※この舞台は4/15~4/20まで行われた舞台で既に公演は終了しています。
まずは↓のレポートを読んでいただけると、幸いです。
・【舞台観賞】「おとぎ夜話~特別編~」【大黒天】(ジャングルベル・シアター)
http://ameblo.jp/hitode0014/entry-12019527244.html
……という事で、今回はジャングルベル・シアター「20周年記念公演」と銘打った「おとぎ夜話~特別編~」をレポート致します。
ただ↑でも触れたように、これまで一昨年まで好評を博したギャラリー公演「おとぎ夜話」シリーズの本公演向けリニューアル再演したのが今回の本公演となります。
「続・おとぎ夜話」「続々・おとぎ夜話 寿」をそれぞれ「大黒天」「福禄寿・寿老人」バージョンとして公演している訳ですが、「続・おとぎ夜話」にあたる「大黒天」編は語りつくしました。
ここからは「続々・おとぎ夜話 寿」のリニューアル版にあたる「福禄寿・寿老人」編について述べていきたいと思います……。
……が、開演前から15分前企画の流れは、↑の記事とほぼ同じ(笑)
決して手を抜いているという訳じゃなくて、本当にほぼ同じ(笑)
強いて違う点を上げるなら、15分前企画の司会進行役がジャンベル主宰・浅野泰徳氏である事が多い事と、お題目を出すメンバーがやはり「福禄寿・寿老人」編出演者になっている事くらい。
舞台上のセットもほぼ同じ。
唯一、二つの段差の間に、一本長方形の柱みたいなセットが出来たくらい。
その他にも微妙な差はありましたが……。
なので今回は早速、あらすじからの感想に行きます……と言いたいところですが、先ほどの「大黒天」と違い、この「福禄寿・寿老人」については、ギャラリー公演時に長々とあらすじを書いています。
これをまた書いてもアレなんで……。
・【舞台観賞】「続々・おとぎ夜話 寿」(ジャングルベル・シアター)
http://ameblo.jp/hitode0014/entry-11053382695.html
↑を読んでください(爆)
読んでくれれば、大まかなあらすじは分かります。むしろ物語はほぼ同じです(汗)
むしろもう観劇した方は、わざわざ読まなくてもいいと思います。
ただ大まかなあらすじは同じですが、「大黒天」や当時との違いも若干あるので、それを箇条書きでまとめたいと思います。
・衣装が「大黒天」が上下黒に対し、「福禄寿・寿老人」は上下白。
これは一昨年の本公演「八福の神」を観劇した方なら、分かりやすいと思います。
・第一話導入部で「タラモサラタ」について触れられている。
ギャラリー公演時には無かった演出。青木隼、鈴木絵里加が演じるバイトのカップルが、昔の常連にタラモサラタが無いか聞かれたというシーンが追加されている。
これによって第二話導入部での戸沢教授が語る「アルゴライス」の説明がより自然なものになっている。
・第二話で戸沢教授が兼任する役が変わっている
「大黒天」でも似た現象がありましたが、ギャラリー公演時は現代パートの戸沢教授を演じた西村太一氏がヒョウタを兼ねているが、今回、戸沢教授を演じた三井俊明氏は領主(別名:とと様)を兼ねている。
ちなみに今回、戸沢教授には「戸沢清彦」と、前回は公にされなかった下の名前が追加されている。
・第二話の演劇研究会部員のオチが少し変わっている
「単位お願いします」という挨拶の後、女性部員(うちだちひろ)が諸子を部員に勧誘するが断られる。そして二人で顔を合わせて「今年で」「最後だね」と言って立ち去り、申し訳無さそうに諸子が謝る。
