6月になり梅雨の季節となりましたが、皆様、いかがお過ごしでしょうか。
個人的には散々な事から始まった6月……。
しかしあまりくよくよしていられないのもまた事実。
そんな時は舞台でも観て、別の世界に飛び込むのも悪くない!
……という事で舞台に行ってまいりました。
まず6月一発目に拝見したのは「まんが×青春!!~高校ペン児の甲子園」という舞台です。
物語の核となるのは「まんが甲子園」
この「まんが甲子園」ですが、実際に毎年8月、高知県にて行われているイベント。
平成4年から開催されて、盛り上がりを見せています。
そんな「まんが甲子園」を題材に描いた舞台。
その昔、漫画家を目指していた自分的には、題材的にも心躍ります。
そうでなくてもヲタ的にはとっても心ときめくのですが(笑)
今回の舞台の主宰は「劇団SHOW&GO FESTIVAL」
脚本・演出を手がける祝しょーご氏主宰の団体で、今年で活動10年目を迎えます。
個人的には初めましての劇団です。
そして会場は久々にお伺いします、新宿シアターモリエール。
果たしてどんな舞台になったのか……。
公演終了後につき、簡単なあらすじでも……。
かつて「まんが甲子園」を圧倒的な強さで優勝した高知県の私立トレジア高校マンガ部。
当時のメンバー、五ノ井(五十嵐貴裕・以下敬称略)、水沼(柴野弘志)、安岡(村井みゆき)はそれぞれ教員の道に進んだ。
優勝した直後、三人で教員になった「まんが甲子園」で再会しよう……恩師・竹崎(後藤文一郎)を交えそう誓ったのだ。
安岡は母校・トレジア高校マンガ部の顧問として、水沼は栃木県立乙女高校美術部の顧問として、それぞれの部を「まんが甲子園」に導いていた。
ただ五ノ井だけは未だに「まんが甲子園」どころか、かつての仲間、そして現在は実行委員長になった竹崎との再会を果たせないままだった……。
しかし五ノ井の情熱は冷めた訳ではなかった。
福島県立阿武隈工業高校のまんが同好会の顧問になっていた五ノ井は「今年こそは!」と意気込み、生徒たちに「まんが甲子園」出場を促す。
最初は渋る生徒たちだったが、徐々にやる気をたぎらせ、予選のテーマに一致団結して臨む……。
片や水沼の乙女高校美術部、安岡のトレジア高校も想いは同じだった。
刻々と迫る予選テーマの締め切り日時。
各校の熱い想い、青春が漫画に結集されていく……。
果たして本選に進めた高校はどこなのか!?
「まんが甲子園」を舞台に過去と現在が交錯し、そして物語はクライマックスへと突き進む……。
高校球児ならぬ「高校ペン児」を描いた青春群像劇。
題材が非常に良かった。
「まんが甲子園」を知らない方でも、すんなりとストーリーに入り込める。
体育会系とは違った文科系ならでは、独特の雰囲気、熱さというのがうまく再現されていたと思う。
(これは多分、体育会系と文科系のサークル、部活にそれぞれ所属した事のある方なら、尚更わかっていただけると思う)
なお今回の物語では5つの高校が出てきたのですが、その5つの高校も非常に個性が出ていて面白かった。
沖縄は顧問の先生がいかにもって感じだったけど(笑)それ以外はわざとらしくもなく、うまく個性を引き出していた感はあります。
面白いのは、この5つの高校、殆ど本編ではお互いのキャラが絡む事は無い。
過去の回想シーンで「私立トレジア高校」だった三人の顧問の繋がりがあるくらいで、思い当たるのは沖縄の顧問が、横浜の女性顧問に恋焦がれている事くらいで(笑)
(もっともこの沖縄の顧問の片想いが、物語を面白くしている要素なのだが)
物語のメインは「まんが甲子園」出場を目指す5つの高校の5つの物語。
重要な伏線が「私立トレジア高校」の優勝メンバー三人の過去の物語。
そしてもう一つのドラマとして、沖縄・琉球水産高校漫研顧問・比嘉の恋物語(笑)
物語の本筋は上記のように分けられると思います。
もっともこれらのストーリーは一つの舞台の上で張り巡らされるから面白いのであって、恐らく単品の作品になったら、きっと面白くも無い退屈な作品になっていたと思う。
まさに一つの舞台の上で繰り広げられた「青春群像劇」と言って過言では無いのである。
この物語を本当にいい形でまとめ上げていたとは思います。
題材も良く、ストーリーも終盤に向けて盛り上がったけど、若干オチが弱かったのが残念である。
むしろ「これから!」っていうところで終わってしまった感も否めない。
いや終わり方はアレで良かったのかもしれないけど、せっかく広げた大風呂敷が最後は若干雑に扱われたような気もします。
もう少し最後は丁寧に書いても良かったかもしれないです。
