甲子山(1,549m)/甲子旭岳(1,835m) 福島県
日 程:2015年12月12日
天 候:晴
行 程:甲子温泉7:40→9:33甲子峠分岐→10:00甲子山10:18→13:00旭岳13:18
→14:15最低鞍部→14:38甲子山→15:40甲子温泉
「甲子山からの旭岳」
【今回のルート】
この週末は登山なしの温泉旅行の予定だった。
そのうえ金曜日は「こりゃお山は駄目だね」と自分を納得させるのに
充分な大荒れの天候だった。
ところが夕方猪熊さんの予報を見ると、なんと翌日の福島は晴の予報。
しかも風もない穏やかな一日となっている。
急遽、おサルを拝み倒し、山付き温泉旅行にしてもらう。
となると甲子温泉が登山口になっている甲子山(かしさん)がいい。
翌朝、4時30分に自宅を出発。甲子温泉に7時20分到着。
驚いたことに雪がほとんどない。
数日前、宿のスタッフから「どんな車でこられますか?」と心配されて電話がかかってきたのに。
この日の宿泊者ではあるが、本格登山の格好で敷地内を通過するサルとヒツジ。
朝食のお座敷から丸見えで、宿泊者は「なんだアレ?」と驚いたと思う。
直ぐに四十八曲がりのつづら折の道が始まる。
まずは温泉神社を通過する。
間もなく水平歩廊にいたる。
天気最高!
実はヒツゾウ、この日の行動についてまだ迷っていた。
甲子山往復だとせいぜい4時間で終わってしまう。
まず甲子山を単なるピークハントの対象にしたくなかった。
この山は二岐温泉から入山して小白森、大白森を通過して
更には那須連山の主要ピークに繋げる縦走の中で
歩きたかった。
しかし、温泉旅館に泊まることが第一の目的。
そこに無理やり登山をセットしているのだから贅沢は言えない。
前日あることに気づいた。
「旭岳とセットにすりゃいいじゃん!」
天才的ひらめき!天啓の導き!千載一遇のチャンス!
と小踊りしたのはいいが、この旭岳は那須主峰の朝日岳とは違って
登山道がない。夏は藪漕ぎ、残雪期は急傾斜の雪壁登攀を強いられる
マニア向き。個人的には残雪期にやりたかったが、
この時期はどうなのか?雪質がさらさらだと雪崩にやられはしないか?
そもそも行動時間もまったく読めない状況で、14時30分のチェックインに間に合うのか?
といろいろいろいろ悩みに悩み沈思黙考。
しかもオサルはスパッツ忘れたげな。
「しかたないじゃん。ないものはないんだし」
相変わらず強い、おサル。
そういうヒツゾーも「ピッケルどうしようかな~♪」なんて
自宅で準備しながら言っていたけど、ワカンは持ってきていないし、ブーツはミドルカット。
ゲイターではなく、夏用のスパッツである。
おまけにストックにはバスケットを付けてきてない。
そもそも雪が少なそうだと勝手に判断し、春山程度の装備できている。
自分でも訳が判らない。
甲子峠に向かう分岐に到着。ここから左に行けば甲子山山頂はすぐ。
ところが、ここから吹き溜まりのせいでとんでもないことに。
無事山頂に到着!
なんと素晴らしい景観!誰もいない。今のところ。
第一級の雪山を前にして、このまま帰って好いのか?
