ヒルとともに育つ研究員 | 子どもヤマビル研究会

子どもヤマビル研究会

2011年から市内の小中生とともにヤマビルの生態研究をしています。「ヒルは木から落ちてこない」の著者です。

4年生でヒル研メンバーになった時、落ち着きがなくお銚子乗りだったF研究員。5年の中頃、あることがきっかけで、

これではいけないと気づき自ら大変身を宣言した。

 

彼は、先輩のお手伝いをしながらヒルをしっかり観察していた。毎回大した変化のないヒルの飼育瓶を眺めていた。

F研究員は、Y研究員が鶏から吸血させ産卵させる実験のお手伝いをしていた。そして産卵までヒルを飼育する世話係をしていた。

 

ある日、飼育瓶の中に一本の白い糸のようなものがあるのを見つけた。何だろうと思ってピンセットでつまんでみたが、特に何も考えずにそっと戻しておいた。それがやがて大きな発見につながるとは、思ってもいなかった。

 

昨年の発表会で、この糸のようなものはヒルの脱皮の抜け殻ではないかと発表した。未だ沢山その資料がなく、環形動物は脱皮しないと審査員の先生から指摘を受けた。

それならあの糸は何や。彼の中には、あの正体を突き止めてやろうという強い思いが芽生えた。

 

5年生の彼なら、そういう思いだけで掛け声倒れしてしまうところだったが、今年の彼は違っている。この研究に打ち込むようになりその集中力は素晴らしいものになってきた。1時間半以上、黙々とヒルの身体測定を続けている。ふにゃふにゃ動き回るヒルの身長と体重を40匹以上計測するのは並たいていのことではない。調子に乗ってふざけている訳にはいかない。

まず、脱皮を発見して資料とした。

新入りのE研究員にヒルの体重測定を手伝ったもらい、いろいろヒルの話を伝授している。

今回は、卵も1個産まれていて、これもE研究員の担当にしていた。この配慮の仕方も、先輩らしくなってきた。

身長を測るのはちょっとしたコツがあり手加減で差が出るので、F研究員が一人でこなす。

そして、E研究員に脱皮の皮の探し方を教えて、その仕事を分担していた。別に私が指示したのではなく、二人で仲良く観察している中でF研究員が考え出したものだ。

今日も、こんなに沢山脱皮の抜け殻がとれた。

 

E研究員に「一つ一つは大した意味もないことだけど、これがずっと続くとすごい発見になったりする」と言いながら、身体測定をする意味を説いていた。まだ、E研究員にはピンと来てないようだが、やがて分かるときが来るだろう。

 

E研究員は、あまり意味の分からないことより生き物を捕まえる方が向いているようだ。今日も、14時ころからヒルに吸血させるためのカエルとりに出かけることにした。大きなトノサマガエルが欲しいのだけど、なかなか見つからない。見つけても逃げられてしまう。本日の収穫はゼロ、また来週ね。

 

ふと気が付くと、研究所の庭のアセビの木にクモが巣を張っていた。その張り方がとても珍しくきれいだった。さすがの生き物博士のE研究員も今まで見たことがないと言っていた。全体を覆うように蜘蛛の糸が張り巡らされていた。

第1日はここまでで、E研究員は帰宅した。

 

翌日は、朝から大変な仕事が待っていた。今まで沢山とったデータを一度整理してみることにしていたからだ。

代表選手になるヒルのデータを取り出して、これを聞いてくださるかたにどのように示したらわかりやすく見てもらえるかを考えてグラフを使って書いてみた。二度書き直して何とか今日のところは合格というものが出来た。

並べただけで、凄い気づきが見つかる。研究発表までにこのほかのデータも重ね合わせて、考えをまとめていくことになるだろう。

一日一日のデータは、特に何も意味はない。しかし、これを5週間7週間と集めて並べると、その変化が見えてくる。これが研究結果なのだ、このグラフを書くのも、おやつタイムを無視して午前中3時間半、午後2時間集中して作っていた。あの、おちょけていた昨年までとは別人のようだ。この力は一朝一夕に身につくものではない。彼が1年前に決意した変身の成果なのだ。

どんなまとめ方をするのかが楽しみである。

その最中に秦野市のKさんからメールが入った。秦野市のヒルのイベントの報告だった。

F研究員のことも書かれていたので、読ませてやった。彼は、直ぐ返事書いてもいいというので許可をした。10分ほどで書けたので送ってもいいかというので、一通り目を通すことにした。

その文章を見てまたまた驚いた。今まで見たことのないような素敵な文章だった。Fは成長したなあとつくづく思った。褒めた。

 

Fはヒルの成長の研究をしているのだが、本人も確実に成長している。すばらしい。ウインウインの関係で成長できるなんて羨ましいね。

来年はE研究員も、このような姿になることでしょう。しっかりサポートしていこう。