錦)、赤ラベル(出羽燦々)もあったが、なにぶん冷蔵庫が他の酒でパンパン。ラベルの色の美しさに惹かれてこの一本を選んだ。早速開けてみる。ポシュっとガスの好い手応え。そして、あることに気がついた。
表ラベルが裏まで届く長さで施されていた。そのわずかな隙間に照明が差し込むと「吾有事」の三文字が浮きあがるように輝き始めたのだ。これは偶然ではない。さすがは若いメンバーによるリボーン蔵。演出が見事だ。
「グウゼンだよそんなの」
ぶっ壊しにかかるよね。おサルって。
「でもどーいう意味なのきゃ?」
「吾有事」は曹洞宗の始祖、道元禅師の言葉で「自分の存在と時間が一体になる」という意味らしい。道元の著書『正法眼蔵』は存在論と時間論を論じた超難解哲学書なんだよね。全然歯が立たんかったな。
「脱線してるにゃ」 日が暮れるばい
そうそう。それくらい没頭して造った酒ですよ、という意味が込められているそうな。
注いで暫くするとピチピチ弾けるガスの泡が付着し始めた。
飲んでみる。溶かした和三盆のような繊細な甘味が舌の端に広がって、洋梨のコンポートを思わせる果実の薫りが同時に膨らみ始める。だからといって甘さに諄さはない。ムロゲンらしい心地よい苦味が寒仕込みの槽場の光景を髣髴させ、最後はラムネのフレーバーと、限りなく仄かな酸がさざ波のように引いていく。
「旨いにゃ!これ!」
ホント美味しいね!酸を抑制した新政って感じかな。ひさびさに感動モノの酒に出逢ったよ。
蕪のそぼろ餡かけ
ちょうど蕪が旬を迎えていた。軽く熱を入れてそぼろ餡と一緒に。万能ねぎを散らして。
金目鯛の開き カボス 菜花のお浸し
「やっぱりお酒には魚だよにゃ」 半分こにゃ
味わいは低アルっぽいが、しっかり16度。やはり日本酒は奥が深い。知らないだけでまだまだこんな酒が全国至る処にあるのだろう。全ラベル買うべきだったと、今頃後悔している僕だった。
「一年待つしかないねー」
(おわり)
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