サルヒツのグルメ探訪♪【第197回】
レストラン リュ・リシェス
℡)045-309-9094
カテゴリ:本格フレンチ
往訪日:2023年6月3日
所在地:横浜市中区野毛町1‐9‐1 T&Fビル2F
営業時間:(月曜定休・不定休)
(L)12:00~15:00
(D)18:00~22:30
アクセス:JR桜木町駅から徒歩約5分
■10席(5テーブル)
■予算:
(L)4,750円(税別)
(D)7,900円(税別)+ペアリング6,000円
■予約:要(一斉スタート)
■支払い:カード可
《小さな芸術品》
ひつぞうです。先月の初めに野毛の本格フレンチの店を訪ねました。はしご酒のイメージの野毛に本格フレンチ?ピンときませんが、そこはおサルのリサーチ。信頼できるはず。以下、往訪記です。
★ ★ ★
四月以降。九年も暮らしながら、変わらず未知の街である横浜の街を、ジョギングの傍ら、つぶさに観察している。野毛といえば酔客の聖地。二三杯引っかけて河岸を変える。長居は禁物。そんなイメージだ。その一角に本格フレンチの店があるという。ちょっとそぐわない感じがした。当日の日暮れ時、僕らは伊勢佐木町モールから吉田町通りに抜けていった。都橋を渡った近くにその建物はあるはずだった。
ここみたいだよ。
「日本酒って書いてあるにゃ」
でも間違いなくこのビルなんだけどね。
なんのことはない。店はその二階だった。
やはりここだった。Rue richesse。英語風にスペルを追えば判りやすい。《豊かなる道》だ。最近できた店かと思ったが、実は昨年の2022年に(やはり人気店だった)レ・フレールのシェフが、同じ場所に、装いも新たに再オープンしたそうだ(おサル情報)。
「そいそい」 詳しい裏事情は判らないけどにゃ
つまり固定客がついた人気店ということだ。
開店と同時に一番乗りした。メニューはお任せコース。なのでほぼ一斉スタート。
「他のお客も矢継ぎ早に到着すた」
テーブルは五席。競争率が高いのも頷ける。
カトラリーも重厚。料金改定したと聞くが(物価高を割り引かなくても)ディナーでこの料金は破格だ。
本日のメニュー。
季節の素材を扱うため、日によって変わる。ただ、葉書大のカードにこの小さな文字。老眼の僕には全く読めない(笑)。拡大して載せておこう。
「酒頼んでくれ」 蒸し暑いから冷えたヤツを
グラス以外にボトルもある。だが今回はお薦めのペアリングコース(Richesse)にした。
ジル&ロマン・コレ クレマン・ド・ブルゴーニュ ブリュット
ノンヴィンテージ
生産者:ジル・コレ ロマン・コレ
地域:シャブリ地方
品種:シャルドネ100%
アルコール:12%
輸入者:木下インターナショナル
まずはスパークリングから。シャンパーニュではないが、それに劣らない造り。渋みがあり、味わいそのものは、深さよりもフレッシュさが際立つ。泡の持続性が素晴らしく、食前酒として華やかさを添えるね。
「旨い!やっぱりワインが旨い」 く~!
すぐにアミューズ三品(一皿で二人分)がテーブルに添えられる。
アミューズ
いずれも地方の郷土料理だ。
グジェール(コンテチーズ入りのシュー皮のミューズ)…ブルゴーニュ
パニス(ひよこ豆をペーストにして焼いたもの)+鱈のリエット…ラングドック
ピッサ・ラディエール(じゃが芋生地+玉葱マリネ+オリーブ)…ニース
いずれも塩味が効いている。食前酒によく合うおつまみだ。
「よくメモしたにゃ」 ちゃんと味わってた?
必死だよ。
ポタージュ
ヴルーテ・クールジェット
小麦粉、バター、そしてブイヨンで作るとろみのあるヴルーテソースとエンドウ豆の冷製スープ。フランス語のクールジェットだと通りが悪いが、つまりはズッキーニ。えんどう豆のあしらいがかわいい。
後ピンになったけど、このバターと小麦粉のとろみ。伝わるかな。
「まさにズッキーニ💕」
夏野菜の涼味があるね。
それでは最初のスティルワインから。
ル・ブリュイ・デ・ヴァーグ
ヴィンテージ:2021
生産者:ドメーヌ・ジュリアン・ピロン
地域:ローヌ渓谷
品種:マルサンヌ80%+ルーサンヌ20%
アルコール:12.5%
輸入者:セパージュ
当店のソムリエは、グッと頭を下げて低い声で言い含めるように解説する。曰く「深い柑橘系です」。
「うむ。そこまで酸は感じないにゃ」
2021年のヴィンテージだからか若い印象だね。でも、時間が経つとナッツのような香りがたつ品種だよ。次のオードブルと一緒に頂こう。
オードブル
霧島黒豚 伊達鶏 パテ・アン・クルート
厚みのあるパイ生地でパテを包んだ料理。パートブリゼと呼ばれる練り込みパイ生地とパテの間にカシスのポルト酒ジュレを挟み、一週間寝かせる。あしらいはオクラ、姫人参、アスパラのピクルス。それをビーツのソースで頂く。
「肉の食感がゴリゴリでブリブリだの」
豚も鶏も手ちぎりなんだって。
パンも温かくて旨い。もちろんソース用に取っておく。
次のワインはこれ。
ブルゴーニュ コート・シャロネーズ
ヴィンテージ:2021
生産者:ドメーヌ・ド・レヴェシェ
地域:ブルゴーニュ
品種:ピノ・ノワール
アルコール:10.5%
輸入者:セパージュ
いわゆるピノって感じの花のようなブーケは控えめ。むしろレッドベリーと、なめし皮のような香りが同居する。アルコールもタンニンも穏やか。
