●北風と太陽

 

 


このお話は、昨日のブログ(●隠れた事故物件)の続きです。

 

 

 

従って、昨日のブログ(https://ameblo.jp/hirosu/entry-12372450375.html

 


を先にお読みください。


そしてから下をお読み下さい。
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[前回までのあらすじ

 


これはある女性からの電話相談でした。今から十何年か前の話である。

 

それは、付き合っている彼氏の部屋でラップ音が聞こえるというものだった。

 

彼氏はまだ40歳手前なのに都内の良い場所にある分譲マンションを購入されていた。

 

マンションはまだ相談者の方が所有されているかもしれないので、

 

ここで名前や場所を明かす事は出来ないがマンションの前には比較的大きな通りがあり、

 

最寄駅からも歩いて行ける場所で大きな専用駐車場もあり高級なマンションという印象だった。

 

彼女が最初にこのマンションの不気味なラップ音の話を、

 

彼氏から聞いたのは、彼氏と付き合ってから3ヶ月が過ぎた頃だったという。

 

彼氏の話によると、ラップ音は真夜中に、台所付近からするのだという。

 

彼氏の部屋は中央にとても大きなリビングがあり、そのリビングの一角が台所になっている。

 

その台所付近から、真夜中になるとラップ音が聞こえるというのだ。

 

具体的に言うと、グラスとグラスを当てて鳴る様な「チン!」という音や、

 

お皿や瀬戸物をこすったり、出したりする様な音がするのだという。

 

彼氏はこの分譲マンションの一室を購入してから、もう2年するというのだが、

 

不気味なラップ音は、購入して住み始めてまもなく始まったという。

 

しかし、彼女が彼氏のその家にお泊りする時には、1度も聞いた事が無いのである。

 

彼氏も、「お前が来るとラップ音しないな。」と言ったという。

 

しかし、彼女は少し霊感があるらしく、彼氏の家に行って、台所に立つと、

 

誰かが、後ろから彼女を見つめている気配を感じると言うのだ。

 

でも振り向くと、誰も居ないのである。そんな事が何度もあるという。

 

そして、そんな不気味な気配を気にしながら、料理や皿洗いをするからか、

 

彼氏の家に居る時に限って、よく手を怪我したり、床にナイフが落ちて、

 

足に当たりそうになったり、手が滑ってお皿を割ったりした事もあるという。

 

「彼氏さんは、その部屋に2年住んで居て、

 

 怪我したり、病気になったり、仕事がうまくいかないとかありましたか?」

 

「特に聞いていません。でも、仕事はうまくいっている感じです。」と彼女。

 

「ちょっと変な事聞くけど、ごめんね。誰か、その部屋で死んだって聞いてないかな?」

 

「聞いて無いです。」と彼女。

 

彼氏が購入した分譲マンションは、かなり前に完成したもので、

 

彼氏はそれを中古で購入したという。しかし、購入した時に交わした契約書にも、

 

購入する時の説明でも、この部屋が事故物件だという告知事項は無かったという。

 

電話の彼女は、「ちょっと調べてみます。」と言って相談は一時中断となった。

 

その後、彼氏と彼女は古くから住んで居るアパートの住人に聞いたり、

 

調べたりしたらしい。5日後、彼女から再び電話があり、

 

この分譲マンションで起きた、ある恐ろしい事実が分かったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

相談者の彼氏が、2年前に購入したというマンション。

 

 

それからさかのぼる事、約2年、

 

 

 

 

このマンションの屋上から、女性が飛び降り自殺したというのである。

 

 

 

その自殺した女性は、このマンションの住人では無かった。

 

 

しかし、その女性と交際していた男性がこのマンションに住んで居たのである。

 

 

そして、その男性が住んで居た部屋こそ、今回相談者の彼氏が購入した部屋だったのだ。

 

 

 

つまり、自殺した女性の彼氏が住んで居た部屋を購入していたのだ。

 

 

 

 


こういう場合、その部屋は事故物件にはならないと言う。

 

 

なにしろ、この部屋で死んだ訳でも無く、

 

 

また、この部屋の住人が死んだ訳でも無いからだ。

 

 

ただし、相談者の方が不動産屋に聞いたところ、

 

 

自殺した彼女が飛び降りた地面の現場駐車場は、事故物件になるそうだが、

 

 

当時すでに住んで居る住人の駐車場だったので、その事が告知事項に書かれる事は無かったという。

 

 

 

 

しかし、こういう場合、自殺した彼女が出るのは、彼氏の部屋なのである。

 

 

だから、彼氏の部屋こそが事故物件にしてもいい部屋なのだ。

 

 

 


私はその報告を聞いて、今までの全ての辻褄(つじつま)が合った気がした。

 

 

まず、今回の相談を聞いていて、

 

 

彼氏の部屋に現われる霊は、女性の霊ではないかとイメージしていたのである。

 

 

 

なぜなら、台所近辺から聞こえるラップ音というのは、

 

 

8割がた女性の霊が鳴らしているからである。

 

 

 


