ヒツジの映画鑑賞「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」(2023年/アメリカ) | ひつぞうとおサル妻の山旅日記

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インディ・ジョーンズと運命のダイヤル

アメリカ/ルーカスフィルム、ウォルト・ディズニー・ピクチャーズ(2023年)

Indiana Jones and the Dial of Destiny

 

監督:ジェームズ・マンゴールド

脚本:ジェズ・バターワース、ジョン=ヘンリー・バターワース、ジェームズ・マンゴールド

製作:スティーブン・スピルバーグ、キャスリーン・ケネディ、フランク・マーシャル

出演:ハリソン・フォード、フィービー・ウォーラー=ブリッジ、マッツ・ミケルセン他

音楽:ジョン・ウィリアムズ

公開日:2023年6月30日

鑑賞日:2023年7月6日(TOHOシネマズ梅田)

 

(※ネットより節度を持って画像を拝借いたしました。努めて物語の顛末を伏せております)

 

ひつぞうです。大阪市中央公会堂の見学を終えたあと、映画『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』を梅田の映画館で観ました。公開前から賛否両論のこの作品。81歳を迎えたハリソン・フォードの冒険活劇に意味があるのか。終わりなき自己模倣なのではないか。それも判ります。しかし、偉大なるマンネリ活劇に、老境を迎えたインディアナ教授の心のドラマを絡めれば、また一味違う映画になるかもしれない。強い期待を抱きつつ、僕は映画館に向かいました。以下、鑑賞記です。

 

「ヒツの映画の趣味は子供だから」サル

 

★ ★ ★

 

サルの偏った意見に対してひと言弁明しておきたい。

 

決してドンパチ中心のアクション映画ばかりが好きな訳ではない。ドラマ。ミュージカル。サスペンス。観るジャンルは拘らない。敢えて拘るとすれば“作品の質”だ。「質」というと大袈裟か。オリジナリティ。唯一無二性。B級でもいい、将来も生き残る作品であること。旨く言えないが、そんな視点で評価している。『運命のダイヤル』に対する、見てもいないのに訳知り顔の前評判が大勢を占めたのは「ターミネーター」最新作の大コケを意識してのことだろう。僕にはそんな声などどうでもよかった。

 

 

この日は平日とあってかなり空いていた。第一作『レイダース/失われた聖櫃』を観たのは高校二年生の夏だった。前年の『スターウォーズ/帝国の逆襲』の大ヒットに気をよくしたルーカスは、スピルバーグと組んで「英国の007のように息の長い連続冒険活劇を撮る」と述べて、自信のほどを覗わせた。結論から言えば、それまでにない冒険娯楽大作だった。VFXや巨大セットを派手に交え、そして世界各地にロケを構える、冒険活劇の一つの類型を作ったと言える。学園祭で上映される自主映画に模倣作品が溢れたこともよく覚えている。

 

しかし。どういう訳か続篇のインターバルは延びていき、第四作『クリスタル・スカルの王国』までに27年の歳月を要していた。予算の問題が立ちはだかったのか。会社の買収劇も大きく影響したし、スタッフも俳優も忙しくなり過ぎたのだろう。だが、ジョン・ウィリアムズのテーマ曲を耳にすると、福岡中洲のスカラ座で観た、一作目のあの感動が今でも鮮やかに蘇る。ハリソン・フォードが歳を取ったように、気がつけば僕も、唯のオッサンになっていた。

 

★ ★ ★

 

上映中の作品なので物語の顛末は伏せて、設定だけを備忘録として記そう。

(以下、人によってはネタバレと取れるくだりもあります。鑑賞予定の方は読まないように)

 

物語の冒頭。時は第二次大戦末期の1944年。インディはナチスが略奪した秘宝を奪還しようと、アルプス越えの軍用列車に潜入する。そして、捕縛された親友、考古学者のバジルを救うために。そこで二人は、奇蹟の秘宝、アンティキティラのダイヤルが車中に存在することを知る。

 

 

いきなりナチに痛めつけられる場面から映画は始まる。ここで観客は「えっ」と戸惑ってしまうはずだ。

 

「これって過去のフィルムの編集?」サル

 

半分正解で半分違う。

 

