このコーナーでは、人事労務管理で問題になるポイントを、社労士とその顧問先の総務部長との会話形式で分かりやすくお伝えします。
<総務部長>
先日、年次有給休暇(以下、「年休」という)が10日以上付与された従業員について、年5日の年休を取得させられなかったという話を同業者から聞きました。この場合、労働基準監督署に報告するなど、会社として対応すべきことがあるのでしょうか?
<社労士>
5日の取得をさせられなかったことは問題ですが、それを労働基準監督署に報告するなどの義務は特にありません。
<総務部長>
自主的に報告する必要はないものの、当然取得させることが必要ですね。
<社労士>
はい、そうです。厚生労働省が毎年発行している「労働基準監督年報」を見ると「定期監督等」の違反状況がまとめられています。年休に関する違反を確認すると、令和4年度では、「労働基準法第39条に関する違反(年5日の年休取得など)」が前年度より1.4倍、「労働基準法施行規則第24条の7に関する違反(年休管理簿の作成など)」が前年度より1.5倍に増えています。
<総務部長>
違反だと指摘されるケースが増えているということですね。
<社労士>
そう判断できますね。ですから、改めて注意点を確認しましょう。まず、年10日以上の年休が付与された従業員については、付与日から1年以内に会社が時季を指定するなどして5日の年休を取得させる義務があります。この5日の年休のカウントには、半日単位の年休は含めることができますが、時間単位で取得した年休は含めることはできません。
<総務部長>
カウントする際には注意が必要でしたね。過去に、5日の取得ができていると思っていたら、実は時間単位の年休取得をカウントに含めており、急きょ不足分の年休を取得させたことがありました。
<社労士>
次に、法令に基づき、従業員ごとに年次有給休暇管理簿を作成する必要があります。項目としては、年休の基準日、基準日から1年以内に取得した日数、年休を取得した日付の3つです。
<総務部長>
日常的な労務管理では、取得日数が不足している従業員に対して、早めに取得するようにアナウンスが必要ですね。
<社労士>
そうですね。取得日数が不足している従業員については、本人任せにするのではなく、その上司とも連携をとって、確実に取得できるようにしていくことが重要です。
<ONE POINT>
①年5日取得義務のある年休のカウントには、時間単位で取得した年休は含めることはできない。
②法令に基づき年次有給休暇管理簿を作成する必要があり、年休の基準日、基準日から1年以内に取得した日数、年休を取得した日付の3つの項目の記載が必要である。