奥多摩・長沢背稜(川苔山~蕎麦粒山~酉谷山) | ひつぞうとおサル妻の山旅日記

ひつぞうとおサル妻の山旅日記

ひつぞうです。
おサル妻との山旅を中心に日々の出来事を綴ってみます。

川苔山(1,363m)/蕎麦粒山(1,473m)

三ツドッケ(1,576m)/酉谷山(1,718m)

天祖山(1,723m) 東京都・埼玉県


日程:12月5日~6日

天候:(1日目)快晴 (2日目)高曇り

行程:(1日目)鳩ノ巣6:20→7:30山ノ神7:40→8:40大ダワ8:50→10:00舟井戸

        →10:32川苔山10:55→12:25日向沢の峰→13:20蕎麦粒山10:30

        →14:45一杯水避難小屋

    (2日目)避難小屋5:00→5:36三ツドッケ5:50→7:05七跳山7:10→8:27酉谷山

        8:42→10:13水松山分岐→11:14天祖山→13:25八丁橋→14:15東日原バス停




【今回のルート】


今年最後のロングトレイルに南アルプス深南部(前黒法師山~バラ谷の頭~黒法師岳~丸盆岳)ピストンテント泊を計画していたが、冬型低気圧の影響で悪天が予想されるという予報。


残念だが、唯一晴天が約束された関東南部のお山で計画を練り直すことに。


この春先、武甲山~大持山の稜線から見た奥多摩の長沢背稜がずっと気になっていた。

好い機会なので奥多摩側からとりつき、川苔山、蕎麦粒山などをへて、最後は酉谷山まで伝うことにした。





JR青梅線「鳩ノ巣駅」近くの駐車場に車を停める。
登山口6時20分スタート。



踏切りを越え、民家の間を縫う。
檜の樹林帯に入る。

ところが
おさる、めちゃノロい…。
急かすと「帰る!」と怒るので黙っていく。


最初のポイント「山ノ神」。標準タイム50分のところを1時間40分かかっている。
「日没前に着くのかなぁ~♪」と
保険のために、さらっと言っておく。

そんなことしてもなんの意味もないけど。



鬱蒼とした樹林に少し陽が差してくる。基本的に今日は天気いいはず。


明るい落葉樹の森へ。
足許で枯葉がかさこそと初冬の音をたてる。


巻き道から鋸尾根が見えてくる。
この尾根、左から順に三つのピークを越えていく。その奥に川苔山の山頂はある。


突然の急登に身体が順応しない。
三つのコブは悪場。油断すると危険。枯葉がよく滑る。注意しよう。


コブを越えると船窪地形の文字通り「舟井戸」というポイントにつく。
近くの水場は涸れていないようだ。耳をすますと微かにせせらぎの音。



霜柱を踏みしめ川苔山山頂を目指す。


10:32 川苔山(川乗山)登頂。 低山の部類だが眺望がよく人気の山だという。
別ルートか、早でなのか、既に数名のハイカーがいる。

川苔が採れる川苔沢の源頭なので、このような名前がついたという説もある。


遥か雲取山まで眺めることができる。
右奥には今日のゴールの避難小屋がある天目山。
別名「三つドッケ」。

(下の写真では一番左の山。ちなみに三角錐の山が蕎麦粒山。)
「ドッケ」とは山頂の意味。確かにスリーピークス。
「突起」から来ているのか。(赤い線を右から進みます)

川苔山からはJ字状に大きく迂回し、踊平という鞍部を経由する。
そのため、時間ばかりが過ぎ、川苔山がいつまでも離れてくれない。




日向沢の峰への登り。けっこう見た目以上にキツイ。


三角錐の蕎麦粒山が近づく。


緩い起伏をたった二人で追いかける。
もう、ここまでくると日帰りの客はいない。みんな、蕎麦粒山から引き返してゆく。

時折、紅い帽子をかぶったアカゲラが道案内をしながら枝から枝へと飛んでゆく。


本日最後のアップダウン。蕎麦粒というには存在感がありすぎ。
ま、おサルには「絶望の峰」だが。



ここさえ耐え凌げば、あとは巻き道のみ。
稜線通しも魅力的だが、この稜線はさほど変化はない。
ゆっくり巻き道を歩くのも、晩秋初冬の山旅に相応しくない?


ただ、道幅は狭く、切れ落ちている箇所も多い。
奥多摩は国内でも有数の遭難現場であることを忘れてはならない。

現役は卒業されたそうだが、元東京消防庁の山岳遭難救助隊副隊長だった
金 邦夫さんの著書をぜひ読んで頂きたい。



一杯水に到着。涸れてなかった。
飲んでみる。うまい。

鉱物的ではなく、有機物からにじみ出たような
丸みのある豊かな味わいを感じる。



200mも歩けば避難小屋。時刻14時45分。
なんとほぼ計画通りについてしまった!