(宣伝でも解説されているので記していいだろう)これは実際に81歳のハリソンが演技し、ルーカスフィルムが保有する(カット画像も含む)膨大なフィルムを元に、AIが若い頃の顔に加工するディエイジング技術を用いたもの(ハリウッドでは既に当たり前になっている)。ここまで来たかと唖然とする仕上がりだ。(将来、完全版『死亡遊戯』なんてものもできてしまうかもしれない。)

 

 

物語の大半では腰の曲がりかけた頑固ジジイのインディ元教授が大(?)活躍するのだが。対比するとよく判る。

 

話を戻そう。

 

「戻してちょ」サル

 

将校たちはヒトラーに財宝を献上して点数稼ぎすることしか興味はない。だが、一人だけ違う考えの持ち主が同乗していた。

 

 

マッツ・ミケルセン演じるナチスドイツの物理学者ユルゲン・フォラー博士だ。

 

「悪そうな顔しているにゃ」サル

 

彼は古代ギリシャの大科学者アルキメデスが発明したアンティキティラのダイヤルの真の価値を知る一人だった。それはタイムスリップを可能にする魔法の機械。だが、ことの重大さを知ったアルキメデスはダイヤルを叩き壊し、その半分は失われたままだった。フォラーとの死闘を乗り越え、インディは無事バジルを救出。ダイヤルもアルプスの深い渓谷に落ちて行方知れずになった…はずだった。

 

★ ★ ★

 

時は流れて、インディは定年を迎える。妻マリオンには愛想をつかされ、世間はアポロ計画の成功に沸き、最後の考古学の授業など、興味を寄せる学生もいない。彼は唯の孤独な老人だった。そんなインディの前に一人の見知らぬ若い女性が現れる。それは彼が名付け親になったバジルの娘ヘレナだった。だが彼女、実は財宝を闇で売り飛ばすトレジャーハンターに成長していた。カネの亡者となったヘレナは、父が密かに回収したダイヤルの半分を探していたのだ。
 

 

そこに刺客登場。実は(こればかりだがご愛嬌)死んだはずのフォラーだった。彼は戦後アメリカに渡り、持てる物理学の知見をアポロ計画に売る代わりに“アメリカの自由”を手にしていた。こうして成り行きでパートナーとなったインディ&ヘレンと、フォラー率いるナチ軍団の地中海を股にかけた攻防が始まる。

 

 

途中の物語は省く(中盤のモロッコ・ユニットは冗長だったかも)が、ダイヤルの謎を解く鍵がシチリア島の古代遺跡“ディオニュシオスの耳”にあることを突き止めた二人は、遂に禁断の扉の前に立つ。だが…フォラーも諦めない。勝負はナチスの残党に軍配が上がった。フォラーがタイムトラベルに人生の全てを費やした理由とは…

 

「ヒトラーを殺して自分が総統に成り代わるとか」サル

 

僕もそう推理したけど違ったね。ネタバレになるのでこれ以上は書けない。結局、敵味方諸とも、欧州決戦のあの日に大型戦闘機で時空を超えてしまう。そして、そこに現れた光景とは…。

 

後は映画館でご覧頂きたい。ネット配信でもいいやと思うあなた。最後の場面は映画館、それもドルビーサラウンドで観て、いや感じて欲しい。この最終章のスペクタクルシーンに、ハリソン・フォード演じる最後のインディ・ジョーンズの全てが詰まっている。

 

「ヒツ泣いてたにゃ」サル サルは見た

 

ジジイになって涙腺が緩いんだよ。

 

ナチスではV2ロケット開発に従事し、戦後アポロ計画の中核となったドイツ人科学者ヴェルナーをフォラーのモデルに当て、アルキメデスの制作ではないかと発見当時ニュースになったアンティキティラ島の機械をタイムトラベル装置に見立てるなど、事実を微妙にフィクションに塗しているところがニクい。

 

ヴェルナー・フォン・ブラウン(1912-1977)

 

限られた人生。最後は自分の望む場所で望むように生きたいと願う老考古学者インディの心の叫びは、ひょっとしたら製作者や監督ではなく、俳優ハリソン・フォード自らの声だったのかも。そして、観客の半数が僕ら世代だったことを思えば、皆、あの日の『レイダース』の昂奮を追体験するために訪れていたようにも思える。その意味では、若い客層とは違った(甘い)評価をくだしている気もする。でも、良い“老人映画”だったよ。

 

ということで鑑賞後はまたまた大急ぎで阪急電車で夕食の店に移動だ。

 

「サルはこっちのほうがたのすぃみ~♪」サル

 

(つづく)

 

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