【舞台観賞】「おとぎ夜話~特別編~」【大黒天】(ジャングルベル・シアター) | ヒトデ大石のなんとなくレポート置場

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2011年8月「ヒトデ大石のどんなブログにしようか検討中。」からタイトル変更。
ライブイベント、舞台観劇のレポートを中心に書いていこうというブログ。
以前はmixiが主戦場だったけど、今はこっちが主戦場(笑)

※この舞台は4/15~4/20まで行われた舞台で既に公演は終了しています。

今年もいよいよやってきました!
自分にとって一種のライフワークともいうべき時が……。

ジャングルベル・シアター。

自分の推しが所属し、彼是5年近く観続けている劇団です。

さてそんなジャングルベル・シアター、2015年初の本公演、しかも「20周年記念公演」と銘打っての公演となります。

今回の「おとぎ夜話~特別編~」……一昨年まで好評を博したギャラリー公演「おとぎ夜話」シリーズを再演。
その中から「続・おとぎ夜話」「続々おとぎ夜話 寿」をそれぞれ「大黒天」「福禄寿・寿老人」バージョンとして本公演向けにリニューアルしたのが今回の本公演となります。

なお今回はそれぞれのバージョンで完全ダブルキャストの上、お話も別々になります。
そこで一回の本公演ですが、今回は別々にレポートしていきたいと思います。

先に「大黒天」の方から……。

今回の会場はお馴染み、池袋・シアターグリーン BATH THEATER。

ステージの上にはギャラリー公演でお馴染みだった「段差」が左右に分かれて二つ。
そして中央には白と……紫というよりは藤色だろうか。
二つの大きな布を結んで出来た、大きな縄が中央を占めていました。

こうしてギャラリー公演よりもパワーアップ感が楽しみな舞台がいよいよ始まろうとしている……のですが……。
開演15分前……久々にあの企画が帰ってきた!


……そう……あの本公演名物、15分前企画。
近年は平日昼限定など、限定的でしたが、今回は完全復活!

そして今回の15分前企画の主役は……劇団員の本多照長氏。
和服を着こんでの登場する。

大抵の場合、司会進行役を引き連れて登場となります。
大黒天チームの場合、西村太一氏が比較的多かったような……。

さてそんな劇団員、本多氏が15分前企画で何をやるかというと……落語。
実は本多氏、5月に(勝手に)落語家襲名披露公演を控えており、宣伝を兼ねて舞台度胸をつけようというのが狙い。

しかし短時間でどのような落語をするのかというと……。
三つのお題に対して、即興落語を披露するというもの。
かつてテレビ番組「落語のご」の即興落語コーナーと言えば、特定の方には分かるだろうか。
この三つのお題を出すのは、出演者からランダムで三名。
その場でお題を出すのですが、場合によってはお客様にわざわざ問い合わせをしたりする出演者も……。

こうして三つのお題が出されて30秒のシンキングタイムの後、2分以内に即興落語を披露する。
うまくオチがついた回もあれば、とてもじゃないけどオチが分かりにくい回もあり結果は様々。

何はともあれ、本編開始を前に会場の空気を暖めて(?)くれました。

15分前企画が終わるといよいよお待ちかね、今度こそ本編開始となります……。


……公演終了後につき、ネタバレ有りのあらすじをば(笑)
ただし……今回はDVD化がされるようなので、その点を踏まえてのあらすじを記します(汗)
読みたく無い方は、しばらく下の方まですっ飛ばしてください(笑)


・第一話「すみっこの神様」

大学で民俗学を研究している川端諸子(野上あつみ・以下敬称略)は町外れの古書店・住田古書店でアルバイトをしていた。
いつかお金を貯めて、自分の大好きな地蔵の本を自費出版するのが目的だ。

