本名御神楽(1266m)/御神楽岳(1387m) 福島県・新潟県
日程:2021年9月25日
天気:高曇り時々晴
行程:登山口5:40→6:00八乙女滝→6:55八丁洗板7:10→7:40尾根取付→8:35杉山ヶ崎8:40→9:40管理舎→10:07本名御神楽10:22→11:17御神楽岳11:35→12:27本名御神楽12:37→12:50管理舎→13:34杉山ヶ崎→14:02尾根取付14:12→14:42八丁洗板→15:12八乙女滝→15:28登山口
■駐車場:5台ほど(手前の御神楽橋の傍にも約5台のスペースあり)
■トイレ:なし
■登山ポスト:あり
■行動時間:5時間+3時間30分
≪八丁洗板のナメ床≫
こんばんは。ひつぞうです。SW後半は福島・新潟県境の御神楽岳に向かいました。四年前にも上級者向けの蝉コースで登頂しています。ちょうど紅葉の最盛期で素晴らしい眺望でした。その頂から南に伸びる尾根に一段低いピークが見えます。福島側の地名を戴く本名御神楽(ほんなみかぐら)です。このルートもいつかは歩きたい。そう思ったものの、登山口の遠さは蝉コースの比ではありませんでした。
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【本名御神楽コース】
水平距離=11.2km(往復) 累積標高=988m
地図を眺めると、飯豊連峰の三国岳から南西に、長大な尾根が派生していることが判る。その尾根は一度只見川と交差したのち、起伏を高めて、複雑な支尾根が発達したスラブ剥き出しの深い山塊へと発達していく。その後も浅草岳、毛猛山、未丈ヶ岳と繋がり、銀山平でひとつの終焉を迎える。奥只見という言葉で表されるこの領域は、藪、雪、岩、沢のエキスパートのみに許され、記録も数えるほどしかない。仮にあっても僕ら素人には全く歯が立たない存在ばかりだった。
そんな領域にあって、御神楽岳は手が届く数少ないピークのひとつ。本名御神楽回りの際は避難小屋利用でゆっくり登りたい。そう思った。なにしろ登山口までが遠い。磐越道・会津坂下(ばんげ)ICから国道252号をくだり、本名ダム左岸から林道本名室谷線に逸れて約8㌔のやや荒れたダート道を走る。登山口まで1日余分に欲しい。その意味ではいい機会だった。
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前日は道の駅「奥会津かなやま」で車中泊した。結局、高速代をケチって西那須野ICから昭和村を抜けて二時間半かけて到着。途中、糠雨に祟られたが、幸いにも星空が広がっていた。そして午前四時起床。改めて空を仰ぐと低い雲が垂れこめている…どーしてなのよ。
まあいい。新潟県境ではよくあること。昼前には青空が広がるだろう。
「前ムキだにゃ」
ひと月前まで登山口の3㌔手前が工事中で「無駄なアルバイトを強いられる」とあったが、片づいたと見えて、難なく一番乗りで到着した。また、四駆推奨の荒れた道という情報にもドキドキだったものの、こちらも大したことはなかった。南ア深南部の戸中林道や八ヶ岳の桜平林道に較べれば全然楽勝である。
準備をしていると、猛烈な勢いで一台のワゴン車がやってきた。装備からみて釣り師らしい。親父さんも僕らが山登りと判って少し安心したらしく笑顔で言葉を交わした。
尾根とりつきまでは霧来沢沿いに歩いていく。水量は穏やかで素晴らしく澄んでいた。ここは沢登りでも知られる美渓。一方の登山道はぐちゃぐちゃに泥濘んでいる。スパッツはマスト。他にもヒル、ダニ、アブ、ブユなどの毒虫情報も。ひと通りの予防は講じた。結論から言えば(冷え込んだせいもあるかもしれない)遭遇することはなかった。
15分ほどで10㍍ほどの八乙女滝が現れる。
よく見ると右岸側に残置ロープが設えてあった。僕らは左岸側の巻き道を越える。
すぐに急な鎖場の下降に。鎖の径が太くて掴みにくいうえに、朝露で岩肌がツルツル。
滅茶苦茶滑る。ここが一番の難所だった
結構落差がある。慎重にね。
降り立った場所から今度はへつり道へ。
「このロープ。テンションゼロだにゃ」
しばらくするとズルズルに滑る粘土質の巻き道を通過。このあたりは火口湖である沼沢湖から噴き出した溶岩や火山灰から成っているらしい。
「トラップだらけだにゃ」
あれ?おサル、こっちじゃないんじゃない?