恐怖満載だった第二話後のお笑い要素が増したため、恐怖を引きずらないで、話を元に戻す事が出来るのに成功している。
……と、多少の差異はありましたが、概ね物語の筋は「続々・おとぎ夜話 寿」と同じ。
舞台の音響や、照明に関する感想もほぼ「大黒天」と同じです。
やはり個人的にはこちらのチームも概ね高評価です。
ただどちらの話が好きかと言われると好みは分かれるところ。
実は「大黒天」と比べて、一長一短があるので、それによって分かれるのですが、この点は後述。
さてここからお待ちかね。
各出演者について語っていきたいと思います(笑)
出演者の皆様は心して読んでくださいね(笑)
[現代パート]
・野上あつみ(ジャングルベル・シアター)
川端諸子役。民俗学を専攻している女子大生。地蔵マニアで別名「地蔵の諸子」。「おとぎ夜話」シリーズなどでは欠かせない名物キャラクター。
今回が復帰公演。時系列的には「福禄寿・寿老人」時代の諸子の方が後になるので、「大黒天」の時の諸子との差をどう演じるかがポイントだったように思う。
結論として「福禄寿・寿老人」序盤の鬱屈とした諸子から、物語終盤に復活する過程までの諸子を丁寧に演じていたと思います。
何はともあれ、今回、唯一、両方の話に出たあつみ嬢、色んな意味でお疲れ様でした。
・岡教寛(ジャングルベル・シアター)
片岡大樹役。諸子の大学の先輩にあたるが、現在の妻の妊娠がキッカケで中退。諸子の新しいバイト先の居酒屋「希船」の店長を務める。ギャラリー公演時は神田英樹が演じている。
ジャンベル入団後、初の大きな役に当たったと思います。エネルギッシュな片岡店長を熱く演じていました。
居酒屋での掛け声とか、荷物を持つ仕草が様になっていると思いましたが、本当に居酒屋のバイトをしているとの事で……(某ツイッター上でのやり取りで発覚)
台詞の一つ、一つに熱がこもっており、聞いているこちらの心を大いに揺さぶってくれる快演を見せてくれました。
・三井俊明
大学教授・戸沢清彦役。第二話にも出演するため詳細は後述。
[第一話]
・大塚大作(ジャングルベル・シアター)
福禄寿役。ギャラリー公演時でも同氏が演じている。
若くて熱い福禄寿という設定で臨んでいるので、とにかく熱かった。いや暑苦しいくらいだった(爆)
ギャラリー公演時と変わらぬ……いや、それ以上の汗の滴る熱演を今回も披露。ギャラリー公演時よりもパワーアップした大塚氏が見れた。
余談ですが、舞台の前方で彼を見ると、しっかり汗がかいているのが良く分かります(笑)
・本多照長(ジャングルベル・シアター)
寿老人役。ギャラリー公演時でも同氏が演じている。
ジャンベルの「歩く存在感」本多氏。今回もその例に漏れず、そこにいるだけで場を和ませる存在感を発揮。
大塚氏とのコンビも様になっており、その掛け合いは長年連れ添った漫才コンビのような連帯感がありました。
余談ですが、今回は本編以外に毎回15分前企画で寄席を披露。こちらでの貢献度も非常に高かったと思います。5月の襲名披露公演、頑張って欲しいと思います。
・おこ(ジャングルベル・シアター)
弁天役。ギャラリー公演時でも同嬢(当時:塚本善枝)が演じている。
前半では語り手のポジションで貢献。とても聞き取りやすい声で、残り二人が熱い展開で絶叫している中では非常に落ち着きを感じ、尚且つ楽しそうな声が印象的。
また船が出航した後の左右に揺れる様や、マストをはためかせる様など細かい演技も秀逸でかわいらしかったです。
弁天としてもかわいらしさと、どこかワガママな感じを好演していたと思います。ちょっとだけイラつかせる、ぶりっ子ぶりも個人的には良かったです。
