日本を羨むシナの皇帝 | 人差し指のブログ

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「 勝者の極意 」

津本陽 (つもと よう 1929~2018)

朝日新聞社 2001年11月発行・より

            織田信長と天皇制        今谷明 / 津本陽

 

 

 

今谷    ちょっと古い話ですけれども、平安時代に日宋貿易で日本の

       お坊さんの奝然(ちょうねん)という人が中国へ行って、宋の二代

       目の太宗と面会したときに、「日本はどんな国だ」 とご下問が

       あった。

 

 

       奝然が、「日本というのは代々、上は天皇、家臣はみな世襲す

       る国でございます」 と言ったら、太宗がうらやましがって 

       「お前の国はいいなあ、何ていい国だろう」 って。

 

 

        横の家来に 「何と日本はありがたい国じゃないか、お前ら官

       僚もいつクビになるかわからんのに、日本では親子孫までそれ

       ぞれ地位が保証されている、それで治まっている」 と。

 

 

       そこに日本と中国の制度の違いといいますか、国情の違いが

       象徴的に表されている。

 

 

       中国の皇帝がうらやましがった理由もあると思うんですね。

 

 

       私も最初はこのエピソードは興味なかったんですが、

       最近はやっぱりすごい話だなと思うようになりました。

 

 

        中国というのは、革命でものすごいエネルギーを要するわけ

       ですよ。

 

 

       次の王朝をつくるときは前の王朝を皆殺しにしないといかんの

       で、凄まじい流血の惨事とエネルギーを費やして新しい王朝を

       つくる。

 

 

       それが革命なんですが、日本の場合は、上を担げば下は安

       泰、天皇家は安定装置とでも申しますか・・・・・。

 

 

津本    いや、ほんとにすごいと思いますね。

 

 

       唐の則天武后が係累を全部根絶やしにしてるんです。

 

 

       自分の子供も許しません。『資治通鑑(しじつがん)』 に書かれ

       ています。

 

       唐の皇族を全部根絶やしにする。

 

       根絶やしにするけれども血統はそれによって続くんだと言うん

       です。

 

 

今谷    『資治通鑑』 はだいたい史実を反映したと言われてますね。

 

       あれを読むと日本とは国情がまったく違いますね。

 

 

津本    日本だったらとても考えられないですよ。

 

 

       いま私 『水滸伝』 を書いてるんですが(注=後に単行本化)、

       人肉を食べる話もいっぱい出てきますね。

 

 

今谷    昔から、刑場で政府高官などを処刑すると、恨みを持った遺族

       が全部寄ってきて肉を持って帰って食べるんですね。

 

       だからもうほんと骨だけになってしまう。

 

 

       何万という規模で人民を処罰してますので、その恨みを持った

       家族もまた多い。

 

 

       肉を市場へさらすんですが、寄ってきてみな持って帰る。

 

 

       人の肉、肝を食べる話は史実で、五代のとき北方民族の

       遼(りょう)、契丹(きったん)族にあったようですね。

 

 

       契丹人の節度使が人の肉を腰にぶら下げてるという記述が 

       『資治通鑑』の中にあったと思います。

 

 

津本    それに比べたら日本はほんとに穏やかですねえ。

 

 

今谷    確かに穏やかですね(笑)。

 

 

       1989年の中国・天安門事件のとき、鄧小平が20万人殺して

       でもと言ったのは、歴代の皇帝の気性をそのまま継いでます

       ね。

       共産主義になっても変らない。

 

 

       イデオロギーというか、何万人殺しても安定させるんだとという

       伝統を強く感じます。

 

 

       でも殺さなくても安定している日本のほうがいいと言えばいい

       (笑)。

 

 

津本    いや、いいですよ。

 

 

今谷    だけど、戦後の歴史家というのはだいたい中国式の革命のほ

       うがいいと主張しています。

 

 

       ですから天皇制を毛嫌いしていた面がなきにしもあらずです。

 

 

       天皇制は一つの安定装置としては一種の英知というか、もう少

       し諸外国にもこういう理由で続いてきたんだというふうにちゃん

       と説明してもいいと思います。

                       「小説トリッパー」 1998年秋季号

 

 

                                            

 

 

2017年5月10日に 「文化大革命と人肉食」 と題して日下公人の文章を紹介しました。コチラです。  

https://ameblo.jp/hitosasiyubidesu/entry-12271881035.html

 

 

 

2018年10月15日に 『イギリス人が調査した「中国の食人」』と題して金文学の文章を紹介しました。コチラです。

https://ameblo.jp/hitosasiyubidesu/entry-12411126459.html

 

 

 

 

朝霞(埼玉)の文化会館みたいな所で盆栽を展示してました。

11月3日撮影