【舞台観賞】「ヒーローがいなくなったこの街で」(劇団サラリーマンチュウニ) | ヒトデ大石のなんとなくレポート置場

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2011年8月「ヒトデ大石のどんなブログにしようか検討中。」からタイトル変更。
ライブイベント、舞台観劇のレポートを中心に書いていこうというブログ。
以前はmixiが主戦場だったけど、今はこっちが主戦場(笑)

※この舞台は12/3~12/6まで公演された舞台で、既に終了しています。
 
12月観劇第2弾!
……という事で「Cheer drop」と同じ日に観劇2本回しを久々にしてきました。
 
先程の下北沢から今度は上野に移動……。
この日、2本目の舞台となったのは劇団サラリーマンチュウニ公演「ヒーローがいなくなったこの街で」です。
劇場は上野ストアハウス……。
 
もう何から何まで初物尽くしとなりました。
まず劇団サラリーマンチュウニが初。
上野ストアハウスも初。
 
なんでこんな初物尽くしのところに自分が行った!?
……というところで、まずは劇団の紹介から致しましょう。
 
劇団サラリーマンチュウニは「サラリーマンの表現活動を応援する、食えない役者を減らす」という理念を掲げて2009年8月に旗揚げした劇団です。
(当日パンフレットより抜粋)
実際、今回の舞台、出演者の大多数がサラリーマン……つまり社会人として定職がある方との事です。
これは舞台の最後に「この中でサラリーマンの人」と聞いて、出演者の多くの方が挙手していたので間違いありません。
 
そんな劇団サラリーマンチュウニの主宰が鈴木雄一氏。
実はこの方、自分が応援しているジャングルベル・シアターの元劇団員。
今でも良くジャングルベル・シアターには機会があれば、裏方で関わっている方です。
なので何度かジャングルベル・シアター公演の際でもお会いした事はあるのですが……実は演技を拝見した事はこれまでありませんでした。
 
さてそんな自分が何故、今回の公演を観に行く事になったか……。
実は先日のジャングルベル・シアター公演「悟らずの空2015」でも、この公演のフライヤーは挟まっていたので、気にはなっていました。
更に今回、ジャングルベル・シアターの劇団員も多く、制作として関わっているというでは無いですか!更にそこに軽くお誘いの言葉があり……はい!行ってまいりました!(笑)
 
……という事で、ちょいちょい道に迷いながらたどり着いた上野ストアハウスには、普段、舞台の上での姿しか見る事の無い、ジャングルベル・シアターの劇団員の皆様が、受付とかで頑張っていました(笑)
あぁ……満足(笑)って、まだ舞台すら始まっていない!(爆)
 
……冗談はさておき……初めての会場なので、所感でも。
舞台については奥行はあるけど、あまり高低差は感じないフラットな印象。(特に前の方)
席の数はざっと見100席前後と言ったところか。
あまり後方の席が高い印象が無いので、舞台全体を見るなら真ん中あたりが一番かな……と思いまして、大よそ前から5列目の真ん中よりに今回は席を取りました。(自由席だったもんで)
 
そんな会場で開演まで待っているのですが、流れてくるBGMがなんというか……自分の年代的にツボな楽曲が多かった。
かと思えば、今回がヒーローものという事もあって、その年代のアニメソングや特撮ソングがちょいちょい突っ込まれている(笑)
公演開始前からなかなかいい雰囲気が作り出されていると思います。
 
こうして迎えた開演5分前……ちょっと凝った演出の前説が開始。
まるでヒーローショウが始まる前のお姉さんとチビッ子の心境(笑)
いざヒーローショウ(本編)開始……と思われたところで、なんか痛々しい中二病満載の敵役が登場して……ヒーローたちと共に退場(笑)という流れで前説終了。
そしていよいよ本編開始となる。
 
公演終了後につき、ネタバレ有のあらすじでも……。
 
 
 
日本のどこかにある雄英市には、一般市民を助けるための「ヒーロー」が存在した。
彼らは特殊能力を持っており、ボランティアの一環として一般市民を助ける日々を過ごしていた。
 
そんなある日……ベテランヒーロー・松平剛(滝口泰介・以下敬称略)は妻・綾(大川美里)に離婚を切り出されていた。
仕事よりもヒーローとしての活動を優先する剛に愛想を尽かしての事だった。
だがボランティアとして活動する以上、ヒーローとしてどんなに活躍しても収入は得られる事は無かった……。
 
だがこのような状況を打破すべく、ヒーロー協会・現会長の本田宗介(堀雄介)は評価システムを採用し、評価(人気)上位のヒーローは収入を得られるシステムを構築した。
それにより一部のヒーローは億を超える収入を得るようになったが、それはヒーローの本来の役割すら根幹的に揺るがす事となっていた。
 
やがて事件は起きる。
小学生の女の子が高所から降りれない事案で救出に失敗。女の子が顔に傷を負う事件に発展する。
ここぞとばかりにヒーロー協会はマスコミ、世間からバッシングを喰らい、結果、この事件に関わった松平が、人気ヒーロー・赤星(三宮正英)をかばってヒーロー協会をクビになる。
また最大のスポンサーであった、外国人資産家・ヤコブソン(小林隆徳)からも支援を打ち切られ、ヒーロー協会は解散となった……。
 
その後、赤星をはじめとする多くのヒーローたちはヤコブソンに雇われるが、サービス料を請求するようになったため、多くの人たちはヒーローを呼ばなくなった。
元のヒーロー協会は「新ヒーロー協会」として細々と存続したが、市民の誰からも見向きも、必要とされなくなった。
 
ヒーローなんていなくてもいいんじゃないか……。
 
誰もがそう思った時……雄英市のビルで大規模火災が起きた……!
 