[第二話]
・篠崎大輝(ジャングルベル・シアター)
水先案内人・ヒョウタ役。現代パートでは一瞬、演劇研究会部員も演じる。ギャラリー公演では西村太一が演じている。
恐らく今、この劇団で西村氏以外でこの役を演じる事が出来るとすれば、彼しかいなかったであろうくらい適役。
爽やかそうな好青年としての演技から、最後の悲惨な末路まで余すこと無く、ヒョウタという男の魅力を演じきったと思います。
ただこれまで彼はこのオムニバス系では「恐怖」の第二話しか演じていないので、他の役どころも拝見したいところ。でも死亡フラグ系キャラ属性も捨て難い……(爆)
・うちだちひろ
※客演。今回がジャングルベル・シアター初出演。
領主の娘・キク役。現代パートでは一瞬、演劇研究会部員も演じる。ギャラリー公演では升田智美が演じている。
ミステリアスな雰囲気のキク姫を、そのどこか朧気でかつ、寂しげな雰囲気を静かに演じている。
劇中はとても美しく、また見る者全てを惹きつける……思わず見ていて、こちらがうっとりしてしまった。これじゃヒョウタだって惚れる(爆)
以前、別の舞台で拝見した時とは、全く対照的な役どころだったので、そのギャップに驚きつつも、また一人、素敵な女優に出会えた事に感謝したい。
・三井俊明
※客演。前回出演は2014年初夏公演「ヒュウガノココロ」(トト役)。4度目の出演。
現代パートでは大学教授・戸沢清彦。第二話では領主(とと様)を演じる。ギャラリー公演では戸沢は西村太一、領主は竹内俊樹が演じている。
戸沢教授のどこか軽くて、ちょっと気取った感じと、領主のどこか重苦しい雰囲気を見事に使い分けていました。
これまで客演を何度か拝見している限り、コミカルとシリアスの使い分けがとてもうまい方なので、今回もその例に漏れず、戸沢と領主でうまくそれが切り替わっていたと思います。
唯一残念だったのが、彼定番のプロレスネタが今回入っていなかった事(笑)浅野氏の事だから、どこかでねじ込むと思っただけに……残念!これは次回公演に早くも期待か!?(笑)
[第三話]
・浅野泰徳(ジャングルベル・シアター)
鳩川コウタロウ役。ギャラリー公演時でも同氏が演じている。
役者・浅野氏の真骨頂が詰まっている役柄。前半のどこか無礼だけど、憎めない若者から、後半の不器用な男の様まで、まさに昭和の男を演じきっている。
メチャクチャかっこいいとか、そういうのではないんだけど、浅野氏が演じるキャラクターからは何か力強いメッセージがどこか込められている。
今回もその例に漏れず。流石、主宰と思いました。
・青木隼
※客演。前回出演は2014年初夏公演「ヒュウガノココロ」(白露役)。3度目の出演。
カノープス役。ギャラリー公演時は福津健創(当時:福津屋兼蔵)が演じている。
ギリシャ人シェフという難しい役柄でしたが、一瞬、彼が日本人である事を忘れるくらいに好演していました。
ギャラリー公演時に福津氏が演じたのを見て「彼以外、誰が出来るんだ」と思っていましたが、見事にその概念を覆してくれました。
これまで彼がジャンベルで演じる役はどれも印象が深いですけど、今回のカノープスも決して忘れられないです。
・鈴木絵里加(DurCi)
※客演。前回出演は2014年初夏公演「ヒュウガノココロ」(しづる役)。2度目の出演。
鈴木クミ(キクちゃん)役。ギャラリー公演時は松宮かんなが演じている。
役と同姓なのは偶然でしょうが(笑)まさに今回、彼女のためにあった役と言って過言ではない。昭和初期のハツラツとした「モダン」な女性のイメージにピッタリ!
