奥会津/丸山岳縦走(窓明山~坪入山~高幽山~梵天岳)① | ひつぞうとおサル妻の山旅日記

ひつぞうとおサル妻の山旅日記

ひつぞうです。
おサル妻との山旅を中心に日々の出来事を綴ってみます。

巽沢山(1162m)/窓明山(1843m)/坪入山(1774m)/高幽山(1747m)/梵天岳(1765m)/丸山岳(1820m

福島県

マイナー12名山(丸山岳)

うつくしま百名山(窓明山)

 

日程:2022年5月3日~5日

天気:

【1日目】霧のち晴

【2日目】快晴

【3日目】快晴

行程:

【1日目】小豆温泉駐車場4:50→5:00登山口→6:15巽沢山6:20→8:00家向山の肩8:15→10:18窓明山10:33→12:36坪入山12:43→15:08(1538峰)幕営

【2日目】幕営地4:20→5:40高幽山5:50→7:10梵天岳7:18→9:45丸山岳10:05→12:18梵天岳→14:00高幽山→15:09幕営地

【3日目】幕営地4:45→7:05坪入山7:20→9:08窓明山9:31→10:22コル10:27→10:55家向山の肩→11:50巽沢山→12:35登山口→12:50小豆温泉駐車場

■駐車場:登山口近辺路駐(約7台)、小豆温泉入り口脇(約20台)

■トイレ:アルザ尾瀬の郷(登山口から檜枝岐寄りに約5km)

■行動時間:

(1日目)9時間32分

(2日目)10時間11分

(3日目)7時間22分

※窓明山以降は登山道のないバリエーションルートです

 

《一日目の核心部・坪入山からのスノーリッジ》

 

ひつぞうです。GWイベント第二弾は登山でした。目指したのは奥会津の秘峰・丸山岳マイナー12名山の一座として知られます。長大な南会津脊梁の中心にあたり、西は田子倉ダム奥只見ダムに阻まれ、残雪期縦走か沢登り以外に登頂の機会はありません。『岳人』(№804)掲載の《岳人100ルート》会津朝日岳から会津駒ヶ岳に至るロングトレイルが紹介されていますが、朝日岳南方の通称《鋸刃》の切り立った藪尾根の処理と車の回収に困難が伴うため、窓明山(まどあけやま)からのピストンが主流となっています。詳細は山行記録にて。

 

★ ★ ★

 

【奥会津・丸山岳ピストン】

水平距離(往復)=38.3km、累積標高=3065m

 

何をするにも愚痴が出る年齢になった。まず眼が見えない。GPSはもちろん、手製の計画書すら満足に読めない。だから山に行くのが億劫になる。コロナ禍も多くの山を奪った。この二年あまりで持久力と筋力が減退し、重いザックを担いでの(とりわけ残雪期の)山行が難儀になった。それでも自由に動ける間に登っておきたい山はある。丸山岳もその一座だった。

 

計画は八年前。そして幾たびも中止した。ピストンとはいえ、僕らの体力では三日は要する。一方、春先の日本列島は三日を置かずに低気圧が通過する。なかなか条件が揃わなかった。そうこうするうちに、今度は“温暖化”が残雪期登山自体を困難にしつつある。諦めて爺さんくさく低山で山菜採りでもするか。なかば投げやりな気持ちで準備も疎かに益子の町から戻ってきた。

 

「なんかずっと晴れみたいだの」サル

 

戻るなりネットに貼りついたおサルが呟いた。

 

え?ほんと?

 

即座にパッキングを終えて、翌日昼過ぎに福島県の檜枝岐村を目指した。通い慣れた《アルザ尾瀬の郷》で車中泊する。ところが案に反して天気の回復は遅れたまま。糠雨はいつしか本降りとなり、日づけが変わる頃には、もはや失望しかなかった。やっぱり駄目か。そういう相性の悪い山というのは確かにある。

 

ところが、午前三時頃に雨が止み、東の空が明るくなってきた。

 

 

窓明山の起点となる旧小豆温泉入口の駐車場に急いだ。先行車輛は一台。手早く準備を済ませて登山口に向かった。

 

 

三岩岳~窓明山周回で四年前に一度訪れている。だから最初のピークまで不安はない。いきなりの急登からスタート。一箇月ぶりの登山でこの装備にこの急登。やはり二週に一度はトレーニングを入れないとダメだ(笑)。

 

「お酒ばっかり飲んでいるせいだにゃ」サル

 

 

低い雨雲が速いスピードで流れてゆく。10時頃には回復する予報。期待できそう。

 

 

標高1000㍍を越えたあたりで豊富な残雪が現れた。四年前とは全く様相が違った。

 

「今季は本当に雪が多かったんだにゃあ」サル

 

そうみたいね。

 

 

夜半の雨は稜線では雪だったらしい。巽沢山の山頂だった。

 

 

懐かしい。四年前には自立していた石柱が倒れていた。巽沢山から先暫くは、なだらかな尾根が続く。

 

 

やや斜度が増せばいよいよ本格的な残雪地帯。

 

 

この辺りまでは日差しもあって期待できたんだけど。

 

 

家向山の尾根を越える頃には再び寒々しい空に。

 

 

ここの標識も壊れていた。熊の仕業か?

