ぐるめ探訪「井本」で京料理を食べる(福岡) | ひつぞうとおサル妻の山旅日記

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ひつぞうです。
おサル妻との山旅を中心に日々の出来事を綴ってみます。

サルヒツのぐるめ探訪♪【第47回】

京料理 井本

 

カテゴリ:京料理

往訪日:2018年7月1日

所在地:福岡市中央区薬院4-15-29香ビル1-2

営業時間:(昼)12時~14時30分/(夜)18時~23時 完全予約制

予算:(昼)おまかせコース10,000円/(夜)同左 12,000円、15,000円

アクセス:西鉄バス「南薬院」より徒歩4分/市営地下鉄「薬院大通」駅より約10分

 

≪博多の街で味わう夏の京料理≫

 

こんにちは。ひつぞうです。なんとなく気分が乗らず、今日の登山はヤメです。

全国的に大変な思いをしている人が沢山いるのに遊ぶ気分になれないのよ。

ということで先週の帰省日記の続きです。

 

先んじて帰省したおサルと、博多の旨い店で一杯やることにした。「ぐるめ探訪」

とは名ばかりに、麺類主体で本格グルメと無縁な日々のサルヒツジ。帰省の日く

らいはプチ贅沢しようということに。

 

★ ★ ★

 

かつてはイタリアンとフレンチにハマった二人も近頃では和食回帰。だけどね。

都内周辺で和食となるとランチでも三万円は取られる。もちろんお酒抜きで。とて

もじゃないけど予算範囲外(笑)。

 

ところがである。物価の安い福岡は、旨い魚が水揚げされるうえ、好い店が沢山

あるのだ。事情通はご存知だろうが、福岡市内のメインスポットは常に移動する。

僕らが学生の頃は、親不孝通りが繁華街の中心だった(中洲は今も昔もオヤジ

の街)。許は今はなき名門(?)予備校「水城学園」や「福岡英数学館」への通学

路だったので、いつしかそう呼ばれるようになった。

 

その後、赤坂、大名、西中洲、今泉、呉服町と変転としているが、王道は桜坂、

ケヤキ通り、浄水通り周辺に点在している。

 

今回往訪したのは南薬院の閑静な住宅街の一角に店を構える京料理「井本」

東京だと松濤あたりの閑静な雰囲気とどこか似ている。とても判り易い立地な

ので迷うことはないね。

 

 

完全予約制で昼と夜の営業。二回転はしないみたいだね。なのでゆっくり店の

雰囲気を味わえそうだ。共にメニューはお任せ。夜も昼メニューを選べるよ。

 

 

カウンターのみの12席。オープンキッチンの無駄のない綺麗な内装。

 

 

店主さんは若くてスタイリッシュ。しかも愛想がいい。変な衒いや厳めしさなど

無縁。やっぱり博多んもんはよかね~。

 

「頑固者も多いけどにゃ…」サル

 

はいはい。

まずはビールを頂いた。前日までの雨もあがり、好い天気に。渇いた喉にビー

ルが旨い。関東も梅雨明けしたというし。僕の居ない時は常に晴れて、居ても

晴れる時は別の予定が入っている。なんでこんなに間が悪いのか。

 

 

≪毛蟹とジュンサイと芋茎の先づけ≫

季節食材のジュンサイに夏を感じる。微かな苦味が蟹の身の甘さを引き立て

る。「先づけ」はまず眼で客を喜ばせてくれるね。

 

 

≪冬瓜と鱧の梅肉和え≫

ザクっザクっという骨切りの音を聞くと、関西の夏の始まりを感じるね。大分県

中津沖の鱧だという。鱧といえば愛知の日間賀島もいい。日間賀島の鱧は身

が厚い。冬瓜に塗された山椒がぴりりと舌を刺す。繊細な鰹節のダシによく合

うよ。塩分抑えめな味つけが、素材の風味を愉しんで欲しいという店主の気持

ちを表しているね。

 

「いっちょ前なこといっているけど『これ青のり?』って訊いたよにゃ」サル

 

うん。ほら、何だかんだいって似非グルマンだからさ。

 

「超恥ずかしいだよ。一瞬店内の空気が凍りついただよ」サル

 

いつものことだから。

 

 

懐石と云えば酒。酒をちびちびやりながら、次の一皿を待つ。このひと時が最

高の贅沢だよな。いつもは早食いの僕だけど、酒に合わせて頂くことに。純米

への拘りが品揃えに現れているね。

 

 

まずは純米吟醸「山川光男」(山形)から。左党には有名だけど、山形県の

四つの蔵元の共同プロジェクトで生まれた酒なんだよ。山形正宗、楯野川、

東光、男山ね。その四文字をとって。季節限定の酒でフレッシュ感が命。夏

限定の酒が今回勢揃い。やはり旨い肴には旨い酒。

 

 

