※BGMでも聴きながらお読み下さい。
EXILE / 道
田植えの季節になった。
この時期になると、田舎の景色は一気に春から初夏へ向かう。
水が張られた田圃に空が映り、農家の方々は朝早くからトラ
クターを走らせる。
日本人の食を支えてくれている大切な仕事だ。
しかし、その一方で毎年気になる事がある。
田圃から田圃へ移動する際、トラクターのタイヤに付いた泥
が道路に大量に落ちる。
すると、その上を通行した車は泥水を跳ね上げ、車体は泥だ
らけになる。
自分も何度も経験している。
洗車したばかりの車が、一瞬で泥まみれになる虚しさ。
特に雨の日などは、本当に酷い。
だが、その中でも「人としての姿勢」が見える瞬間がある。
真面目な農家の方、あるいは自分自身が嫌な思いをした経験
のある方は違う。
田圃作業が終わると、竹箒を持って道路に落ちた泥を掃き始
めるのだ。
決して楽な作業ではない。
田植えだけでも重労働なのに、その後さらに道路清掃まで
行う。
それでも、「他人に迷惑を掛けたくない」という気持ちがあ
るのだと思う。
そういう姿を見ると、本当に頭が下がる。
しかし残念ながら、全ての人がそうではない。
道路に泥を大量に残したまま帰る人も居る。
そして不思議な事に、そういう人ほど自分が乗用車で移動す
る立場になると、道路の泥に文句を言ったりする。
「道路が汚い」
「車が泥だらけになった」
「誰だ、こんなに泥を落としたのは」
そう言う。
けれど、自分が泥を落とした時の事は棚に上げてしまう。
人間とは不思議な生き物だ。
自分が被害を受けた時には敏感なのに、自分が他人へ与えて
いる迷惑には鈍感になってしまう。
だからこそ思う。
多少の労力を惜しまず、道路の泥を掃いて欲しい。
竹箒で掃くだけでも違う。
道路脇へ寄せるだけでも違う。
後から通る人の気持ちは大きく変わる。
「自分が嫌な事は他人にもしない」
これは子供の頃から教わる、とても単純な事だ。
しかし、大人になるほど忘れてしまう人も多い気がする。
田植えは、日本にとって大切な仕事だ。
だからこそ、農家の方々には感謝している。
だが感謝と同時に、ほんの少しだけ周囲への気遣いもあれば
もっと気持ち良く共存出来るのではないかと思う。
泥だらけの道路は、これから暫く続くだろう。
おそらくあと一カ月くらいは続くはずだ。
だから今は洗車を諦めている。
どうせ洗っても、また泥だらけになるからだ。
けれど、道路脇に掃かれた泥を見ると、少しだけ気持ちが温
かくなる。
そこには「次に通る誰か」の事を考えた、人の優しさが残っ
ているからだ。
May be the best year of my life.