 

 

窓明山の山頂はご覧のありさま。

いや~。寒そうあせ

 

 

大きくくだって登り返す。雪の回廊が途切れないのが救いのタネ。家向山を見返すと、こちらは晴れている。

 

 

踏み跡から察するに、先行者はソロ1名と冒頭抜いていった男女パーティ2名だけの様子。

 

 

窓明山山頂が朧げに見える。ガスっているね…。

 

 

山頂直下は雪田になっている。ホワイトアウトで視界50㍍程度。

 

 

ついたよ。最初のピーク窓明山だ。四年前は山頂標識が露出していたがまだ雪の中。

 

今回のコースはこのあと坪入山(つぼいりやま)高幽山(たかゆうやま)梵天岳(ぼんてんだけ)丸山岳(まるやまだけ)の四座を踏む。更に無名の中小ピークを間に挟むために、往復の累積標高は3,000㍍を越える。しかし、標高はこの窓明山が一番高い。縦走のアップダウンはせいぜい150~300㍍差。

 

「おサルも行けるかも♪」サル

 

問題は距離。とにかく長いんだよ。それと藪。露出の程度は年ごとに違う。

 

矢筈岳の時よりマシなんじゃね?」サル

 

そう願いたいね。あれは絶望的だった。先行者の踏み跡も坪入山をに向かっている。

 

 

窓明山から(目前の)1775峰までが最初の藪エリアらしい。とりあえず雪田は続いている。

 

 

途切れた箇所は藪漕ぎで。三回ほど僅かな距離を巻く程度。

 

 

前夜の降雪は深いところで20㌢程度。通常であれば黄砂で残念な色に染まるこの季節。ある意味神様からのプレゼントだったかもしれない。まさに純白のベール。

 

 

三回ほどプチ藪漕ぎ。

 

 

西側からときおり青空が覗いた。

 

 

1775峰からは坪入山(右)と1754峰(左)が確認できる。低層の雲で丸山岳は見えない。

 

 

風はそれなりにある。軽量化のために3シーズン仕様にしたのが裏目に出たかも。

 

 

気温の上昇とともにシャバシャバの雪に。

 

 

歩きづらい…。

 

 

最後の登り返し。

 

 

振り返れば窓明山の全景。

 

 

坪入山に到着。結構歩いてきた。

 

 

ここで90度左に進路を変える。

 

 

いよいよ核心部のスノーリッジ。あれ?誰か戻ってくるぞ?最初に入山したソロの男性だった(山頂直下の芥子粒のような黒い点です。手前はおサル)。

 

 

写真で見るとあまり高度感が出ないな。

 

 

どっちに落ちても唯ではすまない。

 

 

時刻は午後一時を回ったところ。幸い日差しが弱いのでグザグザにはならなかった。

 

 

なにしろ荷物が重くて。下手に踏み込むとステップがグザっと崩れる。その度に嫌な汗がタラりと垂れる。でもこのスタイルは変えられそうにない。酒は飲みたい。綺麗な風景は三脚を使って一眼レフに収めたい。熊スプレーも登山道のない山ばかり追う僕には不可欠。これらがないだけで相当の軽量化ができる。

 

しかし、自己流でない登山をしたところで、それは自分の山ではない。

 

 

最初にツボ足で道を開いた男性には頭が下がる。

 

 

無事に1754峰についた。ここで小休止。

 

 

緩いアップダウンののち一気に1538峰に急降下する。東実沢の深い峪を挟んで雪庇が発達した高幽山を望むことができた。

 

「ゴールの山はどこにゃ?」サル

 

雲で見えないなあ。

 

「まだそんな先なのきゃ!」サル

 

大袈裟だなあ(笑)あせ

 

 

藪漕ぎがないって素晴らしい。

 

 

あの高幽山まで進んで幕を張れば二日目の往復は楽ができる。だが、荷物の重い初日に距離を稼ぐ意味は感じられなかった。(すべてはヤブ次第なのだが)過去の記録では1538峰から往復10時間余り。いいんじゃない?そこまでで。

 

 

見た感じは急な斜面だが、思いのほかくだりやすい。藪の露出もたいしたことない。先行するパーティが(上の写真の)1538峰にテントを張っていた。この辺りから天気は急速に回復していった。

 

 

最低コル(1500㍍地点)から1538峰へ。時計を見るとちょうど午後三時。

 

 

雪もかなり緩んできたし、この荷物で高幽山まで進めば、相応に時間を費やすだろう。幕を張る頃合いだった。

 

 

張ることにした。もう少し先にフラットスペースがあるが、後背のヤブに風防を期待した。雪を切って整地。早速ハイボールで祝杯をあげ、最初の晩飯である中華春雨をおかずに白米を口に運んだ。味の濃い食事が疲れた胃の腑に心地よく落ちる。

 

「やっぱり山メシは旨いにゃ♪」サル

 

おサルめちゃ食欲あるねあせ

 

 

眼の前に広がる東実沢の源流部を眺めながらチビチビやる。あの奥が城郭朝日山か。結局、ワカン、ピッケルはお守りでしかなかった。予想はできたがこればかりはどうしても外せない。

 

 

翌朝はあれをまず登る。見上げれば威圧的な高幽山だが、最低コルからの標高差は約250㍍。早目の起床となるので、午後六時にはシュラフに潜りこむことにした。

 

(つづく)

 

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