「アニサキス食中毒」について | 総合診療医:誰もがわかりやすく医療を理解する事ができるブログ

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「アニサキス」という種類の食中毒をご存知でしょうか?。
  
これは寄生虫の一種です。
日本では、寿司や刺身など生で魚介類を食べる習慣があるため、他国に比べてアニサキスによる消化器疾患が多く、年間500~1000例の発生があるとされています。
  

アニサキス1

  
アニサキスが発見された場合、食品衛生法により食中毒として、24時間以内に保健所に届け出る義務があります。
  
⇊実際の届け出数は、年間80件前後にとどまっています。
  

アニサキス5

  
届け出後は、数日間の営業停止になります。
よって、料理人は食材を光にかざして、アニサキスがいないか確かめる必要があります。
これを怠って、アニサキス食中毒を発症させるようでは、営業停止処分にされても仕方ありません。
  
  
「イカからアニサキスを取り出す動画」
こちらの動画でも、光にかざしてアニサキスを発見しています。
https://www.youtube.com/watch?v=bOP75I33T_k
  

アニサキス6

  
アニサキスは元々、クジラやイルカ等の海洋哺乳類で成虫になる寄生虫です。
よって海洋哺乳類のアニサキスの卵が入った糞の中を泳ぐ可能性のある魚の表面には、高確率でアニサキスが付着しています。
  
典型的にはサバに付着する事が多かったのですが、地球温暖化の影響もあって、サケ、マス、ニシン、スルメイカ、イワシ、カツオ、イナダ、サンマ、ヒラメなどにも付着しています。
また川魚でも、海から遡上してくるものにも、アニサキスがいる可能性があります。
  
漁業関係者の方から直接話を聞いたところ、頻度としては太平洋側に圧倒的に多く、日本海側には1%程度の付着とされています。
  

  
~自覚症状~
人体に取り込まれたアニサキスは、自分が望む海洋哺乳類の腸内環境を求めてのたうち回り、胃の粘膜を出入りします。
その結果、激烈な胃痛を起こすとされてきました。
最近では、アニサキス自体の分泌する唾液に対するアレルギーで、痛みが出現するとされています。
  
よって問診する立場としては、胃痛症状の鑑別疾患として、生魚を食べたか?蕁麻疹が出現したか?の聴取が必要になります。
  
また、小腸でもアニサキス症状を起こし、まれに小腸粘膜を突き破り穿孔性腹膜炎を起こす場合もあります。
ちなみに、20年以上救急専属医をしている私は、たった1例だけ小腸アニサキスによる穿孔性腹膜炎症例を経験しています。
尚、胃の壁は厚いので、胃アニサキス症で穿孔性腹膜炎を起こす事はまずありません。
  

アニサキス4

  
~治療~
繰り返しますがアニサキスは寄生虫です。
抗生物質では死滅しません。
  
内視鏡によって、直接アニサキスを摘出する必要があります。
また抗アレルギー剤(プレドニン、セレスタミン、グリチルリジンなど)で痛みを軽減させる事もあります。
  
  
「アニサキスを内視鏡で摘出」
専門的には、虫体の胃の刺入部から摘出し、虫体を切って残してしまわない方法が、理想的な摘出です(動画の部位は、手技的にやや難しいのですが)。

  

上の動画が見られない人は、こちらからご覧ください。

https://www.youtube.com/watch?v=YI7vOaDBoYE
  

アニサキス3

  
~予防方法は?~
上の写真のように、「加熱」「冷凍」「取り除く」事です。
ただし、アニサキスはかなりしぶとく、生半可な冷凍では解凍後に活動を始める可能性があります。
  
我々が確実にできる事は、とにかく細かく噛み砕くことです。
運悪くアニサキスが体内に入る事になっても、ある程度の大きさに育ったアニサキスを噛み砕くことで、発症を阻止できる可能性があります。
かなり小さいので歯があたらないかもしれませんが、それでも我々にはそれしか方法がありません。
  

アニサキス7

  
今回、初めて「アニサキス」について知った方は、お寿司を食べに行きたくなくなったかもしれません。
   
繰り返しますが、料理人もアニサキスを出してしまうと営業停止になるので、食材を光にかざしてチェックしているはずです。
それをしない料理人は失格と言うべきでしょうけど。
  
知識が増えると、怖くなることも増えてしまいますが、「正しい知識を知る」事も大切です。
よく噛む事は、今回のアニサキスに関係なく大切です。
  
  
合わせて読みたいブログ
「一口30回噛む効果、そして実行する方法は・・・」
http://ameblo.jp/hisayacchi/entry-12154162817.html
  
(画像はネットより拝借)

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