神戸徳洲会病院において、様々な医療事故があった。
主治医である院長が糖尿病の既往歴がある患者にインスリンを使わずに死亡させたり(死因は肺炎となっている)、循環器内科医師の心臓カテーテル(以下、心カテ)治療後に150人中少なくとも11人の患者が死亡したり、他にも低血圧で血圧を上昇させる必要のある患者に昇圧剤の在庫がなかったためすぐに使用できずに死亡などが起き、内部告発もあったようだ。
これにより、兵庫県内では初めての業務改善命令が下された。
『徳洲会』と言うと医療業界では有名で、徳田虎雄氏が創設し現在日本全国に71ヵ所の系列病院を持っている。
一時期政治家でもあった徳田虎雄氏は「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」という病気で政界を引退した、現在は完全介護の状態であるが、今もなお政界や系列病院へ大きな力を持っている。
徳洲会は「断らない救急」が基本理念にあり、他の医療機関で救急搬送を断られた傷病者も受け入れてくれるため、近隣の救急隊としては大いに助かっている事だろう。
そんな有名な系列病院で、なぜ次々に医療事故が起きたのか?
この病院のホームページを調べてみたところ、私の予想通りの結果が判明した。
ここは、年間約3000台もの救急車を受け入れている。
約30年救急医療の現場にいた私だが、前の病院そして前の前の病院(いずれも二次救急)でも、年間約3000台もの搬送があり、地域におけるダントツの搬送件数であった。私も恩師からの教えで、原則救急車を断らないようにしてきた。
神戸徳洲会病院も救急者を断らずに頑張っているのだろうと思ったが、心カテ治療後に11人の患者が死亡している事に疑念を抱いた。
心カテの手技に問題があった事は、元救急医の私には容易に想像がつく。では、なぜ2人、3人と最終的に11人の患者が死亡したのか?。普通だったら、他の医師が止めるはずだが、予想通りこの病院、循環器内科の常勤医師はたった1名であった。つまり手技に問題があっても、それを止める者が誰もいなかったのであろう。
そもそも、この病院は年間3000台もの救急車を受け入れているにもかかわらず、それに見合った医師の数が極端に少なかった。
総合内科医はたった2名、他の科も医師不足で、まともに揃っていたのは、外科医が院長を含めた4名と小児科医が2名くらいなものであった。
ちなみに、院長が糖尿病患者へのインスリン注射を怠ったという事は、通常の血液検査の中で血糖値を測定していなかったか、業務が忙し過ぎて見落としていたと考えられる。
ただし、看護師サイドも患者や家族から入院時に必ず話を聞くから、糖尿病があった事はわかっていたはず。にもかかわらず、血糖値に無関心であった事は、残念ながらこの病院のレベルを疑ってしまう。
また、昇圧剤の院内在庫切れも普通はあり得ない。
徳田虎雄氏による徳洲会の「断らない救急」の理念は立派だが、それに見合う医師数やおそらく看護師・薬剤師などが極端に不足していたから、こんな医療事故が次から次へと起こったに違いない。
ただしこの問題、徳洲会に限った事ではない。ここまで管理体制が杜撰な医療機関も珍しいが、全国ほとんどの医療機関も、医師不足の中ギリギリ綱渡りで医療事故と紙一重で診療しているのが現状である。
問題の根底は「救急車のタクシー化」と「夜間外来のコンビニ化」にあると私は思う。
先日、三重県の松坂市消防本部の救急車一部有料化の件を投稿したが、「軽症」の救急車を有料化したり、夜間外来の「軽症」受診者は時間外加算を増やすなどして抑制しないと、各医療機関は疲弊してしまうのである(もう疲弊しているが)。本当に救急車が必要な傷病者だけを対象にして数を減らし、各医療機関で対処しないと医療事故は間違いなく増え続ける。
そして、理想論になるが、できるだけ病院に頼らない身体づくりこそが本当に大切になる。
個人的には、たとえば50歳以上を対象に、月4回以上ジムに行って、「ウォーキングまたはランニングまたは自転車こぎを10分以上」「筋トレを20分以上」「スタジオレッスンに1本以上参加」のいずれかを満たせば、月会費に5000円を国が支援するなどして、国が健康増進を図って欲しいものである。
具体的な数値はわからないが、支援金を差し引いても、それ以上に絶対に医療費削減につながると思う。そんな事を言い出してくれるスポーツ長長官が、いつか出てきて欲しいと思う。
病院というものは、いつも最高の標準医療をしてくれるとは限らない。医師不足の病院の方が圧倒的に多く、一定の割合でヒューマンエラーが起きる。
だから皆さんに今できる事は、定期的な運動習慣をつけて、心も身体も健康で居続けて、できるだけ病院に頼らないで欲しいという事だ。
決して他人事と思わないで欲しい。もしあなたやあなたの家族が救急搬送された場合、医療機関によっては自身がヒューマンエラーの対象になる可能性もある。