バイトを始めて半年経ったある日、昼ご飯のおにぎりをふとした事で落としてしまう。
古い本棚の隅っこで見つかったのは、埃まみれになったおにぎりと……一冊の本だった。
その本には「大黒のはなし」と記載されていた。
文字からして明治から昭和初期のものだが、最初こそ読める文字だが、終盤はみみずがのたくったような字になっている……。

すかさず店長の住田(竹内俊樹)にこの本の存在を教えるが全く心当たりが無い。
「大黒のはなし」というので、大黒天に関わる内容かと思ったが、これも違う。
どのような内容が書いているのか気になった住田に問われ、諸子はこの本の内容を掻い摘んで説明する……。


「大黒のはなし」の内容。「それは本当にあったお話」という一文から始まる物語。

昔、ある地に住む若者(益田智美)が大晦日、新年を迎える準備のために、麓の町まで傘を売りに行くところから始まる。
若者が三つ目の山を越えようとする途中、人を食うと噂の山姥(西村太一)におにぎりを食わせるよう脅される。
自分が食われると思った若者はなんとかして逃げようとするが失敗。しかし山姥も年老いていたので、おにぎりだけで満腹になり、結果、罠外しをお礼にもらう。
しばらく進むと今度は鶴(都筑知沙)が罠にかかっているのを見つけ、山姥からもらった罠外しで鶴を助ける。
すると山中にも関わらず、場面は急に変わり、助けてもらったばかりの鶴がすぐに若者の元を訪れるが、すぐに正体がバレ、反物を渡して去っていく。
更に山中を進むと雪が降り始め、そこに六体の地蔵(西村太一・兼役)が雪を被って佇んでいたので、若者は反物があるので傘を地蔵につけていく。
最後の一体だけ、自身が被っていた赤い頭巾を地蔵にさせるのだが、そこに狼(西村太一・兼役)が登場。
若者に襲いかかる……と思いきや「赤頭巾、ちゃんとかぶった」地蔵に攻撃。全く歯が立たず自滅する……。
地蔵にお礼を言った後、ようやく町に到着した若者は、鶴にもらった反物を売ろうと精を出す。
そこへマッチ売りの少女(都筑知沙・兼役)がマッチを売りに現れる。
某フラン○ースの犬の最終回のような展開になりかけるが、それを阻止。
しかし文無しの若者、マッチを買ってあげたいが彼も金が無い。
そんな彼が取った行動とは……そしてマッチ売りの少女の正体とは……。


……そんな「本当にあったお話」
しかしこの物語の荒唐無稽さに、住田は即座に「嘘だろ」と断じ、また価値が無いものと判断しようとしていた。
だが諸子が有名な学者が編纂した可能性を示唆すると、住田に調べる様お願いされる。
最初は断る諸子だったが、ボーナスを出す旨を言われると早速調査に乗り出すのであった。

決してお金の誘惑に負けた訳じゃないと言い張る諸子だが、ボーナスを夢見て調査開始。
しかし調べていくうちに、明治から昭和初期にかけて活躍した著名な学者などの筆跡には当てはまらず、ボーナスも諦めかけた時だった……。
物語の冒頭に出てきた地名が、バイト先の近くと同じという事に気づいた諸子は、本を見つけて二週間後の日曜……ある場所にいた。

・第二話「大黒地蔵」

その場所とは町にある大きな病院。
その敷地内には「大黒地蔵」と呼ばれる、真っ黒に塗られた地蔵があった。
自称「暇な」用務員・大山(程嶋しづマ)に、この大黒地蔵が快癒祈願のご利益がある事、その際に墨を塗られるからこのように真っ黒になったのだと言う。
またこの地蔵が500年以上の昔から建っていると聞く。

だがこの大黒地蔵、戦後して取り壊し計画が持ち上がったという。
しかし取り壊しがされなかった最大の理由は、この地蔵に関わる「祟り」の為という。
そして大山はこの大黒地蔵に纏わる祟りの話を始める……。