上演時間は約1時間40分。
これならあと10分延ばしてでも、もう少し丁寧な最後を書いても……という気にはなりました。
あと舞台演出について言うなら、舞台の使い方はうまかったと思います。
5つの高校及び回想シーンをうまく使い分けるために、パーティションをうまく区切っていた感はあります。
上手と下手、そして舞台の奥の方を代わる代わる、別のシーン、もしくは別のストーリーに切り替えるための演出は秀逸でした。
ただし暗転が多いのはマイナス。
同軸時間帯の進行はうまいのに、回想シーンに飛ばすための演出はイマイチでした。
ただ苦言は呈しましたが、全体的に非常に楽しめる舞台だったのは間違いありません。
文科系高校生(及び顧問)の「まんが甲子園」に賭ける熱い生き様がそこには展開されていました。
さて気になった出演者でも。
実質的に主人公なのだろうか。五ノ井を演じた五十嵐貴裕氏。
回想シーンでも熱い高校生を演じ、また顧問でも熱血系の顧問を非常にうまく熱演されていました。
ただ高校生と先生。若い時分と、歳をある程度取った時分の微妙な熱さの差がうまかったです。
次に水沼を演じた柴野弘志氏。
こちらは逆に高校時代と顧問になった時のギャップが良かった。
高校生の時のバンダナを巻いたヲタク丸出しのスタイルと、顧問として振舞う大人の男としての立ち振る舞いに上手さを感じました。
キャラクターでいったら、琉球水産高校漫研顧問のサモ☆ハン氏を置いて他にいないだろう。
外見からして「いかにも!」って風貌もそうだけど、今回の作品中、最も濃いキャラを非常に見事に演じていました。
良くも悪くも典型的な沖縄県民のイメージを見せてくれました。
もしかしてサモ☆ハン氏……リアル沖縄出身なのだろうか。気になって仕方ない(笑)
このサモ☆ハン氏と逆のベクトルで印象に残ったのが竹崎を演じた後藤文一郎氏だろう。
回想シーンでは引退間近の優しい目線の顧問。現代でも「まんが甲子園」の実行委員長として深い演技を見せてくれた。
ただ驚いた事にこの方、実は二度目ましての方だったのだが、前回演じた役柄とあまりに違いすぎて指摘されるまで気づかず……。
改めて舞台俳優のすごさを思い知った。
ここまで顧問や年配の役を演じた方ばかりを評価していますが、高校生役を演じた皆さんも若いけどいい役者さんが揃っていました。
中には初舞台の方もいたそうですが、それを感じさせない若々しい演技で魅了してくれました。
生徒役で一番印象に残っているのは、祁答院雄貴氏。
彼が演じた田母神はいかにも大人しそうな見た目なんだけど、実は根性が座っているところも有り、ところどころ劇中では印象的な演技を見せてくれた。
ちなみに劇中ではメガネをかけていて素顔はわからなかったけど、メガネを外した素顔はかなりの美形。
そのギャップにも驚かされました。
最後に今回のお目当てだった村井みゆき嬢。
回想シーンで高校生、現代パートでは顧問の先生を演じていましたが、難なくこなすあたりは流石と思います。
まぁ過去の彼女の演じた役柄は小学生から、お婆ちゃん、今年に入っては男性役も演じたそうですから、今更驚く程ではないのですが……。
一つの舞台で高校生と教師という、年齢層が離れている役を瞬時に切り替えて魅せる。
これは前述の五十嵐氏、柴野氏もそうでしたが、非常に違和感無く、切り替えが出来ていたと思います。
この切り替えが出来ていたからこそ、この舞台において回想シーンが違和感無く、客層に受け容れられたと思います。
そう考えると彼女の果たした役割はかなり大きいと思う訳です。
まぁご本人は高校生を演じる事に戦々恐々としていたかもしれませんが、自分はアリだと思いました。
次回出演の舞台では果たしてどんな役を演じて魅せてくれるのか。
今から大変楽しみでなりません。
そんな訳で6月一発目の舞台鑑賞はこうして終了。
ちなみに自分が観に行ったのは初演で、なんと初演の打ち上げにお客様参加可だったので、紛れてきました(大笑)
しかし……足を踏み入れたのはいいけど、美男美女揃いで端っこでタジタジ(苦笑)
村井さんと色々お話が出来たのは貴重な体験でしたが、終始浮ついていたような……そんな感じでした。
もう公演は終了しましたが、村井さん、そしてSHOW&GO FESTIVALの皆様、その節はありがとうございました(笑)
題材は凄い良かったので、また拝見する機会があったら、楽しみにしております。
・劇団SHOW&GO FESTIVAL・公式サイト
http://www.showgo-festival.com