越後山脈/巻機山(ヌクビ沢コース)① | ひつぞうとおサル妻の山旅日記

ひつぞうとおサル妻の山旅日記

ひつぞうです。
おサル妻との山旅を中心に日々の出来事を綴ってみます。

割引山(1931m)/巻機山(1967m) 新潟県

 

日程:2020年10月18日

天気:晴れのち曇り

行程:桜坂5:30→6:18徒渉点6:28→7:00吹上の滝→8:09布干岩→8:50行者ノ滝9:00→11:40割引岳11:58→12:33巻機山12:41→14:36五合目→15:20桜坂

■駐車場:250台(第1~第4まであります) @500円/日

■トイレ:あり(2020年新装)

■登山ポスト:あり

 

≪禍禍しさ漂う黒光りのアイガメの滝≫

 

こんばんは。ひつぞうです。先週末は越後山脈の名峰巻機山を訪ねました。既に井戸尾根上越稜線(白毛門~巻機山)裏巻機コースと、異なるルートで三度歩いていますが、とある事情からヌクビ沢コースは取り残されたままでした。待ちに待っての往訪です。詳しくはいつもの山行記録で!

 

★ ★ ★

 

【ヌクビ沢~井戸尾根周回】

水平距離=10.8km 累積標高=1264m

 

昨年までは毎週のように通いつめた越後の山。コロナ禍と天候不良に泣かされて、今年ようやく二度目の往訪となった。宿題の山は幾つもある。贅沢を云えばテント泊でひと気のない寂峰にうずもれたい。だが、好天は日曜だけで、上州側は雲が多いと示唆された。こうして、上越国境にあって僅かに越後領内に頂きを置く巻機山にまずは絞られていった。

 

(登山口の掲示板)

 

巻機山に残された幾つかの課題。そのひとつがヌクビ沢だった。割引岳(われめきだけ)を源頭にスラブ帯を貫く沢の道。初めて巻機山に向かった六年前のこと。井戸尾根から入山し、ヌクビ沢をくだる計画を立てた。無知とは恐ろしい。八月末まで残雪に覆われ、事故も度々起こるため、実は下山禁止とされていた。だがどういう訳か、当時利用していた山と渓谷社の登山ガイドには下山のコースタイムが記されていた。そんな危険がともなう上級者コースなどと知る由もない。

 

構うことなく下山開始した僕らは、登ってくるベテランハイカーに窘められた。普段は鼻息の荒い僕も、言外に漂う無経験者への憐憫の情を感じて、おとなしく従った。そして、その判断が正しかったことを今回知ることになる。

 

★ ★ ★

 

前日遅く南魚沼に入った。土曜は雨だったが、国境のトンネルを越すと嘘のように糠雨はやんだ。紅葉シーズンの巻機山が阿鼻叫喚の世界であることは既に経験済みである。だが、南魚沼の熊被害の報せに怖気づいて、某所で仮眠したのち午前三時半頃に桜坂の有料駐車場に到着。当然ほぼ満車。辛うじて残ったスペースに滑り込んだ。

 

準備を始めたハイカーの喧噪で眼が覚めた。後で判ったが、今年トイレが新しく完成したのだそうだ。駐車場のアスファルトも確かに綺麗になっている。管理人が言った。「全部みなさんのお陰です」。

 

綺麗なトイレで用をたして早速出発。

 

 

橋を渡って登山口を越えるとすぐに分岐に出る。2013年に重大事故が発生するまではヌクビ沢や天狗尾根も一般道として紹介されていたらしい。

 

 

30分程でやや明るくなり、小屋らしきものが見えてきた。手前には畑もあるので個人宅なのだろうか。刈払いが充分でないために間違って建物の方角に誘い込まれないように。このあたりで山側に入る。

 

 

しっとりと前日までの雨に濡れて、いつでも子熊がひょいと現れそうな、実に嫌な雰囲気である。

 

 

避難道と沢道の分岐に到着。増水した際には巻き道に逃げるということか。だが、パスできるのはアイガメの滝でいずれは沢道に合流する。増水の危険は排除できない。なんの意味があるのかよく判らない。

 

 

沢に降っていく。

 

 

籔が開けると奥に天狗岩、左に黒岩峰が遥か天空目指して突き出ていた。予報どおりに午前中は好天が期待できそうだ。

 

 

倒木に眼を遣ると天然のブナシメジ。カサのマーブル模様が特徴。

 

 

まずは渡渉から。しばらく雨が続いたので増水の不安があったが、靴を脱がずに済むレベル。ヌクビ沢は沢靴でなくても登ることはできる。だが、あった方がいいという声が圧倒的。その一方で、たいしたことないと嘯く人もいる。こういう場合は慎重派の意見に耳を傾けるべき。

 

「といって普通の登山靴だよにゃ。おサルたちって」サル

 

慎重にいこう。

 

 

渡渉ポイントを振り返る。このあたりから後続のパーティに抜かれるようになる。結果18人くらいが通過していった。一応コースタイムにおサルタイムを加えて(登り)5時間+(下山)4時間で計画。

 

 

吹上の滝まではロープと鎖が連続する。スリップに注意しよう。

 

【ポイント①】 吹上の滝

 

 

見えてきた。滝壺が連続する美しい景色が。

 

 

僕らはずっと高巻きコースを進む。

 

 

残念ながら割引沢(ヌクビ沢)は西向きの斜面にあたるため、午前中は日影になってしまう。

 

 

それでもどうでしょう。この日本離れしたスケールは!

