戦国時代の戦の見物    | 人差し指のブログ

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本を読んで面白かったところを紹介します

 

 

「 織田信長  新装版  」

会田雄次 / 原田伴彦 / 杉山二郎

(株) 思索社 1991年9月発行・より

 

 

 

杉山  戦国時代に戻りますが、これを農民の側からみるとたいへん不幸

     な災害の多かった時代ということになりますね。

 

 

     黒澤明の 「七人の侍」 みたいなイマージュが自然とでき上がっ

     ちゃう。

 

 

     けれど一方では戦争の敗者を虐殺して武具甲冑・調度類を剥ぎと

     ったりもしてる。

 

 

     農民の受難時代にはちがいないけれど、人間というのは逆に振幅

     が大きくゆれて、刹那の平和やしばらくの間の収穫祭を徹底的に

     楽しんだと思うのです。

 

 

     そうでなけりゃ生きてゆけませんよ。

 

     そして大地にしがみついて、強者には泣きごとを操り、弱者には

     徹底的に嗜虐性を発揮する。

 

 

     現代の観念性はとかくあまりにも一方だけを強調しすぎてね、

     被抑圧者はたいへんだった、可哀そうだったんだというけれども、

     それはそれで緊張した生活に潤いもあれば悦楽もあったという

     認識も必要だと思います。

 

 

会田  現在の戦争とちがいますから。せいぜい鉄砲ぐらいで、全知能と

     全肉体を投じての戦いですからね。

 

 

     スポーツの極限化したみたいなものだ。

 

     レジャーの中には、危機を人工的に作るのが一つをしめていま

     す。スポーツもその一種でしょう。極端にいえば、生命の危機のあ

     るスポーツがいちばん楽しいわけでしょう。

 

     (略)

 

     そういうのが、だから最高のスポーツでしょう。

 

 

原田  それに戦いのドサクサにまぎれて略奪もできるし、

     拾い物もたくさんある。(笑)

 

 

     関ヶ原合戦で西軍が大津の城を攻めた時、京都の住人が水筒と

     弁当持って三井寺の観音堂の高台に見物に行ってます。(笑)

 

 

     戦争が始まっても自分のところが荒らされたり焼けないかぎり、

     これは面白いからね。(笑)

 

 

杉山  他人の大事ですからね。

     火事が面白いっていうのと非常に似てる。

 

 

会田  戦争見物くらい面白いものはないと思うんですよ。

 

     火事どころの騒ぎじゃない。そこで殺し合いしてる。あちらの森で

     戦いの雄叫びがあがり、こっちで鬨の声が聞こえるというような時

     代は、ぞくぞくするほど楽しい。

 

 

     野次馬たちも、やってる当人にとっても、森に集まって、

     エイッ、エイッ、オーッとやってる時は楽しかったろうと思うな。

 

 

     無限なる未来が開けるわけでしょう。

     死ぬかもしれんけど、死ぬのをそう惜しんでるわけではない。

 

 

杉山  それから近代戦におけるような意味でのむごたらしさがないわけ

     ですから、信長が怒った時以外は大量殺戮っていうのはそうない

     ですね。

 

 

会田  長島一揆なんかの場合以外はね。異民族との宗教や征服をかけ

     ての戦いならとにかく、こっちだって百人のうちせいぜい一人だ。

 

 

原田  さらし首なんてしょっちゅう見てる。

     そういう点は麻痺してるから、死体にたいする恐怖感は少ない。

 

 

会田  どっちにしたところで、畳の上にいたところで、流行病だとか栄養

     失調とか、いろんなことで育つのは十人のうち二,三人でしょうか

     らね。戦いがあったって、それにプラス一人、二人というだけ。

 

 

     戦いがなくなったってジャカスカ死んでいた世界でしょう、

     あの頃は。

 

     だからぼくは楽しかったと思うな。

     ただ弱い人間とか病人はかなわんですがね。

 

 

杉山  弱者にとっては、たいへんな時代なんだけれども。

 

 

会田  ある程度以上の肉体と精神とをもつ、普通人以上の人間にとって

     は、それこそ天下一をめざしていろんなこといって生きられる時代

     でしょう。

 

 

                                                            

 

 

2018年1月22日に 「雑兵たちの略奪が酷すぎる」 と題して小和田哲男の文章を紹介しました。こちらです。  ↓

https://ameblo.jp/hitosasiyubidesu/entry-12334974881.html?frm=theme

 

 

 

 

朝霞(埼玉)の花火大会  8月4日 中央公園にて撮影