中を覗いてみる。誰もいない。 貸し切りだ。
期待の薪ストーブは撤去され、中はすっきりしている。
(2009年にすでに撤去されたそうだ)

着替えをすませて飯を作る。 今夜はキムチ鍋。
冬場は鍋がいい。簡単だし暖かい。意外にたくさん食べられる。

「ひつぞー、食べられない時ってあるの?」

コレでも心を痛めて喉を通らないこともあるんじゃ!

西日の当たらない一隅でシュラフに包まり、二人でラジオの音に耳を欹てる。
夜の帳が降りるのを待つまでもなく、オサルコは寝てしまう。

ZZZZZZ…。



【二日目】

午前4時起床。粥を作って頬張る。
昨夜8時頃にシカの群れが威嚇するように小屋のそばで啼いていた。
ここは鹿パラダイスだ。
金星と半月刀のような月の許を出発する。
風はない。



遮るもののない三つドッケ(天目山という呼び名よりこっちが好きだ)の山頂から
都内の夜景を暫し眺める。
登山道は昨日に引き続き、ずっと巻き道。
疲れはしないが、いい加減飽きる。

数箇所、桟道を補修してある。角材は現地調達のようだ。
昨日伐りだしたような、マツ科の樹木の好い匂い。



猪熊さんは高曇りと予報。ずばり的中するが、一瞬猛烈な薔薇色に染まった雲取山と酉谷山。



もう酉谷山だ。小屋が見える。

小さなメルヘンチックな小屋。
崩落したはずの基礎は完全に治っている。
ここは熱烈なファンがいるため、週末に宿泊するのは至難の業だという。
唯でさえ、5人も泊まれば一杯だろう。



小屋に降る同じ場所から酉谷山山頂に通じる径が出ている。
北側の斜面には淡い残雪が残っている。

高曇りの空からときおりふいてくる冷たい風に頬を染めつつ、下山の途につくことに。



夏場は視界が効かない酉谷山も、葉の落ちるこの時期ならではの景色を拝むことができる。


ブナとミズナラの枝に遮られてきたが、行福のタオのヘリポートはよく見渡せる。

北側に両神山。その奥には浅間山。
先週以上に雪を被っていた、と思う。





水松山分岐でようやく下降点に。


と思ったら天祖山への最後の登り。

「ええええ~~~っ! また、のぼりぃ~?」

ここもまた絶望の峰だった。


稜線の真横に東京都最高峰の雲取山。そして右肩に雲取山荘の赤い屋根。
なんとか登り返した。途中擦れ違ったのはソロの男性二名のみ。


ここから最後の道。安全を祈願する。
怪我や遭難は最後の最後で起きる。


あまり人が踏み込んでいないためか、元々落葉樹が繁る恵みの森なのか
落ち葉がはんぱなく堆積していておっかない。
滑るし、枯葉の下には滑りやすい石灰岩や、根っこが張り出しているからだ。


斜面は緩い間は、鼻歌なんかも飛び出す。


崩落しかけた大日神社の社殿を過ぎる。
するとこんな嫌な言葉が目に飛び込んできた。

「ひつぞ~、なんかあるよ」

昭文社の「山と高原地図」にも「危険マーク」が。







フィックスロープがあるうちはまだいい。
落ちたら…余計なこと考えない!





無事下山したときは心底ほっとした。
冬枯れた山もいいが、急なヘツリのあるような山は、枯葉に要注意だ。

今回おサルがなぜか泣かなかった。えらいぞおさる!



ここから西東京バスの「東日原」バス停まで、1時間10分と「山と高原地図」。
いま13時35分。バスの出発時間は14時50分。
その後1時間半ちかく次の便はない…。



「ほんとに間に合うの~っ!?」

たぶん、出発ギリギリだ!
小走りに進むサルヒツジ。だが意外にも簡単についてしまった。
まだ出発35分前。

ここからバスでJR奥多摩駅まで約30分かけて移動(460円)。
さらにJRで二駅隣りの「鳩ノ巣」まで戻った。
電車とバスの連絡が好いので嬉しい。

知っている人は知っているが、一杯水避難小屋はちょうど10年前に連続強盗事件が起きた
舞台である。金元副隊長は「そろそろ奴が出所する頃だ」と心配していると何かで読んだ。

「そんなことはあるまいと」は思いたいが、ないとは言い切れない。
そのため緊張の一夜だった。
陽がとっぷり暮れて三人パーティが雪崩込んできたときは心底驚いた。

この事をおサルに話したのは、帰りの車の中である。


「怖~い…」(おさる)


【所要時間】 一日目:7時間30分 二日目:7時間35分(休憩含まず)