……時は今より500年ほど昔。
一人の侍(程嶋しづマ・兼役)が追っ手に追われているところから始まる。
必死に逃げる彼の目の前に御堂が現れた。そしてその御堂に身を隠して、この侍は難を逃れる。
ほっとしたところで侍はそこに地蔵があったのに気づく。

「もし故郷に帰れるのであれば、どんな事でもする」

地蔵にそう願掛けをする侍。
すると御堂の外から女の悲鳴が上がる……。
御堂の外には、先程、侍を追いかけていた追っ手のうちの一人が、娘(國崎馨)に迫っていた。
最初は見過ごそうとした侍だが、地蔵と目が合い試されていると思い、意を決して外に出る。
そして娘の目の前で追っ手の一人を惨殺。結果的に娘を助ける事となりお礼を言われる。更に地蔵に備えるはずの握り飯半分と、水を与えられる。
やがて故郷への抜け道が無いか教えてもらい、その場を立ち去ろうとする侍。
だがそこで娘は侍に声をかける。

「もしかしてお侍さんは、追われているのですか」

命の恩人である侍を、自分の住んでいる村に滞在してもらい匿うよう提案する娘。
しかし侍は逆に疑心暗鬼に陥る。

「これは罠ではないか……いや、そんなはずはない。だが罠でないとしても、いつ村人が首にかかった賞金に目がくらむか……何より自分はこの娘に姿を見られている……」

散々悩んだ挙句、侍は娘の首を刀で刎ねてしまう……。
そして御堂の前を立ち去ったが……やがて道に迷い、陽が傾きかける頃、御堂の前に戻っていた……。
娘の死体が転がる御堂の前で茫然としていたところ、遠くから娘を探していると思われる村の者の声が聞こえる。
侍は御堂に咄嗟に隠れた。やがて娘の母親と思われる女(國崎馨・兼役)が「おすみ!」と名を叫び現れ、変わり果てた娘の姿を前に復讐の怨念を滾らせる。
御堂の中では娘の返り血を浴びた侍が、母親と村人たちが立ち去るのを必死に願っていたが……次の瞬間。

「ゴトリ」

地蔵が倒れた。母親と村人たちの目線が御堂に向けられる。

「そこに誰かいるのかい」

母親の問いに、答えられたない侍。
そして迎える濃密な緊張の時間……。
果たして侍に待ち受けている運命とは……。


そんな怖い話。
しかし諸子はある疑問を抱く。

通常、祟りの話が伝わるような地蔵であれば快癒祈願などご利益の対象にはならない。
また500年前の地蔵と言われるが、地蔵の石が比較的新しい。
そこで来歴を調べようとしたら、何故かそれは削り取られている。
多くの疑問が残ったが、用務員・大山が協力を申し出て、何か分かったら連絡する事となる。

これまでの経緯を住田に話した諸子。
しかし住田は本に価値が無さそうだから、もう調査は止めていいと諸子に告げる。
その際、住田に実は大黒が嫌いな理由を聞く。
かつて住田の父親は「大黒様」と呼ばれていたが、その理由は当時の学生が売りにくる本をせいぜい1、2円のところ5円で買い取ったりしていた。
その噂を聞きつけた学生に「馬鹿な大黒様」とあだ名されていたのに由来する。
また一時期「すみえ」という女に大金をつぎ込んでいた事もあり、当時、貧乏だった少年時代の住田の心に大きな傷を残していた。

この件に加え、更に民族学を馬鹿にするような発言をされた、諸子は本を床に叩きつける程逆上する。

意地になった諸子は大黒地蔵に関わる文献を片っ端から集め、大黒地蔵について粗方調べ上げた。
しかしどうしても、本……「大黒のはなし」の謎が解けない。
するとひょんな事から、あるページの工夫に気づき一気に謎が解ける……。

・第三話「大黒のすみ」

ある日、諸子は住田に「大黒のはなし」を書いた者について話を始める。
実は住田の父親の他にもう一人「大黒様」と呼ばれた者がいるという……。
それは「大黒のはなし」の本に使われていた紙が……かつてその「大黒様」の日記に使われていたのである……。


