ヒツジの街歩き「彫刻の美術館 スキュルチュール江坂」(大阪府・江坂) | ひつぞうとおサル妻の山旅日記

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ひつぞうです。
おサル妻との山旅を中心に日々の出来事を綴ってみます。

彫刻の美術館 スキュルチュール江坂

℡)06‐6384‐8173

 

往訪日:2023年10月21日

所在地:大阪府吹田市芳野町13‐16

拝観時間:10時~17時(月曜休館)

拝観料:一般600円 大高生500円 中学生400円

アクセス:御堂筋線・江坂駅から徒歩15分

駐車場:700台(4時間無料)

■設計:川北 英・内海慎介(竹中工務店)(1997年)

 

《音叉?いえいえ彫刻です》

 

ひつぞうです。10月下旬にスキュルチュール江坂を訪ねました。ここは全国的に珍しい近代西洋彫刻の私設専門美術館です。以下往訪記です。

 

★ ★ ★

 

八月の中旬以降、おサルもジョギングに邁進している。ひと汗搔いて戻ってくるなりこう言った。

 

「ヒツの好きそうな彫刻の美術館があるにゃ」サル 近くに

 

調べてみた。ブールデル、マイヨール、マンズー、マリーニ。なるほど。小規模ながら本格的なコレクションである。行くことにした。この日の予報は晴れのち曇り。朝のうちは青空が広がっていたが、家をでて10分もしないうちに、日本海側からの低層の雲があっという間に広がり始めて、完全な曇天と化してしまった。

 

「いいじゃん。美術館だし」サル 天気関係なくね?

 

いやいや。隣接する屋外庭園も見事なんだよ。

(ということで外観の写真は後日改めて撮り直した)

 

 

アメニティ江坂は㈱サンリバーが経営するゴルフ場やテニスコート、そして中華やイタリアンなどのレストランが集まるリラクゼーション施設で、その一角に彫刻の美術館スキュルチュール江坂が併設されていた。

 

「なに?すちゅるちゅーるって?」サル

 

 

スキュルチュールだよ。確かに発音しづらいね。フランス語で「彫刻」って意味だ。スペルをそのままスカルプチュアと英語読みすれば判りやすいかも。

 

 

フロント正面はロビーになっていて、屋外彫刻一点を鑑賞できる。ちなみに椅子は日系二世の伝説の家具職人ジョージ・ナカシマ製。

 

「ハイソな感じがすゆ」サル

 

ハイソってもしかして死語?

 

マルタ・パン《割れた球体》 ステンレス

 

制作者はハンガリー出身の女性彫刻家マルタ・パン。これとほぼ同型の作品を東京都現代美術館のパブリックゾーンで観ていて、詳細は既に記したので今回は割愛。

 

(参考画像)

 

改めて観察すると中央のスリットの形が少し違う。

 

 

屋外庭園リーニュ・ブランシュの森の作庭にマルタ・パンが関与したことで、近代彫刻の蒐集に目覚めたようだ。違う?

 

 

すごいね。マリーニ、マンズーなどは作家存命中の蒐集らしい。

 

「不動産業は儲かるのきゃー」サル

 

そういう勘繰りはお止しよ。とにかく歴史のある美術館であることは判ったね。

 

 

開館直後ではなかったが、鑑賞者はテニスの練習のあとと思しき男性がひとり。静かにアート鑑賞したいひとには最適。

 

 

奥はカフェコーナー。展示されている作品の作家の肖像写真が並ぶ。

 

 

建物の設計は竹中工務店川北英内海慎介両氏による。とてもおしゃれで都会的。

 

館内展示の彫刻の撮影はNG。なので以下の写真三点はネットからの拾い画像で。

 

(参考画像)

 

こんな感じ。とりわけ感心したのは照明。作品の見映えが増す最高のライティングだった。有料でいいから是非撮らせて欲しかった。(後日、箱根の《彫刻の森美術館》で溜飲をさげる機会を得た。それはまた次回。)

 

(参考画像)

(左から①②③④)

 