ウッフ・アン・ムーレット ソース・サバニャン
ブルゴーニュの郷土料理だ。要はポーチドエッグ。
「弾力がしっかりしてゆ」
レシピ本によれば、ムーレットソースは通常赤ワイン仕立てだが、代わりにジュラの白ぶどう種、サヴァニャンで仕込んでいる。春トリュフとチュイル・シャンピニヨン(パリパリきのこ)を贅沢にトッピング。
「崩して食うだよ」 むきゃー♪
サルは卵とトリュフが死ぬほど好きなのだ。
三品目のワインは白。
ブルゴーニュ・シャルドネ フレデリック・マニャン
ヴィンテージ:2019
生産者:フレデリック・マニャン
地域:ブルゴーニュ
品種:シャルドネ100%
アルコール:12%
輸入者:テラヴェール
複数の畑から取れたワインをアッサンブラージュ。「力強い樽香を感じさせるワインです」と、変わらず渋い声で噛み締めるようにソムリエが解説。香りはともかく、北部のそれにしては比較的味わいの濃いシャルドネだ。南国のフルーツのようなファーストノートがある。概して軽めなので今の季節にピッタリだ。
「お魚とハモるにゃ」 きっと♪
ポワソン(魚料理)
熟成メダイのポワレ ソース・ブールブラン
生々しく弾力に満ちた舌触り。洋風干物とでも言ったらいいかな。
5時間熟成したのち1時間加熱したそうだ。
「旨味が凝縮されるわけだ」
バター、レモン汁、白ワインのソースがよく合う。
あしらいはアスパラソバージュ。
「アスパラの穂なのち?」
厳密には違う。アスパラガスはユリ科。これはオオアマナ科。噛むとネットリした独特の歯ざわり。旨いね。これ。
さて最後のワインだ。お肉なので当然…
「あか!」
シャトー・シオラック ラランド・ド・ポムロール
ヴィンテージ:2014
生産者:フランソワ・ピノー
地域:ボルドー(ラランド・ド・ポムロール)
品種:メルロー80%、カベルネフラン15%、マルベック5%
アルコール:13.5%
輸入者:ファインズ
ポムロールと言えば漫画『神の雫』でも紹介されたシャトー・ペトリュスのAOC。このワインもボルドーらしい深みに満ちている。
アントレ(肉料理)
越後もち豚の20時間煮込み カルボナード・フラマンド ノルマンディー風
これも手間暇かかっている。カルボナード・フラマンドは日本語で“フランドルの炭火焼き”。つまり、元はベルギー料理だ。ソースは黒ビールと黒糖がベース。中華の豚の角煮にも通じるね。
ハーブの一種、エストラゴンで香りづけ。コリアンダーの風味豊かな黄色人参のバタームースと一緒にいただく。お肉がブリッブリの弾力なのよね。
「もうワインないにゃ」
だってコースも終了だし。
「…」
すみませーん。なにかお薦めのワインありますか?
フフ そうこないとにゃ
ソムリエが二本出してくれたうちの一本だ。
パナメラ・シャルドネ 2021
ヴィンテージ:2021
生産者:ストーリー・リッジ・ヴィニャーズ
地域:アメリカ(ナパ・ヴァレー)
品種:シャルドネ100%
アルコール:12.5%
輸入者:ピーロート・ジャパン
リッチで果実味のある飲みやすいワインだったね。
「満足すた!」
(おカネの話で無粋だけど)ワインの価格帯は総じて3,500円~5,000円。なのでこのペアリングはとても良心的。お薦めです。最後は食後酒でシメた。
僕はこれ。
バーベイト・マデイラ・ワイン ブアル 10年
生産者:バーベイト
原産国:ポルトガル
品種:ブアル
アルコール:19%
輸入者:マデイラジャパン
ぶっちゃけ養命酒です。あるいは紹興酒?好きなだな。この味。
おサルは?
「別のほう」
シャルトリューズ・ジョーヌ MOF・ソムリエ
生産者:シャルトリューズ
原産国:フランス
品種:?
アルコール:45%
輸入者:ユニオンリカーズ
なんでも、フランスのありがたい賞であるMOFを受賞したソムリエたちが結集して、シャルトリューズ社とコラボした最高のリキュールなのだそうだ。度数が高すぎるね(笑)。だから氷で割っているのか。どんな味?
「なんかすっごく薬草っぽい!」
柑橘系と薬草系のブレンドみたいね。個人的にはこれも好き!
アヴァンデセール
アシェット・マスカルポーネ ビスキュイジョコンドとアーモンドのクランブル ココア風味
塩アーモンドパウダー、メレンゲ、バターを原料に、シロップをこれでもかと限界まで含ませたお菓子。旨すぎる♪フランス版ティラミスだね。
「よく喰えるにゃ…」
夫婦といえど、好みは似ているようで違う。おサルには甘味は敵でしかないのだ。
ご馳走様でした。
デセール
小菓子はカヌレとパート・ド・フリュイ(フレンチグミ)。これも甘い(笑)。
最高の夕食だった。本格フレンチとしては良心的な価格設定。女子会やカップルの予約でいつも満席なのがよく判る。シェフも若い。いや、僕らが年齢を重ねてしまっただけで、独立するのに十分相応しい年齢なのだろう。暇を告げると入り口まで出てきて挨拶頂いた。些細な事だけれど、店に対する客の評価は、こんな処でも決まる。
この階段の先には、野毛の喧騒からは想像できない、シンプルかつエレガントな空間が待っていた。
「やっぱりおサルのセレクトは間違いないにゃ!」
数日間、鼻息が荒かった。
(おわり)
ご訪問ありがとうございます。