 

 

「めっちゃキレイ!」サル

 

 

沢ヤはこのあたりから入渓していくようだ。

 

 

この先から重大事故多発地帯。とにかく磨かれた花崗岩がよく滑るのだ…。

 

 

後方の大源太山の尖がったピークが素晴らしい。景色に見とれている場合ではないが。

 

 

おサル大丈夫かあ?

実はこのあとに一番の悪場が現れる。そうとは知らずにずんずん進む。そして「きゃっ!」と頓狂な声をあげたかと思うと、おサルの下半身が斜面をずり落ちてゆくではないか。さいわい咄嗟に出た手が、鎖、それも中途半端に短い鎖を捉えて、体勢を立て直すことに成功した。

 

問題は僕である。

 

 

金曜の晩にピザを食いまくったのが運の尽きで、どうにもこうにも身体が重いのだ。そんなことを白状しようものなら、またおサルに詰られ通しなので黙っていた。だが身体は正直だった。

 

 

なんかこうね。全く摩擦が得られないから、どうやって身体を持ち上げればいいのか…。

 

答え…このコースは沢靴が(必須とはいいませんが)あったほうが安心です。

 

 

最大の難所を克服したおサルに、もう怖いものはない。すごい人。

 

【ポイント②】 藍甕(アイガメ)の滝

 

 

パンピーの僕らは右岸の巻き道をパス。腕のいい沢ヤは中央を突破していくのだろうが。ちなみにこのコースにロープとガチャの類は不要。

 

 

雨量が多いと流されるね。

 

 

アイガメの滝壷を越せば最大の難所は終了。

 

【ポイント③】 鎖場の渡渉

 

 

沢靴だったらなんてことない場所なんでしょうけど。

 

 

鎖はあるけれど、最後は手を放して「えいっ」と飛び移る。その岩が滑るのなんのって。

 

「水量も多いしにゃ」サル

 

その割には余裕があったね。

 

「行き場を失ったヒツヒツの腕がプルプルで、見てらんなかっただよ」サル

 

知らんよ。そのうちベソかいても。

 

 

天狗岩が近くなったね。

 

 

落合に到着。ここで天狗尾根(左)とヌクビ沢(右)に別れる。

 

 

空が青くて眩しいよ。こんな絶好の登山日和はいつ以来だろう。

 

【ポイント④】 布干し岩

 

 

ヌクビ沢の代名詞とも云える景勝地。この一枚スラブに関しては「滑る」という意見と「登山靴で問題なし」という意見に分かれる。結論からいえば濡れていなければ登山靴でもOK。その代わり少しでも濡れていると危険。

 

 

おサルは安全を期して左岸から。

 

 

写真では判りづらいけれどそれなりの斜度がある。

 

 

「むひい~」サル

 

怖くて動けなくなったそうな。

 

 

なんとか無事通過。このポイントでかなりの後続者に抜かれた。まったく間が悪い。そして、間髪入れずに次なるポイント三嵓沢の分岐が見えてきた。目まぐるしくコースが展開する。愉しい!

 

【ポイント⑤】 三嵓沢分岐と行者の滝

 

 

全体を通じて上半身も使って岩を越えてゆくので、近頃筋トレを全くやっていない僕としては、翌日以降の筋肉痛が恐ろしい…。右手に見えるのが三嵓沢。

 

 

行者の滝で越後の三人パーティに道を譲った。ここは見た目以上に登りにくい。そのためか落石しやすいポイント。

 

 

右上に見える、岩に引っ掛かった古いビニール製品のようなものは、実はおサルの臀部である。笑ってはいけない。チビッコおサルには手掛かりもなく、かなりしんどかったらしく、終わってみれば全身泥んこだったのは笑った。

 

「笑っとるやん!やっぱり!」サル

 

 

ということで登りだけは得意な僕はサクサクっとね。

 

後続の男女パーティが迫っていたので、ここで小休止して不要なギアをしまって、食糧と水分を補給することにした。

 

 

陽光が谷あいに差し込み、錦繍の盛りを迎えた山肌と青い空が目前にあることに、今更のように気がついた。

 

(つづく)

 

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