「でも踏み跡があるし」
やっぱり違った。小さな支沢に誘い込まれるところだったよ。
「ここに橋があったのかもにゃ」
※赤テープを確実に追いましょう。
いい加減に飽きてきたところで、沢沿いの空間が突然開けてきた。
斜面と河床すべてが一枚の岩盤になっている。
見あげるとこんな感じ。豪雪に削られた痕だ。
八丁洗板と名づけられた滑床が続いていた。
登山靴で歩いても濡れないほどのヒタヒタの滑沢。暫く思い思いに歩いて感触を愉しんだ。
滑沢の終了点にホオノキの巨樹が。
カメバヒキオコシ
他にもツリフネソウやアキノキリンソウが沢山咲いていた。
気がつくと登山道が折り返して九十九折りに。尾根に取りついたようだ。
思いのほか急登。このあたりでキイロスズメバチにしつこく追い回された。近くに巣があったのかな。
「なんでスズメバチキラーを持ってこなかったのち!?」
いつも何か忘れているんだよね(笑)。
一時間で最初のポイントである杉山ヶ崎についた。
ここから暫く勾配の緩やかな長尾根。ゴヨウマツや翌檜の巨樹が腕を伸ばしている。
左手に前ヶ岳南壁の顕著なスラブ(左が第1、右が第2)が見える。僅か標高1400㍍でこの険阻な姿。越後山脈らしい景観。
「晴れないにゃあ」
時刻は午前九時をまわったところ。今回ばかりは期待薄かもね。(四年前もこんな天気だった)
熊射場と呼ばれる鞍部からは、目の前の山腹に鎖場が斜めについているのが見える。
先行するおサルが見えるかな?
「おう。ヒツも見えるだよ」
この日は高気圧が北日本を中心に張り出すという予報だったが、気圧の谷が通過したのだろう。湿った空気のせいで、どこかボンヤリと霞んで見える。
前ヶ岳南壁右スラブ
そして後背には日尊の倉山。
本名御神楽も紅葉の兆し。二週間ほど早かったかも知れない。
鎖場を終えて…
トップまで来るとヤブヤブに。ここから山頂まで刈払いはされていない。
杉山ヶ崎からここまで一時間だった。一箇月前の情報では屋根が壊れたままだった。最近応急処置を施したみたいだ。ここは昭和57年に会津高校山岳部OBが建てた管理小屋。暫く雨曝しだったので床板が傷んでいるが「年度内に修理予定」と金山村役場の張り紙がしてあった。
「立派な小屋だし勿体ないにゃ」
今現在も超大型颱風が来るってニュースが流れているしね。
山頂までは御覧のとおり。ずっとずっとヤブヤブ。でも会越の山っぽくて僕は嫌いじゃない。
「クモの巣がすっごい!」
などとワイワイ言いながら登っていると稜線が開けてきた。
「あれ山頂なんじゃね?」
もう標柱が見えているね。
いい感じに青空も覗いている。
「ついたにゃ!」
管理舎から30分足らずで、憧れ続けた本名御神楽に辿りついた。誰もいない、わずか五人ほどで窮屈になりそうな山頂には、金山村が建てた標柱が、やや傾きかけたなりで、ひっそりと建っていた。
(つづく)
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