中世ヨーロッパの「汚物」 | 総合診療医:誰もがわかりやすく医療を理解する事ができるブログ

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元JALのCA、現在は筑波大学客員教授の江上いずみさんの本を読んでいて、面白い所を発見、自分でも調べてみた。
  
テーマはずばり「汚物!!」
お食事中の方は、後ほどお読みください。
  

ベルサイユ1

  
中世ヨーロッパ時代は一般の家にはトイレがなく、「おまる」を使用していた。
「おまる」の中身が一杯になると、住民は定められた場所へ捨てずに、窓から外へ投げ捨てるのが習慣になっていた。
  
当然、環境汚染は著しかった。
糞尿が路上に捨てられた結果、ペスト菌を持ったネズミたちが繁殖した。
14世紀にペストで死んだ者は、少なくとも2500万人いたとされている。
  

ベルサイユ2

  
トイレに関しては、当時のお城も例外ではなかった。
1つの城に長く住むと、その城があまりに不潔になってしまうので、中世ルネサンス時代の王様は、1つの城にじっとしていることが少なく、城から城へ渡り歩いていたらしい。
  
17世紀のルイ14世も、ルーブル宮殿が汚物まみれになったため、ベルサイユ宮殿に引っ越してきた。
そしてベルサイユ宮殿も例外ではなく、トイレとして独立した部屋がなかった。
代わりに、274個の椅子式便器があった(上の写真)。
ルイ14世はお腹を下しやすかったため、便をしながら会議をする事も多かったらしい。
  
宮殿に住んでいた王一家以外の貴族たちや召使いのためのトイレはなく、彼らの用をまかなっていたのは2000個に及ぶ「おまる」だった。
しかし、2000個でも足りず、またこれを中庭に捨てていたので、中庭はものすごい悪臭だったらしい。
  

ベルサイユ3

  
また舞踏会に参加した女性たちは、「フーブスカート」といって(上の写真)、お椀を逆さにしたようなスカートをはいていたが、これは小用をたす時に隠すためでもあった。
当時の作法として、「尿意を感じたらすぐさま放出すべし!」だったらしい。
  
スカートの中にはパンティをはかないで、代わりに股の間が縫われていない「ドロワーズ」を着用し(下の写真)、立ったまま用をたす事ができたようだ。
  
更にはベルサイユ宮殿には、たくさんの見物人が来ていたが、やはり中庭で用をたしていたため、これまた中庭の悪臭をひどくした。
  

ベルサイユ4

  
さてこの悪臭を抑えるためにどうしたか?。
  
柑橘類が臭い消しになるという事がわかり、2000本近いオレンジの木が植えられたり、月桂樹などの多くの消臭のための樹木が植えられた。
  
また、当時の紳士淑女の服は月1回洗濯できれば良い方であった。
そのため、服にカビが生えているのは当たり前。
また、お風呂やシャワーも全く利用しなかったため、体臭など臭いをごまかす必要があった(さすがに現代は、普通にシャワーを浴びるだろうけど)。
  
ヨーロッパではこういう背景から発達していったものがある。
これが、今の「香水」の始まりである。
  

ベルサイユ5

  
トイレ暗黒時代、汚物を踏まないために・・・
  
ハイヒールやブーツなどの丈の高い靴が考案されたと言われている。
当初、ハイヒールは、こうした道路を歩くための男性の履き物であった。
また、靴の上に履く靴等も利用されていた。
  

ベルサイユ6

  
女性の日傘、男性のシルクハットやマントなどの該当ファッション。
これも投げられる汚物から守るためのものであったらしい。
  

ベルサイユ7

  
そしてベルサイユ宮殿では、庭で用をたす人が後を絶たないので、困った庭師たちが、立ち入り禁止区域の看板を建てた。
  
この看板の事を、フランス語で「エ・チケット」。
それが後に、他人に対する配慮などを表す言葉「エチケット」に変わった。
  

ベルサイユ8

  
ちなみに6000年前の古代ローマでは既に水流トイレが作られていたが、これが中世ヨーロッパには受け継がれなかった。
  
外見でごまかすのではなく、中身から元の悪臭を絶つと考えなかったのか・・・。
  
また日本では、既に縄文時代からトイレなるものは、川に板を張り出して排泄をし、陶器のかけらを紙の代わりに使用していたようだ。
  

ベルサイユ9

  
ところで現在のフランス人、約半数が何らかのペットを飼っているらしい。
有名なパリのシャンゼリゼ通り、犬の糞やたばこのポイ捨てで汚いらしい。
ただパリでは糞の後始末をしないと、罰金が科せられるようになったようだ。
  
こればかりは中世ヨーロッパの精神(!?)を受け継いでいるのか?。
ついでにトイレに行っても、手を洗わないし、同じハンカチを使うらしいし。
  

江上

  
またフランス人は、ヨーロッパの中でも特にお風呂嫌いで有名。
その理由の1つに、ヨーロッパは上下水道のインフラが整備されていない古い建物が多く、水道代がとても高いかららしい。
バスタブにお湯をためること自体、ヨーロッパではなじみのない習慣のようである。

  
先進国であっても、国によって清潔さに大幅な違いがある事に驚いた。
日本では以前、「抗菌グッズ」なるものが一時期流行った。
もちろん全く抗菌の効果などなかったのだが、フランス人から見ると、日本人の綺麗好きにむしろ異常を感じるのかもしれない。
  
(画像はネットより引用)