その時……ヒーローたちが一斉に動き出す!
 
本当のヒーローとは何か!?
本当に大切なものとは何か!?
変身しない、必殺技もない、だけどこれは市民の生活を……そして命を守るため、戦ったヒーローたちの物語である!
 
 
……とまぁ大まかなあらすじはこんなところ。
だいぶ端折っていますけどね(笑)
最初は「第1話」という風にストーリーが分かれて紹介されていました。
 
今回の物語、編集者に入ったばかりの新人・向井(西村典子)とお手伝いロボットのペッパーさん(伊集院尚吾)が当時を振り返るという回顧録の形で進んでいく。
古い雑誌を見つけて、その記事を読んだり、またペッパーさんが古いデータをダウンロードして顧みたりするというスタイルを取っています。
それぞれの「第1話」「第2話」の間に、この向井、ペッパーさん、そして途中からは開発者の中松(竹田有希)を交えて現代パートが進んでいく流れになります。
ちなみに……大よそ15年前を振り返る形を取ってますが、当時の中松、そしてペッパーさんのプロトタイプも、本編の劇中には登場し、終盤、向井もある事件に関わっていた事が判明する……。
 
恐らく回顧録の形式を取ったのは、合間合間に物語に一息入れやすかった事、そして物語に深みを持たせる意図があったのではないかと思います。
もっとも劇中でいうところの「第4話」……ここが物語のほぼ後半から、終盤で一番ウェイトを占めた部分で、ほぼここからは現代パートを挟む余地は無かったのですが……。
それくらい終盤は息詰まる展開が続く。
気がつけば、舞台を目の前で観ている自分たちが、目の前にいるヒーローたちを応援している事に気付く。
 
変身もしない。怪人も、敵も出てこない。
人より何か特殊な力があるだけで、普段は一市民として生活を営む、身近な「ヒーロー」の姿に胸が熱くなるのを覚えました。
 
公演時間は約1時間40分。
程よい長さで、物語がまとめられていました。
 
 
 
ここから主に気になった登場人物を……。
 
やはり松平剛を演じた滝口泰介氏。
古き良き昔気質のヒーローを演じたと思います。
ただ普段の性格から昔気質で、不器用で頑固な親父気質だったので、ヒーロー……というよりは、お父さん感覚に近かったかも(笑)
 
若手ヒーローの赤星翔平を演じた三宮正英氏もハマリ役だったように思える。
イケメンの若いヒーローという、最近の特撮ヒーローの主人公の条件を兼ね備えながら、どこか熱血なヒーロー像は戦隊物のレッドを彷彿とさせてくれました。
劇中でも数少ない「サラリーマンじゃない」出演者として、劇中を引っ張っていたと思います。
 
ただ今回、脇役がいい味出している方が揃っているからなぁ……。
剛の一人息子・松平尊を演じた吉野孝俊氏の「中二病」キャラは強烈。
序盤は「魔王ロキフェル」など痛々しい言動の数々だったのが、劇中で高校に進学して中二病が治ってからの過去を恥ずかしがる場面など、劇中でのギャップが激しいキャラだった。
それでも終盤、自らも火事の現場に居合わせながら、残された人々を助けようとするなど、分かり易く成長を見せるキャラを好演していたと思います。
 
ヤコブソンの執事・影山を演じた重田和哉氏の老獪かつどこか軽い感じも好きだったし、またヒーロー・山口亮平の妻・幸子を演じた重岡依里子嬢も落差の激しい演技がかわいらしかった。
 
でも個人的に一番印象に残ったのは、窪田佳奈子を演じた五十嵐友紀嬢だろう。
前説のお姉さんも演じた彼女だが、劇中の赤星のフィアンセ……もといストーカー(笑)っぷりは最高。
中盤まではただ赤星を追っかけているだけの存在だったのが、終盤にはヒーローと同じくらいの活躍を見せる大活躍ぶり(笑)
ただの濃いお姉さんと思ったけど、なかなかおいしいところも掻っ攫ったし、個人的には影の主役は彼女だったのではないかと思っています(笑)
 
最後に喫茶店のマスターを演じた、鈴木雄一氏。
実は今回が演技を拝見するのは初めてだったんですけどね……しっかり堪能しました。
彼の役どころはヒーローたち常連の喫茶店のマスター……にして、先代のヒーロー協会会長というポジション。
物語の途中までは一切、その素振りを見せなかったのになぁ……でも彼が先代らしい仕事をしたのはワンシーンだけ。あとはただのマスターとして若い者を見守る初老の男をしっかり演じていたと思います。
今回、演技が拝見出来てよかったので、いずれまた拝見出来ればいいと思いました。
 
 
 
そんな訳で初の劇団だった、サラリーマンチュウニ。
個人的には自分と同じ「サラリーマン」(というか会社員)の立場でここまで出来る方たちが居た事に感動を覚えました。
 
今回書いた物語も、等身大の人々に近い方々を書いており、壁とか感じませんでした。
これからも社会人として頑張りつつ、我々みたいな人間に元気を与え続けて欲しいと思います。
 
・サラリーマンチュウニ・公式サイト↓
http://www.sara-chu.com/