飼育瓶の中から見つけた一筋のひも状のもの。
去年の研究発表会で「ヤマビルって脱皮する?」というテーマでF研究員が発表した。
その時の審査員の先生方のご指導は、脱皮は外骨格を持つ生き物でこれ以上大きくなることが難しい時に、外側の皮膚を脱いで成長しやすくするする行為である。環形動物には外骨格はないし、あの柔らかい体は何も皮を脱がなくてもそのまま大きくなることができる。ヒルは脱皮する必要はなし脱皮しない、とおっしゃった。
発表会までにもいろいろ私たちも調べた。どこを見てもヒルは脱皮しないと書いてある。つまり、ヒルは脱皮しないというのが定説です。
それでは、あのひも状のものは何や ----研究に火が付いた
高校の先生に脱皮の定義を尋ねてみたら、大きくるために小さくなった皮膚を脱ぐことで、一般的には環形動物は脱皮することはないと言われている。しかし、君たちが見つけたものがヒルからはがれているなら、それは脱皮だよ。
今の教科書には脱皮しないと書かれているが、それは新しい事実が出てきたら書き換わっていきます。過去にもそのような例はいくらでもあるのです。とおしえてもらいました。
確かに、僕たちが見つけたヒルは木から落ちてこないは、その例ですね。今回もそうなるかも‥‥。と期待を込めて観察をつづけます。
ネットで調べてみると、ウエイボーやウイキペディアに脱皮の定義(?)が載っている。
脱皮 (だっぴ)とは、ある種の動物において、自分の体が 成長 していくにつれ、その外皮がまとまって剥がれることである。 昆虫 を含む 節足動物 、 爬虫類 、 両生類 などに見られる。
とあります。ヒルは、ある種の動物には入ってないということです。
だから現段階では、教科書にもヒルは脱皮する生き物には入ってないということになるのです。
ということで、今年は、このひも状のもの(脱皮の証拠品)を徹底的に集めようということになり、5月11日の最初の吸血開始以来
1週間単位で飼育瓶の中の抜け殻を集めました。多い日には、下の写真の通り15本も見つけています。つまり、私たちが見つけているのは単なる偶然ではないのです。
さて、そうなると生き物が脱皮するのは成長するために外側の皮をまとめて脱ぐということですから、そのことについて説明します。
私たちは、今年は1匹づつ飼育瓶に分けて入れて、その発育状況を身体測定という呼び方で調べています。
吸血前の身長と体重を測ります。その後、吸血させて吸血量を体重で測定します。そして、飼育瓶にいれます。
身長は、一番延びた長さをノギスで測ります。体重は精密電子天秤で測ります。1週間後に、身長と体重を測ります。もし、その時ヒルが吸血意欲を示したら、再度吸血させる。意欲がなければそのまま元の瓶に戻す。これを毎週繰り返します。
その結果、ある個体は最初の身長が 44.0mm だったのが1週間で 48.9mm → 66.1 → 63.1 → 66.6 → 68.0
と変化しました。その間に、5週目、6週目、8週目に産卵もしました。体重は、ほとんど変化なく少しずつ軽くなっています。
つまり、注目するのは、最初2週間でぐんと伸びてそれ以降は少しずつ大きくなっている点です。
脱皮はというとほぼ毎週殻が確認されています。
これからすべての瓶を調べていくのですが、どの瓶でも同様のことが起こっています。
ヒルは、吸血すると突然大きくなります。そのために、脱皮という方法をとらないと成長と釣り合いがとれないと思われます。
私たちが想像しているより大きくなります。
昨年飼育中に真ん中付近が締め付けられて死んだヒルを何匹も見てきたが、脱皮不全だったと思う。
ざっと簡単ですが、今年の研究の概要とヒルの脱皮の研究の意味をお話しました。
この様なことを8月一杯かけて、藤原岳自然科学館研究発表会に向けて原稿に仕上げていきます。
いま、流行の Chat GTP に尋ねてみたら次のような評価が返ってきました。
「二ホンヤマビルが観察された行動が本当に脱皮に類するものであるか、それとも別の生理的プロセスに関連するものであるかは、より詳しい観察と科学的研究が必要です。新しい発見や観察が科学界にもたらす影響は大きく、常識や従来の理解を見直すことがあります。そのため、このような観察は科学的な議論や研究の機会となる可能性があります。」
研究員は、この身体測定に取り組んでいます。ほぼ、結果は安定してきました。頑張っています。