①ヘンリー・ムーア(1898-1986)《少女の胸像》 ローズオーロラ大理石

②オーギュスト・ロダン(1840‐1917)《バルザックの最終習作》 ブロンズ

③アルベルト・ジャコメッティ(1901-1966)《男の胸像》 ブロンズ

④メダルト・ロッソ(1858-1928)《病める子》 石膏・蝋

 

①はポルトガル産の美しい大理石が眼を惹く。ムーアといえば暗色の大型作品がまず浮かぶが、これは珍しい。②のロダン《バルザック》はフランスの文芸家協会が発注し、様々な物議をかもして結局受け取りを拒んだという曰くつきの作品。その最終習作だ。その反り繰りかえった立ち姿は、真横から見ると男性のファルスそのものになる(下の写真。でもちょっと判りづらい)。

 

「裸の習作もあるんでしょ」サル

 

そのバージョンでは、自分のそれを鷲掴みにしてるんだよ。つまり、マントの下の状態ね。ロダンはバルザックの性的エネルギーを表現したかったんだろう。④の寡作の彫刻家ロッソは初めて鑑賞した。石膏像に蝋を被せた異色作で、病める子供の皮膚感覚がよく表れている。

 

(参考画像)

(左から⑤⑥②)

 

他には、マイヨール《マリーのトルソ》ザッキン《楽器による女》⑤、ブールデル《ペネロープ》⑥、マリーニ《踊り子》(1949年)、マンズー《枢機卿》が並んでいた。いずれも第一級品。基本的に入れ替えはないのだろう。

 

随所にアフリカのプリミティヴアートが無記銘で展示されているのが気になるが、スタッフに訊いてみたところ「近代彫刻はアフリカのアートの影響を色濃く受けているから」というオーナーの意向なのだそうだ。

 

「ふむふむ」サル

 

展示室は極く限られているが、作品はかなり充実している。ちょっと時間があるときにぶらりと訪れるにはちょうどいい美術館だった。

 

★ ★ ★

 

それではリーニュ・ブランシュの森へ。フランス語で「白い線」という意味だ。十月下旬ながら、紅葉の兆しがようやく表れた程度だった。マルタ・パンの作品三点が配置されている。その名の通り、いずれも白い。

 

マルタ・パン《フロート》1990年 ポリエステル

 

水盤のうえで風に揺れ動く浮体が本来の姿。省エネなのだろう。残念ながら水は抜かれていた。

 

マルタ・パン《メイズ(迷路)》

 

子供が入りたくなりそうなデザイン。

 

「打ちっ放しのネットが無粋だけどにゃ」サル

 

仕方ないね(笑)。

 

マルタ・パン《モニュメント》

 

マルタ・パンといえば割れた球体と、この鉛直方向に伸びる線と溝の構成。

 

 

平日の朝いちばんだったので殆ど人影がない。いや、最初に往訪した土曜日も。利用客は自家用車で直接来るからだろうか。庭園散歩だけでも価値あり。

 

 

ちなみに24時間開放されている。散歩だけならば無料。

 

内田晴之《ラウンドストラクチュア》

 

ステンレス製の大型抽象彫刻を手掛ける内田晴之氏の作品も。絡みあう人間のようにも見える。

 

「おサルにはただの金属」サル

 

現実主義者だもんね。

 

 

角度を変えると両膝を交差して屈む人間の姿にも。

 

 

芝の手入れは毎朝行われているのだろう。整然とした様は西洋庭園と較べても遜色ない。ここまで観て、レストランやゴルフ練習場のほうにも何かあるのではと思い、移動してみた。

 

「暇なヤツだのー」サル

 

 

やはりあった。フォルムは違うが、形といい色といい、間違いなく内田作品。ダンスをする男女のようだ。

 

 

こんは素敵な場所があるとか思いもしなかった江坂。深掘りすれば、単身赴任の街という肩書と違う別の顔が発見できそうだ。

 

「見つけたのはサルだけどにゃ」サル

 

(おわり)

 

ご訪問ありがとうございます。