向つけ≪アラのお造り≫

高級魚アラ(標準和名:クエ)をこうして頂けるのは九州だからこそ。甘い脂が

真骨頂だけどそこは京料理。くどさは割り引いておくということか。腰のある歯

応えを愉しむ。本ワサビがよく効いている。

 

 

続いて

≪生クチコと鮑のお凌ぎ≫

過去のメニューを見ても、糯米を使った≪お凌ぎ≫はどれも旨そうよ。

 

「うみゃ~い!おサルこれが一番好き好き!」サル

 

だろうね。酒飲みの心を鷲掴みだよね。高級食材のクチコ(海鼠の生殖巣)を

惜しげもなく生鮑に載せるなんて。まるで京懐石のロッシーニ風。

 

 

「もう酒がないだよ。くれ!酒」サル

 

普段は「甘くて日本酒なんか飲めない」なんて言っておきながら、旨い酒だと

ガンガン飲むよね、おサルは。ほんと困ったもんだよ。

 

因みにお次は純米吟醸「寫楽」(宮泉銘醸/会津)だよ。ちょっと米の甘味と

麹の香りが強いので、味のしっかりした炊き合わせや焼き物に合うはずだ。

 

 

≪万願寺唐辛子と加茂茄子の炊合わせ≫

野菜の甘さと鰹節のダシだけで、こんな味のハーモニーが愉しめるなんて。

日本人に生まれてよかった。

 

それはそうと、さっきから香ばしい好い香りがしてるね。

 

 

≪天然鰻の焼き物≫

ということでね。本日のメニューの一押し登場。なんと筑後川の天然鰻の蒲

焼だと。ただでさえ鰻は絶滅危惧種なのに。子供の頃は筑後川水系の川に

カンテラ掲げて“夜ぼり”に行ったのが懐かしいよ。

 

「なに夜ぼりって?」サル

 

魚もね、夜は寝るんだよ。そこにそーっと忍び寄って網で掬うんだ。鯉や鮠

や鰻に鯰。稀にスッポンとかね。採ったもんだ。

 

「どうするのち?」サル

 

もちろん食うんだよ。

 

「泥くさくない?」サル

 

一晩以上井戸水にさらすと臭みも取れるんだ。だいたい婆ちゃんが甘露煮に

してくれた。鰻は親父が釘で打ちつけて捌いて蒲焼にしてくれたね。

 

それはそうとね。この焼き物。表面が極薄にカリカリになってるんだ。もちろん

身はフワフワ。山椒の葉もどこか特別な場所から仕入れているんだって。どこ

でも好いわけじゃないんだな。

 

 

≪オクラと生海胆とスッポンのジュレ≫

かつて九州勤務時代に上司にねだられて西中洲のすっぽん専門店にいった。

ちょっと野生の味がして決して旨いものだとは思わなかった。その既成概念を

砕いた一品。夏野菜特有の深い味わいを、繊細な煮凝りが包む。まるで血や

肉の臭みがない。匙を差すと、底に沈んだ海胆が磯の香りを運んでくるんだ。
 

 

「もうないにゃ。ひつぞう飲みすぎだよ!」サル

 

だって油断してるとおサルガンガンに飲むじゃん。こういう店に来て酒で互い

を詰りあうのはうちだけだよ。

 

ちゅうことで津の酒「而今」(木屋正酒造)にしようとしたら、ちょうど隣りの客の

注文で終わった。ま、仕事でも飲める酒だし惜しくないけど、口直しに少し軽

い酒にしたかったのよね。

 

店主さんのお薦めに従って「黒龍」(福井県)にした。お酒は裏メニューが沢山

あるそうです。

 

 

八寸

≪干しクチコの炙りと玉蜀黍の素揚げ≫

そう。このために酒を待っていたのよ。干しクチコの塩味がしっかりしている

ので、少し齧ってはチビチビ。

 

 

御椀物

≪ムツとゆり根の摺りおろし≫

 

 

≪シラスの炊き込みご飯≫

最後はこれで締め。なんでも水道水では旨く炊けないので、自然水を使っている

そうだよ。シラスも細身の宮崎産に拘っている。舌触りがベストなサイズに拘って

いるんだって。だから旨いんだ…。

 

お代わりしていいですよ、って言われたので二杯頂戴した。そこで土鍋は空にな

った。

 

 

だが思う。ふんわりお椀によそうために、土鍋の縁についたご飯をこそいだり

杓文字についた飯粒をお椀に擦りつけたり、そういう行儀の悪いことはしなか

った。いいのに。それも喰いたいのに…。

 

じっと見つめている土鍋はあっさり下げられ…

 

 

水菓子≪わらび餅≫

最後にこれが出てきた。さすが手造り。ふわふわモチモチだよ。黒蜜も甘さ

控えめ。

 

ということでね、暫くは「ぐるめ探訪」は再び麺類を巡る旅に戻るということで。

 

(終わり)

 

【僕の五段階評価】 ★★★★★

 

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