日本が戦争に入る前……約80年前の話……。
ある町にある大きな病院に一人の患者が入院していた。
常に笑顔のその患者は「大黒さん」(福津健創)と呼ばれ親しまれていた。
大黒さんは多くの昔話を知っており、特に子供たちに大人気だった。

そんなある日、いつも話の輪に入らない一人の少年(松宮かんな)が話かけてくる。
彼は「本当のはなし」をして欲しいと、強く大黒さんに迫るのだった。
いつもの調子面白い昔話をしようとしても、彼は受け入れようとしない。

彼の様子が気になった大黒さんは看護婦(長尾歩)に、彼が重い病気で手術が必要な事を聞く。

しかし医者が「簡単な手術だから大丈夫」と言っていたのに対し、両親には難しい手術である事を話しているのを聞いてしまい、それ以来、嘘に対して嫌悪するようになってしまったとの事。

そんな彼を見かねた大黒さんは少年に対し、怪談における「百物語」の逆を提案。
面白い話を百個して、いい事が起きるかもしれないから、手術を受ける様約束させる。

こうして始まった大黒さんと少年の「百物語」
最初は本当か嘘かこだわっていた少年だったが、やがて少しずつ心を開いていき、恐らく嘘ばかりの大黒さんの物語を毎日のように心待ちにするようになっていった。
しかし89日目、大黒さんの滑舌が悪くなり「金」と「カニ」の区別すらつかなくなる。

慌てて医師(長尾歩・兼役)の元を訪れた大黒さん。
実は筋肉が徐々に萎縮する脳病にかかっていた大黒さん。いつも笑っていたのはこの病の影響だった。
そして死期が近い事を医師から告げられる……。

辛い気持ちを胸に秘め、少年に残りの話を話せない事を話す大黒さん。
しかし裏切られたと思った少年は反発し、最後まで大黒さんの話を聞く事なく追い返してしまった。
だが大黒さんは少年のために、ある行動に出る……。

大黒さんが少年のためにした事とは?
そして大黒さんとは一体何者なのか?

全ての謎が一本の線で繋がった時、諸子たちは二人の「大黒」の遺した物を知る事となる……。


……いつもこのシリーズのあらすじを書く時、どうしても長くなってしまうのですが、自分で思う事があります。

これDVD販売の営業妨害か、ステマ(ステルスマーケティング)でしかないなと(爆)

ただこの後語る、各パートの出演者の寸評を書く時、どういう役を演じたのか……このあらすじ抜きにして語れないと思う訳です。

さて感想という事になりますが、実はこの舞台の初演にあたる「続おとぎ夜話」自分にとってジャンベルデビュー、初の観劇作品にあたります。
当時は今ほど、ジャンベル(厳密には推し)にのめり込んでいない時期だったので、観劇回数は一回、しかも今回のようなレポートも書いていませんでした。
なので今回は初演を観るくらいのつもりで観劇に臨んだのですが……5年前の内容でも、それなりにしっかり覚えていました(笑)
またギャラリー公演時のキャストも覚えていたので(失礼ながら)今回は当時とも自分なりに比較させていただきました。

それでも色褪せない物語の数々、そして話の筋はわかっていても感動する物語と、謎が解けた時の快感。
これだけは、どんなに時を経ても変わっておらず、また新鮮な感動に包まれました。

また今回、注視したのはギャラリー公演で演じた物が、本公演になってどう変わるかという点。
ギャラリー公演とは比べ物にならないくらいの広くなった舞台の上で、出演者がどう躍動するのか……この点を注目して観ていました。
結論から言えば、より広く、ダイナミックに舞台が使われているという印象がありました。
特にこの「大黒天」チームの場合、モブで登場する人物の数も多く、多くの人物が同時に登場する事を考えるとこれくらいの広さは適当だし、妥当かと思いました。
第二話におけるほっかむりをした村人の集団、第三話における子供たちが群がる図などにおいて特に効果的でした。