いやよくない。
「なんか登れるんじゃね?」
「じゃいく?」(おさる)
旭岳(赤崩山ともいう。こっちのほうが山の特徴をよく表している)は
登山道がないと言ったものの、記録を読むと北東の稜線には
しっかりした踏み跡があるようだ。しかもテープは豊富、虎ロープも敷設されている。
無雪期だと藪でルートを見失う可能性もあるが、葉が落ちている今なら
ロストする確率は減りそうだ。
行くことにした。
こんもりした甲子山の山頂をあとに下降する。
今まで以上に雪が厚くなり、しかも昨日の雨の影響か
表面がクラストしていて歩きにくい事この上ない。
バットレスになって落ち込んでいる斜面ギリギリにルートをとる。
10時18分に甲子山を出発した。甲子山から下山するのに1時間とみて
13時30分には戻らねばならない。
「ちゅうことは往復3時間。大丈夫かな。微妙やね」(ひつぞー)
一旦、最低鞍部まで下る。その高度差100m弱。
すぐに登山道標識が現れる。
このあたりは広いのでホワイトアウトには要注意だ。
正式な縦走路は下に巻く。旧道は上側についている。
×印で進入を拒んでいるが、ここを通過しないと旭岳には登れない。
虎ロープの先に笹に囲まれるように旧道の一本道が薄っすらと確認できる。
しかし、いきなりのモナカ雪に膝までとられるヒツゾー。
「こりゃ駄目だよ。ワカンがないと進めない。」
「じゃどうするの!?」
「この先に坊主沼避難小屋があるから、そこでラーメンでも
作って食事して帰ろう…。」
実質的敗退宣言。
ところがオサルは軽い。それを武器にどんどん進んでいく。
あとから転び、躓き、悪態をつきながら
オサルの後を追うヒツゾー。
だがよく地図を見ると避難小屋まではかなり高度を上げる上
水平距離もある。こりゃいかん。
「もうちょっと見晴の好いところまでにしよう」
どんどんテンションが下がるヒツゾ~。
こんな途中までのへんちくりんなルート踏んで帰るなんて
なんて美しくないルートなんでしょう。
そもそも最初から計画が中途半端なのである。
こういう登山こそ遭難しやすい典型じゃないの。
そんな戯れ言に付き合う素振りもなく、ブッシュの中をガンガンに進むおサル子。(写真右の藪)
実はオサルはこう見えて雪山には強い。
岩場では泣きべそかいてばかりだが、
細いリッジも急斜面も、柔らかく軽い体を充分に活かして高度を稼ぎ、
ついでにヒツゾーが登れるようにルート工作もしてくれる
心強い見方なのである。
人を見かけで判断してはならない。
これ以上、新雪が積もっていたら、登山は無理だった。
ホウホウノ態で最初の肩に乗り上げた。
見た目以上に急勾配。しかも一歩踏み出す度に膝までずぼる。
切り込み隊長も、四つんばいにならないと沈むか
藪枝が邪魔して進めない。
行け行け、切り込み隊長!
がんばれ~サルサル!
しかし、重そうなワタクシどす。
展望が開けてきた。
この残雪期に登った二岐山も見える。
ここも残雪期はルートを見失いやすく、
特に地獄坂の降りはものすご~い急斜面でピッケルがないと
滑落する。
あっちのほうは沢山ハイカーがまどろんでいるんだろうな~。
ところどころ藪が出ているので落ちないように。
時々いやらしいリッジもあるが、雪は締まっているので大丈夫そうだ。
一応30mロープや捨て縄も持参したが使わなかった。
最後の急登。モデルになってもらうため先に行ってもらう。
とんでもない夫である。
「いい加減代わってよ!」
ラッセル隊二匹はきつい。枝に掴まりながら体を引き上げては
膝で圧雪。ほんとにこの先が山頂なのか?
怖いね。
おいサルよ! ピークですばい!
着いた!時刻13時丁度。
予定より1時間遅れた(まあ当たり前か)が、
ツボ足で頑張りバリエーションを克服した。
しかもこの貧相な(というよりちぐはぐなんです全てが)装備で。
感動もひとしお。ビールで渇きを癒す。
どうです。この景色。まだまだ登っていない山はたくさんありますよ。
温泉があるので20分も滞在せずに即下山だ。
けっこう降りで太腿に疲労物質が溜まりまくり…。
いい感じで陽が落ちてゆく。
結局1時間遅れの15時40分に戻ることができた。
おサルが悲憤慷慨、意気消沈しているのが
後姿でわかる。こめんよオサル。
でも君のお蔭で素晴らしい山行をものにすることができた。
「ひつぞー、雪山いっつもじゃん」
そう越前経ヶ岳も、編笠岳も、敗退しかけたの完登したのは
オサルのおかげだもんね。
この後は「おサルの温泉めぐり」に続く。
※今ならサルヒツジのトレースがバッチリ残ってます。
【行動時間】 5時間+2時間20分 (休憩含まず)