前半の楽しそうな語り口調から、一転、後半の急展開後の抑え目の演技といい、まさにキクちゃんの半生を、彼女になりきって演じきったと思います。
この役だけに関して言うなら、ギャラリー公演時の松宮嬢を凌駕していたと思います。最大級の賛辞を贈りたい。
……今回もありきたりの感想で申し訳ない(汗)
でもこの「福禄寿・寿老人」も各話、特徴があると思います。
第一話は唯一、ギャラリー公演時からメンバーに変動が全くありませんでした。
それ故、一番、安心して観られたし、また安心して笑えました。演じた三人の熟練の演技に拍手を送りたいです。
第二話は全く逆で、全出演者入れ替わり。まぁ客演オンリーの「大黒天」第二話ほどじゃないけど、予想がつかなかったです。
とは言え「死亡フラグ」系の篠崎氏、ミステリアスなうちだ嬢、そしてシリアスな三井氏とバランスは良かったかと。
そして第三話。浅野氏は良かった。でもそれ以上に、青木氏、鈴木嬢が更に良かった。
いわばジャンベルエース級の福津氏、松宮嬢が演じたこの役を、違和感無く、しかも自分たちの物にして演じきったのは素晴らしかった。
だからこの三人だったからこそ、ラストシーンではオチが分かっていても、涙が止まらなかったんでしょうねぇ……。
いや……恥ずかしい話ですが、今回、ラストシーンは本当に泣きますよ。分かっていても泣きますよ(爆)
でもそれだけ泣けたのは、第三話での三人の熱演故だと思います。
また現代パートについては、諸子が「大黒天」の時とは違った鬱屈した感じと、徐々に情熱を取り戻す感じが、同じ諸子でも違いがあって良かったと思います。
それにしても片岡先輩も、戸沢教授も本当にいい人たちです。
そんな彼らを熱く、また軽快に演じた岡、三井両氏の熱演も現代パートを盛り上げてくれたと思います。
「大黒天」と同様、総じて配役はこれ以外無いと思います。
やはり「福禄寿・寿老人」チームの皆様にも(偉そうな事言いますが)最高の賛辞を贈りたいと思う次第です。
こうして「寿老人・福禄寿」の感想も一通り書き終えましたが、個人的に思う事が二つ。
一つは各物語における諸子について。
どちらも主役は諸子なので、最終的に諸子が中心に物語が集約されていくのですが「大黒天」「福禄寿・寿老人」だとあまりに差があるように思えてなりません。
「大黒天」時代の諸子は、情熱に溢れていて、どこか詰まっていたところで、最終的に大きなヒントを得て、全ての謎を最終的に解き明かします。
一方「福禄寿・寿老人」時代の諸子は、実は凄い才能が溢れる娘で、その才能を如何なく発揮して謎を解き明かすキャラに変貌しています。
実は個人的に「福禄寿・寿老人」の諸子の描かれ方だけは、どうも腑に落ちません。
「福禄寿・寿老人」をキッカケに諸子というキャラクターの才能が開花した……という展開とも思えますが……。
ただ片岡先輩といい、戸沢教授といい、不自然なまでに諸子を持ち上げる様子は、例え才能があったとしてもさりげなくそれを発揮していた「大黒天」と比べると違和感を覚えます。
もっとも「福禄寿・寿老人」時代が、詐欺に遭ったばかりで全て投げやりになりかけていた時の諸子の話なので、致し方ない部分もあるのかもしれませんが……。
諸子の扱いという点においてだけ言えば、自分は「大黒天」での方が好きでした。
もう一つは感動の質について。
今回、どちらも素敵な話でした。ただ与えられる感動の質が全く異なるのも事実。
「大黒天」の方が後からじわじわ、さざ波のように襲ってくる感動なのに対し、「福禄寿・寿老人」はストレートに直撃する感動という印象を受けます。
恐らくこれは全ての謎解きをする過程と、ラストシーンの直前のシーンの差異から来るものだと思います。
これはさすがにネタバレになるので言えませんが……前述の諸子の扱いと同じように、ラストシーン直前のシーンでも諸子のポジションも、表に出す感情も似て非なるものになってます。
だから「大黒天」の時は見終わった後、どこか心が暖かくなるようなそんな感動を覚えました。
逆に「福禄寿・寿老人」の時は、見終わった後、ストレートに感情が揺さぶられて号泣に至ったと思う訳です。
これはどちらが良かったというのは個人的な好みなのでしょうが、この点に関しては若干「福禄寿・寿老人」に軍配は上がる気がします。
……とは言え、こんな素敵な物語を書き続けた浅野氏の力量には改めて感服いたします。
本当に毎回、ありがとうございます。
……こうしてジャングルベル・シアター「20周年記念公演」も無事終わりました。
どうやら全公演満員御礼だったそうで、大好評だった模様です。
次の本公演は11月……これも再演になる「悟らずの空」になります。
自分がジャングルベル・シアターに本格的にハマるキッカケになった物語なので、4年半の月日を経てどう変化するのか……今から楽しみにしたいと思います。
それまでは……劇中に出てきた「アルゴライス」を再現する事に全力を尽くします!(爆)
・ジャングルベル・シアター公式サイト↓
http://www.junglebell.com/