≪険悪な前ヶ岳南壁第1スラブ≫
こんばんは。ひつぞうです。颱風の進路どうなるのでしょう。今夜も本名御神楽岳コースの後篇です。
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日差しはあるものの、曇ったり晴れたりの繰り返し。ここまで誰にも逢っていない。長めの休憩をしようと思ったところ、巣別れしたと思われるクロヤマアリがどういう訳か標識に夥しく群がり、油断していると背中や胸元に侵入してくるからたまったものではない。
逃げ出すように後にした。御神楽岳本峰までは片道約1時間だ。
ここから藪は激しさを増す。おサルは耳を守るために頬かむり。
御神楽沢の向こうに高倉山。鈍峰に見えるが、地図で確認するかぎり扁平に痩せているようだ。
登山道は尾根を右に左に巻き返しを続ける。左(西側)は鬱蒼とした樹林帯。
このあたりで初めてソロの男性に道を譲った。
右(東側)は痩せ尾根の際を藪に押し戻されながら進む。
なかなかタフな稜線だ。でも(蝉コースに較べれば)危険度は低い。
ちょうど藪が切れたポイントで本名御神楽を捉えることができた。
やっぱり刈払いはした方がいいと思います。
つばくろ尾根と合流。ここで左に折れて最後の稜線歩きに。残りの距離500㍍。
湯沢ノ頭と水晶尾根。二度目の邂逅。このあと忽ちガスに呑まれてしまった。
灌木で足許が見えないけれど滑落したらお陀仏だよね。これ。
御神楽岳山頂に着いた。この日は誰もいなかった。天気は四年前と同じ。会越国境の稜線はせいぜい標高1500㍍。湿った空気が日本海側から入り込むと遮るものもなくどうしてもこうなる。二時間もすれば快晴になるだろうが。
まあいい。絶景は一度ものにしている。この日の目的は福島県から登ることにあったのだから。
「自分を納得させているのち?」
ここでもアリの集団に悩まされた。ラーメンを忍ばせていたのだが、諦めて下山の途についた。
ここから見れば本名御神楽はただの稜線のようだ。
その後ソロ1名、パーティ1組と離合。SW後半とは思えない静かな山旅だった。
「またまたガスガスになったにゃ」
一気に戻ってきたつもりだったけれど、かかった時間は変わらなかった。
やあ、青空だよ。
御神楽岳本峰を振り返る。
行動食を摂って快調に飛ばしてゆく。今回おサルは軽量化で臨んだのでマジで速い。
鎖場もラクラク。
僕はマイペースで。
日帰り装備なのに足がパンパンだ。完全に鈍っている。
でも、悪いことばかりではなかった。
ヤマブシタケの美麗菌に遭遇したのだ。
以前、会津駒ヶ岳、八甲田山で見つけたことがある。しかし、いずれもさがっているか、もしくは高くて観察できなかった。これは極上品。スープ、天婦羅、鍋物、炒め物、何にでも合う。最近は菌床栽培品も出回っている。
尾根のとりつきまで戻ってきた。時刻は14時をまわったところ。読み通りに最高の天気になった。
崩落個所を越えて…
粘土質の巻き道を越えて…
やらしいヘツリを越えて…
こうしてみると面白いトラップが目白押し。
鎖場も帰りは乾燥していて楽勝だった。
人間は降るためではなく、登るようにできているからね。
鎖場を越えれば八乙女滝でフィナーレ。
ぐちゃぐちゃ道を通過して無事終了。
このあと、着替えている間にブユに喰われて散々な眼に遭った。
「油断しているからだにゃ」
=登ってみての感想=
やはり遠かった。(闇夜でもあり)登山口まで本当につけるのかと不安になった。危険個所は鎖場、ヘツリくらいのもので取り立ててない。八乙女滝と八丁洗板は一見の価値あり。尾根の取りつき以降は眺望が効かないし、水場もなく、加えて管理舎からは藪っぽいので精神力勝負になる。それでも会越国境の険阻なスラブと紅葉に彩られた稜線は、余所では見ることのできない絶景。蝉コースとはまた違う稜線歩きが味わえる。紅葉最盛期がお薦めだ。
(おわり)
【行動時間】 5時間+3時間30分
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