フォーエバー・フレンズ -7ページ目

11、創業家一族として(6)

その後、西原開発工事はどうなったかと言えば、吉村と川崎の2名は、一度は辞めると言ったものの、結局は辞めなかった。ただ、圭一郎のいない現場をとてもさみしく感じていた。いろんな問題に対して、あそこまで動いてくれた人物は今までにいなかったからだ。

彼らは、そんな圭一郎に対して尊敬の念すら抱いていた、しかし今、圭一郎は雲の上の世界へと帰って行ってしまった。




そしてクリスマスイブの日がやってきた。



その日は工事も順調に終わり、無事資材置き場へ帰ってくると、優太は「それじゃあ俺帰るわ」と言って、早々と職場を後にした。

綾乃は妊娠中だが、挙式をあげる事が出来ない。彼女には誰一人として身よりがないからである。

だからせめて指輪だけでもと思い、優太は家に帰る前に、資材置き場に止めてあったバイクにまたがり、そのまま渋谷へと出かけた。

はっきり言ってデリカシーの無い優太である。女性に指輪など買ったことが無い。


緊張した面持ちで宝石売り場へ入ると、キラキラと光るガラス越しの宝石達を見つめ続けた。

「女ってなんでこんなもん欲しいんだろ?」

そんな独り言を言っていると、店員に声を掛けられてしまった。

「お決まりでしょうか?」

「う~ん・・・さっぱりわかんねえ」

「どのような方にプレゼントですか?」

「彼女・・・いや、嫁だ」

「そうですか。それではピンクサファイヤ等いかがですか?」

「ピンクサファイア???」

まるでバンドの名前のようだった。しかし実物を見せてもらうと、なかなか綺麗であった。

優太は咄嗟に「これくれ」と言った。

「号数はいかがになさいましょうか?」

「何だそれ?」

「指の太さです」

「細くて綺麗な指だよ」

「いえ・・・あの・・・サイズです・・・」

店員がしどろもどろにそう言うと、優太は「う~ん・・・」と言って考え込んだ。綾乃の指のサイズ等考えた事がなかったのだ。そして店員に「適当でいいよ」と言ってしまった。

困り果てた店員は、指輪の号数別サンプルを持ってきてくれた。

「この中で、奥様のサイズに似たものを選んでください。もし合わなけ

れば後日でも修正できますので」

「助かる!」


そして優太はピンクサファイアの指輪を買い、そのまま大森の自宅へバイクで走って行った。

大好きな綾乃。綾乃の喜ぶ顔が見たい。綾乃を好きと言って抱きしめたい。そして綾乃に好きと言われたい。そんな事を思いながら、優太はひたすら大森の自宅へ向かって走り続けた。


しかし・・・。


人生とは無常なものである。


優太が自宅近くの交差点を通過した時、突如大型トレーラーが側面から突入してきたのである。

バイクごと激しく飛ばされた優太は、そのままアスファルトを転げまわった。

そして血を流し、そのまま道路上へと倒れ意識を失う。

アスファルト上には、綾乃の為に買ってきたピンクサファイヤが、開いたケースの隙間から美しく輝いていた。






『野島・・・後を頼む・・・』



「え?」

圭一郎は、その優太の心の声を聞いて一瞬驚いた。

恭子と共に六本木の街で、自宅でのイブのパーティーの買い出しをしている最中だった。

暗くなった六本木の交差点。信号待ちをしている最中に聞いた優太の声。

圭一郎はその声をしっかりと聞いた。間違いなくあれは優太の声だ。

そして「恭子ちゃん、今、優太の声が聞こえなかった?」と言って、あたりを見回す圭一郎だが、何処にも優太の姿はなかった。

「え?優太さんの声?うそ?何も聞こえなかったよ」





優太の部屋では、綾乃がクリスマスパーティーの食事の用意をしていた。

今日は待ちに待ったクリスマスイブ。テーブルに並べられたオードブルは全て綾乃特製。

優太の大好きなフライドチキンをお皿に乗せると「よし。準備OK」と言って、そのままラップをかけた。

そして再び台所に立とうとすると、突如部屋の電話が鳴りだした。

部屋中に響く着信音。電話機のディスプレイには見知らぬ電話番号が表示されていた。そして綾乃は、その電話機のディスプレイの画面をじっと見つめていた。