今日も独りで映画館 -21ページ目

『休暇』(2008日本)

2008年6月15日(日) 有楽町スバル座

『休暇』(2008日本)

http://www.eigakyuka.com/


<人の命とひきかえにした幸福はあり得るか?>遅い結婚を控えた勤勉な刑務官は、死刑執行の“支え役”に志願して“休暇”を得る。だが“休暇”の代償が、人の命の重さと、己の身の幸せの狭間で男を苦しめる


まず、日本の死刑は絞首刑である点を認識して鑑賞する必要がある。1件の刑を執行するには、複数の刑務官の立会いが求められる。中でも、死刑執行の際に上から下へと激しく落ちてくる死刑囚の身体を支える“支え役”(死刑執行補佐)は誰もが避けたい役回りで、担当した刑務官には特別休暇が与えられる。


本作はその“支え役”に志願して特別休暇を手に入れた男の決断と期待、そして苦悩を描く。


日々黙々と、刑務官としての業務に徹する平井(小林薫)は独身を通してきたが、姉の勧めから縁談がまとまり、シングルマザーの美香(大塚寧々)との結婚を控える。打ち解けられずにいる美香の連れ子達哉(宇都秀星)との距離を縮めるため新婚旅行を計画する平井だが、半年前に亡くなった母の葬儀等で有給休暇を使い果たし、休みを取るあてがない。


そんな折、勤務先の拘置所に収容されている大人しい絵描きの死刑囚・金田(西島秀俊)の死刑執行命令が下る。“支え役”に志願すれば、特別休暇を取り、美香や達哉と温泉旅行くらいには行ける。だが、職務の一環とはいえ、人の命を奪う行為に加担した者が、真の幸福を享受できるだろうか。平井の心は揺れ動きながらも、忌まわしき役割に志願する。


平井が拘置所で勤務にあたる時間軸と、美香との見合い、結婚披露宴、そして新婚旅行へとつながる一連の時間軸が交錯しながら描かれるので、その時々の決断が後にもたらす影響や心理などと常に隣り合わせになっていて興味深い。


また、主人公である平井の心理だけでなく、死刑執行を待つ死刑囚・金田の描写も見逃せない。模範囚でありながら、どこか謎めいた金田の存在は、本人がどのような罪状で死刑を待つ身であるのかが明確にされていない点に起因する。


劇中に一度だけ、金田の罪を暗示する描写がある。また、面会者が妹ただ一人であることもあり、一つの答えを想起させる。さらに、絵を描くのが好きで、絵の世界に逃避しているような金田と達哉の共通点、そして金田の年の離れた妹の存在が、その想像に背筋が凍るようなある予感をもたらすが、それはいささか考え過ぎだろうか。


苦渋を滲ませる小林薫の演技、刑の執行を前に怯える死刑囚を演じる西島秀俊の何者にも染まらない白さは両者ともに迫真の演技。また、新米刑務官に扮した柏原収史や幹部刑務官・三島役の大杉漣など脇を固める俳優陣も豪華で、刑務官という仕事に血を通わせている。


また、全編を通して重苦しい雰囲気に包まれる中、金田の妹・久美に扮した今宿麻美の悲しみと幾多の想いを飲み込んでの涙、平井の妻・美香に扮した大塚寧々の艶やかな色っぽさが際立つ。


サスペンスでもラブ・ストーリーでもないのに終始ドキドキ感を伴う、緊張感漲る作品世界に強く惹きつけられた。


『休暇』(2008日本)

監督:門井肇

出演:小林薫、西島秀俊、大塚寧々、大杉漣、柏原収史、宇都秀星、利重剛、今宿麻美、榊英雄

配給:リトルバード

上映時間:1時間55分

公式サイト:http://www.eigakyuka.com/


有楽町スバル座

千代田区有楽町1-10-1

有楽町ビル内

TEL: 03(3212)2826

劇場サイト:http://subaru-kougyou.jp/movies/index.html


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