能登半島地震にて5歳の男の子がやけどで死亡、能登半島は今・・・ | 総合診療医:誰もがわかりやすく医療を理解する事ができるブログ

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悲しいニュースがあった。

能登半島地震において、ストーブの上にあったヤカンの熱湯でお尻などをやけどした5歳の男の子が亡くなった。

ご家族の立場を思うとさぞかし無念であろう。ご冥福をお祈りしたい。

 

ただ、ここで私が言いたいのは、『何で入院させなかったんだ⁉️』など、決して感情だけで考えないで欲しいという事。

熱傷(やけど)の入院適応は、体表面全体に対する熱傷面積である。この男の子の熱傷面積は不明だが、おそらく入院適応ではないと医師は考えたのであろう。

 

では、なぜ亡くなってしまったのか?。

 

上の画像は、輪島中学校のグラウンドらしい。

おそらく、グラウンドの中で一番ひどい部分を撮ったと思われるが、周囲の地盤もかなり危ない状態と考えられる。

現地は食料どころか水ですら十分に確保できておらず、トイレの水も流せず衛生環境はおそらく最悪状態。

 

あくまでも推測だが、5歳の男の子は脱水・低栄養が重なり、熱傷による感染が悪化したのではないかと思う。

だからと言って、入院させなかった現地の医師の事を、同じ医師として責める事はできない。この原稿を作成した1/11現在でも、被災地域はまともな救援活動が進んでいないと思われる。一般のボランティアはまだ来ないで欲しいと言われている状態のようだ。

 

尚、約30年救急医療の現場にいた私だが、直接の災害現場に行った事は一度もない。

ただし、学会参加により古くは阪神淡路大震災、東日本大震災、尼崎列車脱線事故などから現在まで、救援に行った医師たちが撮ってきた画像と現場報告を沢山見てきたから、現場の状況はよくわかるつもりだ。

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上の画像は、ある動画のスクショ画像。

 

自衛隊のヘリが着陸しようとしているが、この状態から少なくとも3分は地上に降りようとしないで、少しだけ旋回してようやく着陸している。

大型ヘリが着陸するには、かなり危険な状態と思われる。

 

今、現地の医療現場は、ただでさえ医師不足の地域でかつ元日という事で、医療機関もお休みだったため、最小限の医師・看護師しかいない事が想像される。現場はかなり疲弊しているであろう。冷静な対応も難しいに違いない。

元日から10日経った1/11現在でも、これ程までに医療を含めた救援が不十分なのは、阪神淡路大震災まで遡ってもなかったのではないだろうか?。

そして、現地ではおそらく、治療の優先順位を決定する「トリアージタッグ」が使われた事だろう。

0:死亡

I:重症

Ⅱ:中等症

Ⅲ:軽症

 

災害医療では、心肺停止状態では『諦める命』になってしまう。悲しいけど、それが現実である。

本来なら「Ⅰ:重症」の人たちに緊急処置あるいは手術が必要なのだが、おそらく今回は、これらの人たちですら人手不足で『諦める命』になってしまった事だろう。

入院ベッドもおそらくすぐに満床で、廊下にすらベッドが置かれたと思う。5歳の男の子が「軽症」として入院できなかったのは、仕方がなかったに違いない。誰にも責められない。

 

上の画像は、1/4時点での現地への移動状況。

 

これは現地に行く医師団(DMAT隊)の資料をお借りしたものだが、通常1時間で着く所が10時間以上もかかるらしい。

アクセス可能な道は、過去の大規模災害と違って、かなり限られているようだ。

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それから上の画像も、動画からのスクショ画像。

 

車はもちろんの事、歩行する所を探すのですら大変な状態である。普通だったら通行禁止の壊れた道路である。

では、空港はどうなのか?


こちらは10m以上のひび割れが数ヶ所見つかり、少なくとも1/24まで閉鎖。

仮に復旧したとしても能登空港自体の滑走路が短く、航空自衛隊の所有する「C-2輸送機」の離着陸がギリギリの距離で難しいとの事だ。


当面の間、一般のボランティアが現地に行ける状態ではない。

我々ができる事は、せいぜい募金くらいである。私もいずれ募金するが、皆さんも信頼のおけそうな所へ募金してほしい。尚、支援物資は現在市町村が機能しておらず、区分け整理する人がいないためゴミ同然‼️、必要なのはお金である。

 

それから、現地に行く事と支援物資を送る事以外に絶対にしてはいけない事。それはクレームである‼️

某野党党首が、『対応が遅い‼️』などと批判していた。この野党、さすが日本最大のクレーマー団体である‼️。

現場の事は現場の者と、連絡を直に取り合っている者にしかわからない。我々は決して邪魔をしないように、黙って見守っているしかない。

 

 

尚、話は違うが1/2のJALと海上保安庁のヘリの衝突事故。乗客が撮った動画を幾つか見たが、おそらく全員が死を覚悟した事だろう。

違和感があったのは、何人かの芸能人たちによる動物愛護の発信。一般人から多くの批判を浴びた。私もそれらの芸能人たちに、現場と無関係の安全地帯にいる者は黙ってろ‼️と言いたかった。

乗客の中の人も言っていたが、『外野の方の声がうるさい‼️』

 

私も過去にシーズー犬と一緒に住んでいたから、ペットも機内にという気持ちはわかる。ただし、はっきりと言えるのは、ペットのオーナーの気持ちは、オーナー経験のない者にはわからないという事。おそらく日本人にアンケートを取っても、ペットの機内持ち込み反対の方が圧倒的に多いと思われる。

尚、国外の航空会社でサイズ規定などがあるがペット持ち込み可の会社もある。ただし、それらのどの航空会社も、『ペットは荷物であり、緊急時には荷物を持って逃げてはいけない』という共通した決まりになっている。

つまり、JALが仮にペット持ち込み可であったとしても、残念ながら結果は同じであった。

 

な・に・よ・り・も、何人かの芸能人の発信には、海上保安庁のヘリに乗っていて亡くなられた人たちへのお悔やみの言葉が全くなかった。

ペットの死を悲しむのはわかるが、これから震災先に向かおうとして亡くなられた人たちにもお悔やみ申し上げる・・・そちらの方こそ大切だったのではないだろうか。

 

 

 

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