★★★★☆ 4.5 (個人的な好みとして)
本の紹介をしている以上、やっぱり、書いておこうと思いました。
高村氏は、ご自分の体験から作風が変ってしまいましたが、
「李欧」までの彼女の作品が大好きでした。
「マークスの山」は、もう15年も前の作品なのですね。
直木賞受賞作ですし、映画化もされているので、今さら、ですが(笑)。
警察ものの、ミステリです。
単行本
精神に暗い山を抱える殺人者マークス。
謎の凶器による、連続殺人。
被害者の接点は? 殺人の動機は?
事件の真相と犯人を、
警視庁の合田雄一郎らが追う…
合田雄一郎が主人公の作品は、
この後、「照柿」「レディジョーカー」(他にもうひとつ、未出版の作品)に続きます。
登場人物の描き方に、とても惹かれます。
合田刑事は危うくて、水沢も真知子も哀しく…。
それぞれが、それぞれに、何かを抱えて生きていて、
架空の人物なのに、そうでないように思えてきます。
犯人の水沢裕之は、精神に暗い山を抱えていますが、
(犯人は、知ってもネタバレにはなりませんので、ご安心を。)
合田刑事も、心に暗いものを抱えているのです。
北アルプスの地図をたどりながら、
シーンを思い描きながら、物語を楽しみました。
読後感がいいとは言えませんが、
心の奥深くで味うことができました。
読んでよかった、と思いました。
「マークスの山」は、
2003年に全面改稿され、文庫が出ました。
ストーリーはそのままですが、
わかりやすく、きれいにまとめられていました。
きれいすぎて、重みや荒れた痛々しさがなくなっていました。
私の好みですが、
絶対に、単行本の方がいいです
93.3発行
早川書房
03.1文庫
講談社