【舞台観賞】「イワーノフ」(TAC三原塾) | ヒトデ大石のなんとなくレポート置場

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2011年8月「ヒトデ大石のどんなブログにしようか検討中。」からタイトル変更。
ライブイベント、舞台観劇のレポートを中心に書いていこうというブログ。
以前はmixiが主戦場だったけど、今はこっちが主戦場(笑)

※この公演は9/26~29に行われたもので既に終了しています。

9月の観劇ラッシュもこの舞台でラスト。
3週連続となった今回観に行ったのは、ロシア戯曲が原作です。

今回観に行ったのはTAC三原塾による「イワーノフ」という作品の公演です。

まずTAC三原塾、私自身は拝見するのは二度目ですが、この「舞台観賞」シリーズではお初なので簡単にご紹介をば。

1988年に演出家の故・三原四郎氏によって創立。
ロシアの劇作家、アントン・チェーホフの作品を中心に公演する劇団です。
近年では日本近代劇にも挑戦しているとの事ですが、普段、私が親しんでいる小劇場系とは一線を画す劇団である事は間違いありません。

それを示すように、客層の年齢層がまず高め。
いかにも紳士、淑女と呼ぶに相応しい、上品そうな方が多かったように見受けられます。
自分があの客席の中では、若年層だったのではないかと思います。
(もっとも私が観に行った回は平日の昼間だった事もあるかもしれませんが)

そんな訳で客層の様子を先にお伝えしましたが、会場である日暮里d-倉庫についても言及しましょう。
もう名前にある通り、概観はまんま「倉庫」です。
日暮里の繊維問屋の店の合間を縫って、ちょっと路地の奥にある「倉庫」です。
あの佇まい……かつて本物の倉庫として利用されていたと思います。
そんないかつい外観ですが、入口までの階段と内装はおしゃれ。

階段上って倉庫の二階部分が入口、そしてロビーになっているのですが、本当にきれいです。
観劇までの一時、喫煙だったり、入口入ってすぐそこにあるカフェで、軽くコーヒーなんて飲んでも絵になりますねぇ。

そんなおしゃれ気分に浸ったところで、いざ劇場へ。
倉庫2階部分から見下ろすようにある舞台。
高低差がハッキリしている客席です。
後部座席の方ほど、上から舞台を見下ろすような構図になります。
自分は座席の中ほどに座り、そこそこの高さから舞台を見下ろす事にしました。

さて長々と劇場の特徴をお話しましたが、本編の簡単なあらすじを。


19世紀末のロシアのとある町。
ニコライ・アレクセービッチ・イワーノフ(木場孝一・以下敬称略)は病に冒された妻・アンナ(坂浦洋子)と叔父で伯爵のシャベリースキー(清水学)と暮らしている。
かつては理想に燃える好青年だったが、妻の病にかかってからは人生にくたびれてしまっている。
折を見て親戚のボールキン(加藤寛規)に儲け話を持ち掛けられたり、アンナの主治医であるリヴォーフ(田中芳拡)には真正面から生活態度を非難されたり、日々の生活に疲れる要素は溢れていた。
そんな中、借金をしているレーベジェフ家の令嬢・シュローチカ(菅野睦)に告白されるイワーノフ。
アンナが日に日に病でやつれていく中、シュローチカと恋仲になるが……。

しかしイワーノフを待ち受けていたのは運命は……。
悲劇なのか。それとも喜劇なのか。
これは自分の運命を呪い、それに悲観し、翻弄された男の物語である……。


……正直言います。
あらすじは難しい(笑)

ロシアの戯曲家、チェーホフの最初に書いた長編戯曲ですが……表現がまどろっこしい(爆)
いや……日本語に訳すとどうしてもああなってしまうのだろうけど、台詞は長いので、実は何を言いたいのか分かりにくい。

が、不思議なもので大筋は分かりやすい。
……ってか、台詞が長くて、表現が多いだけで、物語そのものは難しくないのか。
そんな訳で長い台詞の一つ一つに耳を傾けるのではなく、その人物が何を言いたいのか理解しながら見ると意外と分かりやすい。

ただここで台詞が長いと言ったように、上演時間は2時間45分。長い(笑)
だけどご安心を。舞台の途中で15分の休憩があるので、眠くなる事もまたお尻が痛くなる事もない(笑)

それにしても舞台には場面転換が必ずありますが、この舞台は全部で4つのシーンだけで構成されています。
以前拝見したチェーホフ原作の戯曲「かもめ」も同様に4シーンだけだったけど、それでも時間の経過とかは分かりやすく書かれています。
これだけ長い舞台をたった4つのシーンだけで構成するとは……まぁ元の戯曲がそうなのですが。
ただこのように長い舞台を大別して4つのシーンで構成されるので、変な暗転とかがないから、必要以上に集中力が削がれることはありませんでした。

だけど観ている以上に演じている出演者の皆様の熱演が凄い。
長い台詞を覚えているのもそうだけど、感情の起伏が素晴らしい。
何より長い舞台に対する集中力が素晴らしい。
全体的に年齢層が高い出演者が多く見受けられたましたが、最後まで熱演が途切れる事はありませんでした。

そういう意味では全ての出演者に拍手を送りたいです。
なので今回は特に気になった出演者というのは挙げないでおきます。

ただ今回、私のお目当てだった清水学氏については語らないと……。
私生活において、とても仲良くさせてもらっている御仁ですが、今回は役者としての彼の真髄を見た気がします。
今回、彼が演じたのはシャベリースキーという齢60を超えた伯爵のおじいさん。
……と言っても、好々爺という言葉が似合う、お茶目なじいさんを演じていたように思います。
また私生活でも見せるような、独特の言い回しや、間が演技でも垣間見えました。
確かに役を演じているんですが、彼らしさが前面に出ていたように思います。
そういう意味では彼なりに今回はシャベリースキーという役をしっかり解釈して臨めたのではないか……そう思っています。

数年ぶりに彼の演技を見ましたが、また機会があれば拝見したいと思います。
本当にいい演技を見せてくれたと思います。
この場を借りて「ありがとう」と言いたいと思います。
まぁ酒の席で労いたいですねぇ(笑)


そんな訳で9月の観劇ラッシュもこれで一段落。
……と、まぁ10月中旬になってしまいましたけどね(汗)

自分は小劇場系がメインですけど、こういうロシア文学に触れる機会もたまにはいいかな……なんて思いました。
そんな楽しさを教えてくれたTAC三原塾に感謝して締めたいと思います!