沖縄クライシス | 総合診療医:誰もがわかりやすく医療を理解する事ができるブログ

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「否定の極論」記事に疲れたあなたへ贈る:「食事」「睡眠」「運動」・・これら「健康の三本柱」をねじ曲げずにポジティブに考えるブログです。

かつて沖縄県の平均寿命は、男女とも全国1位でした。
ところが、男性は次のように順位が変わりました。
  
1985(昭和60)年:1位
1990(平成2)年:5位
1995(平成7)年:4位
2000(平成12)年:26位!!
2005(平成17)年:25位
  
ちなみに女性は長らく平均寿命1位をキープしていましたが、2013年の厚労省の発表によると、平均寿命自体は微増しましたが、3位に順位を落としました。
  
2000年の急落した男性の平均寿命の結果を受けて、2006年「沖縄クライシス」が発表されました。
ちなみに「クライシス」とは「危機」の事です。
  

 

  
「沖縄クライシス」では、次の結論が発表されました。
『沖縄県の男性にメタボリック症候群の増加が顕著であった』
  
★運動不足
・沖縄県には電車がなく車で移動することが多いいわゆる「車社会」
買い物の多くは大規模ショッピングセンターのため、歩く時間が少ない。
・沖縄県はタクシーの運賃が安く、那覇市の小型で初乗り料金が500円、石垣市では430円。
  ⇊
よって子供の頃から、足代わりにタクシーを使う家庭もあるそうです。
  
★睡眠不足
・夜遅くまで明るいため、大人・子供とも夜更かしする事が多い。
  
★食事
・元々、豚肉や牛肉など動物性食品の摂取量が多く、1993年には脂肪の摂取量が全国で唯一30%を超えた。また、男性の方が女性より外食する機会も多い。
「ウチナー弁当」
缶詰のスパムや目玉焼きをご飯の上に乗せた塩分の多い弁当で、400円程度のため昼食によく食べられる。
「Aランチ」
米軍基地などに働く日本人従業員が好んで食べる高脂肪・高カロリーの定食。
  

 

  
これらのように、健康の基本である「運動」「睡眠」「食事」がおろそかになると、当然寿命にも影響が出てくるのです。
  
尚、食事の影響を受けなかった高齢者女性の「貯金」が徐々に減ると、今後は沖縄県女性の順位も下がる可能性は高いと思われます。
  
また、沖縄県の中でも長寿者の多い大宣味村(おおぎみそん)の高齢者は、全国平均と比べると海藻・大豆食品の摂取率が多く、食塩が少ない食事です。
  

 

 

  
尚、「ウチナー弁当」「Aランチ」とも、「AGE(終末糖化産物)」が多く含まれていると思われます。
  
「AGE」は上の写真のように様々な病気の原因になるので、加熱が必要な食品は、時々で結構ですので、次の調理法にする工夫が必要です。
  
・AGEが多い調理法:焼く、炒める、揚げる
・AGEが少ない調理法:煮る、蒸す、茹でる
  

 

沖縄クライシス1

  
さて、この先は、「沖縄クライシス」以降に発表されている事になります。
  
「沖縄クライシス」の問題により、沖縄県での脂肪摂取量は変化しました。
1980年から5年間の脂肪摂取量は63gで全国平均よりも5gあまり上回っていて、男女とも全国1位でした。
  
当然、肥満率も全国1位、「糖尿病による死亡率」は1975年には全国最下位だったのが、2005年に1位に順位を上げてしまいました(上の表)。
学者も行政も、沖縄の肥満が多いことが平均寿命のランキングを下げる最大の要因と考え、摂取カロリーと脂肪の摂取を控えることを主張しました。
  
その結果、下の写真のように脂肪の摂取量も全国平均を大きく下回りましたが、摂取カロリーまで全国平均を下回ってしまいました。
つまり現在の沖縄の平均寿命の低下は、低栄養も原因の1つと考えられています。
  

 

  
★★沖縄県の死因別死亡率では、慢性閉塞性肺疾患(COPD)が多いのです★★
  
厚労省のホームページによると、下のグラフのように(一番右)、沖縄県の慢性閉塞性肺疾患(COPD)による死亡率は、全国平均の10.0(人口10万人対)に対し、17.0(男性)と他の都道府県より群を抜いています。
  

 

  
★★他に、沖縄県の死因別死亡率で多いのは、肝疾患です★★
  
こちらも、下のグラフのように、全国平均の12.6(人口10万人対)に対し、21.1と他の都道府県より群を抜いています。
  
ちなみに、飲酒量の全国平均に対し男性2倍以上、女性4.7倍以上です。
  
尚、自殺率も全国平均の31.6(人口10万人対)に対し、39.4と大きく上回って第1位です。
また沖縄県は、失業率・離婚率まで全国第1位です。
  

 

  
尚、脳梗塞は全国平均34.5に対し、沖縄県(男性)は22.7でした。
男女とも全国最下位でした(下のグラフ)。
また、心筋梗塞は男性は全国平均よりやや高いのに対し、女性は11.5:16.1と全国第3位でした。

  

なぜ脳梗塞死亡率が全国最下位で、心筋梗塞死亡率が女性で全国第3位なのかは、私も理由を説明できません。

脳梗塞と心筋梗塞は原因となるリスクファクターが似ているため、通常、どちらの割合も比例するはずなのですが・・・

    
そして糖尿病による死亡率は、11.0:13.1で、現在は全国第15位でした。
  

 

 

  
「沖縄クライシス」の発表の頃は、過去の高カロリー・脂質過剰のツケが回ってきた可能性はもちろん否定できません。
  
しかし現在の沖縄県の平均寿命の低下は、脳梗塞・心筋梗塞の死亡率の低下から、脂質の過剰摂取は関与が低いようです。
  
糖尿病以上に、低栄養・喫煙(COPD)・アルコール多飲(肝疾患)・ストレス(自殺)・運動不足・睡眠不足の影響が強いかと思われます。
  

 

沖縄QQ

  
ついでに、上の写真のように、沖縄県の時間外受診者の割合も、全国1位のようです。
救急医の立場としては、現場の医師が疲弊しないか心配になります。
  
後半はやや専門的な話になってしまいました。
いずれにせよ、「沖縄クライシス」の結果と現在の沖縄から、日頃の生活習慣を見直す事は、これからの人生を有意義に過ごすのに大切である事に変わりありません。
  
  
その一方で、長野県の平均寿命が全国トップなのか、プラス要因は学ぶ必要があります。
次のページ⇒ 『長寿長野県、その理由は意外なところにありました。

  1⃣ 2⃣

  

  

追記:

「沖縄クライシス」で検索すると、何とこのブログがトップに来るようです!(^^)!

  

(画像はネットより拝借)

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