ただ二つ階段が必要だったのか……という点においては、多少疑問が残る。
元々、ギャラリー公演でも一つの階段で表現できていた物を二つに分ける必要はあったのか……。
それなら中央に大きな階段一つでも良かったと思うし、使用頻度が低かった上手側の階段は撤去して良かったかもしれない。(もっとも下手側の階段だけだとバランスが悪いけど)
それ以外については音響はバッチシだし、また照明もギャラリー公演以上に細かい調節が行われた印象があります。

また衣装について。現代パートの皆様はきちんと衣装を用意されていましたが、それ以外のオムニバスに出てくる出演者はギャラリー公演ではお馴染み、上下黒い衣装。
それに紫の布をそれぞれ色んな形状で巻いたり、羽織ったりする事で衣装の一部、場合によっては小道具のように見せていました。

個人的には概ね高評価。
ギャラリー公演の本公演バージョンとしては、必要以上に大げさにならず、また程よいパワーアップだと思いました。

ギャラリー公演より10分だけ長い、公演時間1時間30分という長さも程よい長さでナイスです。


さてここからはお待ちかね。
各出演者について語っていきたいと思います(笑)
出演者の皆様は心して読んでくださいね(笑)


[現代パート]

・野上あつみ(ジャングルベル・シアター)
川端諸子役。民俗学を専攻している女子大生。地蔵マニアで別名「地蔵の諸子」。「おとぎ夜話」シリーズなどでは欠かせない名物キャラクター。
本公演が休養明け一発目の公演となった、野上あつみ嬢ですが、最早、代名詞とも言える諸子のキャラクターに今更文句のつけようもなく、ブレも無い。
これまで多くの物語で登場している諸子の中でも、時系列的には一番早い時期の諸子になるので、演じている中でも一番、若々しさと勢いを感じさせてくれました。
復帰公演でライフワークとも言える諸子(それも最初期)を演じた事は、演じた本人にとっても、これ以上無い再スタートになったのではないでしょうか。

・竹内俊樹(ジャングルベル・シアター)
住田吾郎役。諸子のバイト先の古書店の店長をしている。幼少期、家が貧乏だったので先代である父親をどこか恨んでいる。趣味は風俗通い。ギャラリー公演時は本多照長が演じる。
今や彼の代名詞を言って過言ではない、いわゆる「じじい」役。どんどん老けメイクも上手くなっている。
一昨年の「八福の神」で諸子の祖父・川端教授を演じているので、そのイメージと被らないか心配したが、優しい諸子の祖父と違い、どこか俗物的な中年という立ち位置をうまく演じたと思う。
劇団員になった三年近く。すっかり彼のキャラクターもジャンベルになくてはならないものになりつつあると感じた本公演でした。

・程嶋しづマ(ケッケコーポレーション)
用務員・大山役。第二話にも出演するため詳細は後述。

[第一話]

・西村太一(ジャングルベル・シアター)
若者の老母、山姥、狼、地蔵など多くの役回りを何役もこなす。ギャラリー公演時でも若者の老母以外は全て同氏が演じている。
彼も本公演が休養明け。これまでジャンベルにおいては主役級の立ち回りが多い彼だったが、今回は端役を数多く演じた。
性別、動物、全ての垣根を取っ払い何役も短い時間の中でこなす姿に、改めて役者としての彼のポテンシャルの高さを感じた。
アクションをさせたら劇団員では随一の実力者。ダイナミックな動きの数々でギャラリー公演では表現し切れなかった動きの数々を見せてくれたと思う。