ただ、相談者の女性は、

 

 

「住んで居る彼氏に何も問題が無いから、

 

 このままの状態でも大丈夫ですか?」と聞いてきたのだが、

 

 

 

それには反対だった。

 

 

確かに、今住んで居る彼氏は、この部屋にもう2年も住んで居るのだが、

 

 

怪我も無ければ、病気もしないし、逆に仕事は順調だという。

 

 

しかし、この霊は、この部屋に時々訪れる相談の女性には攻撃的なのである。

 

 

この部屋に来ると何故か怪我するとか、ナイフが足に落ちそうになるとか、

 

 

お皿を割るという現象が、なぜか彼女が台所にいる時に起き、

 

 

彼女は後ろに目線を感じると言うのだ。

 

 


もしかしたら、女性の霊は、

 

 

この部屋に引越してきた彼氏を、元居た彼氏の存在とダブらせて考えているのかもしれない。

 

 

そうなると、その彼氏に近づく女は敵と認識している可能性があるのだ。

 

 


嫌な予感がする。

 

 


私は電話の彼女に、

 

 

絶対屋上に行かない事、また彼氏の家に居ても絶対ベランダには行かない様に言った。

 

 

実は、死亡現場の中でも飛び降り自殺の現場が一番危険なのである。

 

 

理由が知りたい方は下記の記事を参考にしてみて下さい。

(●危険な心霊スポットの見分け方https://ameblo.jp/hirosu/entry-12265090612.html

 

 

 

 

さて、

 

原因が分かって、なんて怖いんだろうで終わりでは、下手な恐怖漫画と同じである。

 

電話相談としてお金を貰っている以上、

 

 

 

問題はこれからどうするかである。

 

 

 


相談者の彼女は、「塩をまいて、除霊とか出来ないでしょうか?」と聞いて来た。

 

 

確かに、塩をまくとか、盛り塩をするとか、お札を貼って、

 

 

霊が近づかない様にするという方法もあるかもしれない。

 

 

しかし、それはそこに居座る女性の自殺霊と全面対決する事になる。

 

 

優れた霊能者が、現場に行って除霊するならいいのだが、

 

 

素人が下手に除霊して失敗すると、逆にやばい。

 

 

 

これをドラえもんで説明すると、

 

 

のび太が住んで居るマンションの部屋に、ジャイアンの霊が出るとしよう。

 

 

そこに霊能者が行って、ジャイアンの霊がもう出ない様にするならいいのだが、

 

 

素人が塩をジャイアンにぶつけて、その場は追い払ってよしよしと思っていても、

 

 

1週間後にまたジャイアンが戻って来て、この前はよくもやってくれたな!と、

 

 

怒らせてしまい全面対決になっては、よけいまずくなるのである。

 

 

 

 

電話相談の場合、私が現地に行く事が出来ないので、特にそういう心配がある。

 

 

では、どうするか。

 

 

 


皆さんは、「北風と太陽」というイソップ童話をご存知でしょうか?

 

 

ある時、北風と太陽が、力比べをしようと提案し、

 

そこに歩いていた1人の旅人が着ている上着を脱がせた方が勝ちという勝負をした。

 

最初に北風が力いっぱい風を吹いたのだが、

 

旅人はかえって上着をしっかり押さえてしまい脱がす事は出来なかった。

 

Wikipediaより

 

しかし、太陽が温かい光を旅人に照りつけると、

 

旅人は自ら上着を脱ぎ、勝負は太陽の勝ちのなったのである。

 

 

 

 


この童話は、1つの教訓が含まれている。それは、

 

 

物事は、強引に冷たい態度で片づけてしまおうとすると人は逆に意固地になるが、

 

優しい態度で接する事によって、人は自分から態度を改めてくれるのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

確かに、部屋に出る女性の霊は怖い。

 

 

でも、よく考えてみると、

 

 


本当は、とても可愛そうな霊なのである。

 

 

どんな事情で飛び降りたのかは分からないが、

 

 

ただただ、彼氏と幸せな結婚を夢見ていただけの

 

 

普通の女性だったのではないだろうか。

 

 

 


そんな女性に、「出て行け! 立ち去れ!と塩をまくのではなく、

 

 

台所付近に一ヶ所、その女性用に場所を作り、

 

彼女の名前が分かれば、名前を書いた短冊を、

 

新聞記事があれば、その新聞記事のコピーを起き、

 

その前にお水とお線香を点し、優しく、

 

 

辛かったよね。 痛かったでしょ。

 

 今ここに住んで居るのは、貴方の彼氏では無いのよ。

 

 どうか成仏してね。」

 


と、二人で手を合せてあげる様にアドバイスした。

 

 

彼氏が夜中にラップ音が聞こえなくなるまで。

 

 

すると、時間はかかったが、4ヶ月後くらいにはラップ音がしなくなったという。

 

 

 

 

二人は女性の霊に、毎回最後に、優しくこう語りかけていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


「今度生まれ変わる時は、


 幸せなお嫁さんになるのよ。」


END