旅の想い出「茅ヶ崎館」 | ひつぞうとおサル妻の山旅日記

ひつぞうとおサル妻の山旅日記

ひつぞうです。
おサル妻との山旅を中心に日々の出来事を綴ってみます。

茅ヶ崎館

 

訪問日:2016年7月2日

所在地:神奈川県茅ヶ崎市中海岸

詳しいHPはココ→ http://www.chigasakikan.co.jp/

 

《緑あふれる玄関前》

 
最近、いろいろ不運の多い僕です。パワースポットとして名高い箱根神社で厄払いすることにしました。その晩は少し寄り道して、茅ヶ崎市の名門旅館「茅ヶ崎館」に投宿することにしました。関東大震災も乗り越えた明治32年創業の老舗です。今では湘南の住宅街に取り囲まれて、ひっそりとした佇まいでお客を迎えていました。
 
 
自宅から日帰りで充分なロケーションなのですが、ここはどうしても泊まりたかった。なぜなら、敬愛する映画監督小津安二郎先生が定宿とされた場所だからです。小津監督は一年のうちかなりの時間を脚本執筆のために、この宿で過ごされました。
 
部屋はいつも決まって二番の部屋
 
自炊用の鍋を持ち込んで、大好きな鋤焼を作るのが日常的な光景だったそうです。そして、煮詰まった鋤焼にカレー粉をまぶしたカレー鋤焼を訪ねてくる映画関係者に振舞うことが無上の喜びだったとか。
 
チェックインの15時よりずっと早く着いてしまいました。表通りから車一台ギリギリの道を辿り、四台がやっとのスペースに停車しなくてはなりません。無理せず電車で来たほうが安心かもしれませんね。
 
ランチのお客さんで大賑わいでした。食事もとても美味しいとのふれこみ。ランチだけでも訪問の価値ありです。あと、自炊(つまり素泊まり)も可能とか。もともと、大磯、鵠沼など茅ヶ崎周辺は転地療養の場所だったので、多少はその習慣が残っているのかも。実態はサーファーの街ですけど(笑)。
 
 
玄関の暖簾をくぐると洋室があって、小津監督ゆかりの品や日本映画の黄金期を伝える資料が展示してあります。映画関係の文献は好きに読んでいいそうです。
 
 
喧騒の食堂を通り過ぎて長い廊下をゆくと、ありました。
 
 
二番の部屋。
そう、ここに泊まるのです。ずっと前から予約していたのでした!

 

 
造りは他の部屋より少し狭いと思います。煮炊きをしたススが天井や部屋の梁を燻したそうで真っ黒。
 
 
ここに名コンビの脚本家・野田高梧さんと常宿されたんですね。
 
 
炭化した表面を磨いたんでしょうね。黒光りしてます。
 
 
裏庭に出ることもできます。散策するのにちょうどいい。梅雨とは思えない天気ですね。(箱根はガスに呑まれて曇天でしたけど…)
 
「登山しない日は絶対弩ピーカンだにゃ!」サルライダー
 
 
ベンチもあります。かつてこの周辺には砂丘があって、すぐ傍が海岸だったそうです。
 
 
この真ん中が食堂。
左翼は宿泊棟で、そこに僕らの部屋があります。
 
 
ほら、一直線で海に通じているでしょう?
 
 
「ひつ!ビール呑みたい!」サルライダー
 
 
この写真に写っているのが二番の部屋。左が小津監督。右が野田先生。
 
 
最近亡くなられた原節子さん。その左上にあるブロマイドは佐野周二さん(関口宏さんのお父さんですね)。そして下の平凡の表紙は佐田啓二さん(中井貴恵、貴一姉弟のお父さんですね。)
貴恵さんにそっくり。
 
「その表現はおかしいだよ」サルライダー
 
 
昭和40年代モダニズム。うちの実家もこういう柄の絨毯にフェイクレザーのソファだったな。いや、いまもそうだけど…。
 
 
おサルが禁断症状なので散歩がてら買出しに。
 
 
風が強いです。サーファーにはたまらんよな。ていうか、このあたりの人は裸でそのままボード持ってチャリで海に繰り出してますね。烏帽子岩もすぐそこ。
 
小津監督の映画にも、しばしば茅ヶ崎の海岸が出てきます。判りやすい処で「戸田家の兄弟」(1941年・松竹)。いい映画でした。茫漠とした砂丘の雰囲気はよく覚えています。今はその面影もありません。画家だと萬鉄五郎岸田劉生も縁がありますね。作家だと国木田独歩とか。
 
 
お風呂は15時から入れます。つまり、チェックイン即入浴可能。この建物自体が登録有形文化財に指定されていて、男湯だけが建築当時の意匠を遺してるそうです。女性の方で見学したい方は15時にチェックインして、スタッフに案内して貰うといいです。幾何学的なタイルの配置とオリエンタルチックな色彩感覚。
 
 
当時の旅館には珍しかった湯気の吹き抜けがあります。細かい細工が残っていますね。
 
 
床には小さな螺鈿がはめ込まれています。お洒落ですな。
 
時刻は18時を回りました。待望の夕食です。
 
 
女将じきじきの配膳です。
 
 
まずはお酒でしょう。銘柄控えるの忘れた!
 
 
蛸の酢の物。
 
 
白身魚のつみれ汁。
 
しかし、前夜に焼き鳥食べてこんなに贅沢していいのか?
(お財布はオサルがきちんと管理しているので、まあ安心ですけど、僕の尿酸値はいったいどうなっているのか…)
 
 
いろいろ考えても愉しくないから今は忘れよう。
 
「甘いね自分に。とことん」サルライダー
 
 
そして今夜の主役。
 
《亜麻猫》(新政酒造)
 
またまた発泡生原酒。ちょっとした振動で栓が弾けるので要注意だそうです。酒米はあきた酒こまち
 
美酒ですよ~。これ。
 
 
派手さはないけれど、細やかな職人さんの技がさりげなく…
 
 
豚肉の西京焼き風
 
酒に合うね。困るね。こんなことばっかりじゃ。
 
 
サクサク食感で見事な揚げあがり。
写真なんか撮ってないでさっさと喰おう。
 
 
〆はじゃこ飯と三つ葉のお吸い物。
 
 
そしてデザートの抹茶アイス。
錫のスプーンも素晴らしい。什器、食器も素晴らしい。
 
 
最高に素敵で贅沢な夜でした。
 
庭にはツツジが植えてあり、開花する五月や紅葉の季節も良さそうです。しかし、こういう生活していれば、当然登山してない訳で、身体には毒です。(事実これを書いている今、異様に体が重いです(泣))
 
(おわり)
 
ご訪問ありがとうございます。