・升田智美(ジャングルベル・シアター)
若者役。ギャラリー公演時では浅野泰徳が演じている。
以前から女性にしては低い声、ハスキーボイスが特徴的と言われた彼女だったが、劇団員になって初の男性役にチャレンジ。
声の感じからして「女性声優が演じる少年」のイメージで劇を見ると全く持って違和感は無く、むしろハマリ役である。
外見的にも後ろで髪を束ねていて、紫の布をたすきがけのように巻いていたので、より少年っぽく見えた。彼女にとって新境地となる舞台だったように思う。

・都築知沙(ジャングルベル・シアター)
※昨年末、劇団員になり、今回が劇団員として初出演となる。
鶴、マッチ売りの少女など女性中心に演じる。ギャラリー公演時ではおこ(当時:塚本善枝)が、前述の若者の老母を含め演じている。(余談だがギャラリー公演時は若者と老母の登場の仕方がそもそも違う)
今回が劇団員となって初の舞台。三人の中では一番語り手に回る事が多いポジションだったが、与えられた配役になった時はコミカルにかわいらしく演じている。
基本コミカルな演技が目立つが、語り手に回った時のナレーションも聞き取りやすく、抑えるところはしっかり抑えている。
また第三話で大黒さんに泣きつく少女や、ラストシーンのキッカケを作るなど重要なポジションもこなした。劇団員デビュー戦として最高の舞台だったと思う。

[第二話]

・程嶋しづマ(ケッケコーポレーション)
※客演。前回出演は2014年初夏公演「ヒュウガノココロ」(清水恵一役)。6度目の出演。
現代パートでは用務員・大山。第二話では侍を演じる。ギャラリー公演では大山は大塚大作、侍は神田英樹が演じている。
まず驚いたのはその外見。以前からの彼を知っている者なら、その風貌に驚いたのではないだろうか。やや長い髪に髭まで生やして……これまでジャンベルでは好青年のポジションが多かった同氏だけに驚いた。(個人的に有名どころだと山田孝之にイメージがダブる)
しかしそれ以上に侍としての迫真の演技は会場全体に恐怖なり、彼の葛藤なりを伝えるには十分過ぎるもので、会場全体を凍りつかせるには十分過ぎた。
一方で大山という俗物的な人物を軽いノリで演じており、また終盤では諸子に重要な情報を伝える、重要人物としての役目もしっかり果たした。いい意味で今回、期待を裏切ってくれました。

・國崎馨
※客演。前回出演は2013年冬公演「八福の神」(荷実屋結衣役)。4度目の出演。
娘(すみ)と、その母親を主に演じる。現代パートでは一瞬、病院の看護師も演じている。ギャラリー公演では一番近いポジションを大塚大作が演じている。
女性の物腰の柔らかさと、怖さまで、全てを出し切った感じの演技から目が離せなかった。
娘を演じる時のかわいらしさと無邪気さ、そして朗らかさ。その後に出てきた母親の恨みの深さ、語り手としての淡々とした冷たさ、そして激しさ……國崎馨の真骨頂がまさにここにあった。
先日、別の舞台(カプセル兵団「GHOST SEED」)でも強い女性(これも母親ポジションの役)を演じていたばかり。期待通りの役柄を、期待以上の結果で返してくれる素晴らしい女優である事を再認識しました。

[第三話]

・福津健創(ジャングルベル・シアター)
大黒さん役。ギャラリー公演でも同氏(当時:福津屋兼蔵)が演じている。
笑って泣ける福津健創、ここに有り!と言った感じのハマり役。途中までコミカルでいつものトリックスター的な立ち位置から、第三話後半にかけての感動に駆り立てる熱演は流石の一言。
今回、役柄の上で常に笑顔でいなくてはいけないのですが、その笑顔の中にも大黒さんなりの悲哀を感じる部分が多々あり、そういう細かいところでも上手さを見せてくれたと思います。
劇中の無茶振り(笑)にも耐え、いつも我々に笑いと感動を与えてくれる、福津氏の演技に脱帽ものです。

・松宮かんな(ジャングルベル・シアター)
少年役。しかし物語の最終盤、意外な役をこなす……。ギャラリー公演でも同嬢が演じている。
少年役に関しては、最早言わずもがな。恐らくジャンベルでは彼女かおこ(今回は「福禄寿・寿老人」出演)が抜きん出て得意とするポジションであり鉄板である。
むしろ彼女の真骨頂は、その後に訪れた「あの役」でしょう。この役はさすがにオチに関わるので、敢えて詳しくは触れませんが……物語の大どんでん返しを締めくくるためには無くてはならなかったでしょう。
さすがにアレを演じられるのは、今のところジャンベルでは彼女だけ……まさにジャンベルの看板にして「ジョーカー」面目躍如です。

・長尾歩(劇団AUN)
※客演。前回出演は2014年初夏公演「ヒュウガノココロ」(コゴミ役)。4度目の出演。
主に語り手。途中、看護婦、医師役もこなす。ギャラリー公演では村井みゆきが演じている。
第三話を語る上で、彼女の語りなくして語れないという程、素晴らしい語りを演じてくれました。その落ち着いた、尚且つ優しい語り口調は聞いている者全ての耳を優しく包み込んでくれました。
語り手としての彼女はそれぞれの登場人物を優しく見つめ、その優しい言葉でしっかりと演技の邪魔にならないよう情景を伝えてました。ここまで語り手のポジションで印象に残る語りをした方も他にいない。
一方で看護婦、医師などもしっかりこなしてくれました。特に看護婦の時の声色の変化とかわいらしさには驚きました。声優業もしている方ですが、色々出来る方だと改めて認識しました。


……とこのように語っていきましたが、個人的にはありきたりの感想ばっかりになって、申し訳ないような(汗)
でも各話とも特徴がハッキリしているように思います。

第一話は安定した笑いをジャンベル劇団員がしっかりやってくれた感があります。
このパートこそ、実はジャンベルの舞台における一番、客層のハートをしっかり掴まないといけない部分なので、劇団員で固めて笑いを取りに行くのは鉄則だと思いました。

第二話は客演二人のレベルが高過ぎ。むしろこの組み合わせが反則(笑)
以前から演技が上手い二人だとは思っていましたが、期待を(いい意味で)裏切った程嶋氏と、期待を絶対に裏切らない國崎嬢の組み合わせ……怖くないはずがありません(笑)
※ちなみにギャラリー公演で大塚大作氏が演じた大山は娘(と村人)との兼任でしたが、今回は大山と侍兼任になっていたのは大きな変化の一つだと思います。

第三話はジャンベルのエース級に、プロの声優が一人……安定感抜群の感動ストーリーでした。
「動」の福津氏に、オールマイティーの松宮嬢、そこにどっしりと「静」の長尾嬢という組み合わせだったので、物語のバランスが非常に取れていたと思います。

現代パートも諸子という定番キャラに、俗物的な住田店長と大山という組み合わせ。
あつみ嬢が一番、純粋に真っ直ぐに取り組んだ諸子だと思うので、見ていて爽快でした。住田店長の竹内氏もじじいっぷりと、不器用な男らしさが諸子とはいいバランスでした。
程嶋氏の大山も、第二話とは打って変わってコミカルで、第二話の怖さともバランスが取れていたと思います。

今回総じて観て配役はこれ以外無いと言える、最高の配置だったと思います。
そして毎回、最高の演技をされた出演者の皆様に、(偉そうな事言いますが)最高の賛辞を贈りたいと思う次第です。


20周年記念公演、最高の舞台を拝見出来た……と締めに掛かりたいのですが、今回はもう1チーム……「福禄寿・寿老人」編もあります。
だけど続けて書くと、寿老人の頭の如く、長~く……なってしまうので、締めの言葉と「福禄寿・寿老人」編の舞台観賞レポートは……。

後日(笑)

・ジャングルベル・シアター公式サイト↓
http://www.junglebell.com/