フォーエバー・フレンズ -53ページ目

2、墜ちてきた星の王子様(2)

次の日、綾乃がいつも通りの時間に会社にやって来ると、なんと門前で優太が待ち伏せしていたのだ。

「綾乃、メール見てくれたか?」

「見てない」

「読んでくれよ!」

「どうせ飲みに行こうでしょ」

綾乃がそう言って、無視したような態度で事務所の中に入ろうとすると、優太は行く手を阻むようにして、扉の前に立った。

「何?」

「綾乃、お願いだ!どうやったら俺と一緒に遊んでくれるんだよ」

「絶対に無理」

「そんな事言わないでくれ!一生のお願いだ!一度でいいからチャンスをくれ!」

優太の切実なお願いに、綾乃はなかば呆れてしまっていた。そして「それじゃあ、かっこいい人連れてきて」と言った。

「かっこい人???」

「そう。そうしたら私も女の子一人連れてきてあげるよ。グループだったら遊んであげる。二人っきりはイヤ」

綾乃にそう言われると、優太は少し考え込んだ。そして「よし!わかった!」と言って、その場を走り去っていった。

「かっこいい人だよ!かっこよくない人だったら私帰るからね!」

「わかったよ!」



そしていつものように社長室の隅に置かれた机の上で、黙々と手許金の計算をしていると「こんにちは」と言って、一人の女性が社長室へと入ってきた。

なんとその女性は恭子だった。

「恭子。やほ!」

綾乃に挨拶されると、恭子も「綾乃。やほ」と言って微笑んだ。そして「四半期決算の書類持ってきたの。小田社長に渡しておいてくれる」と言って、大きな封筒を手渡した。

「ありがとう」


そして二人は、冷たいアイスコーヒーを飲みながら、応接ソファーに座って話し込んだ。

「恭子、最近仕事どう?」

「うん・・・まあまあかな・・・」

「どうかしたの?」

「実はね・・・ウチが担当してた会社に好きな人いたんだけど、最近辞めちゃって・・・」

恭子はそう言うと、少し寂しげな顔をした。しかし綾乃にしてみれば、何故そんな事で悩むのかが全く理解出来ない。

「電話したらいいじゃん」

「それが・・・何を話していいのか・・・」

恭子は恭子で真剣に悩んでいた。圭一郎とは仕事という事でしか接点を持っていなかった為、彼が丸和工務店から去った今、自分から電話したところで、一体何を話せば良いのかがわからなかった。


そしてそんなモゾモゾした話を聞いていると、綾乃はだんだん頭が痛くなってきてしまった。そして「好きって言ったらいいじゃん」と言った。

「そんな・・・」

恭子は黙り込んでしまった。

すると綾乃は「わかった。恭子ちゃん今度一緒に、グループでデートしよう」と言って微笑んだ。

「グループ?デート???」

「そっ♪新しい出会いがあるかもね」

「は、はあ・・・」

これはこれで困った事だった。恭子はグループの中にいると、笑う事しか出来なかった。人見知りしてしまうのだ。





その日の晩、圭一郎は一人パソコンのインターネットで、求人情報サイトを見つめていた。

圭一郎の年齢と学歴から見ると、大体が年収400万円と言ったところだ。現に丸和工務店でも28歳の平社員と言えばそんな給料だった。今更特に驚くこともない。

それに、そんなにもお金は使わない。この2LDKのマンションも、一昨年父に買ってもらったばかり。住むところには不自由しない。問題は年収よりも、何をするかだった。

しかし、ずっと父の轢いたレールの上を歩いてきた圭一郎にとって、今自分が何をすれば良いのかが全く考えつかない。

「ゆっくり考えてみるか」

圭一郎はそう言ってノートパソコンの画面を閉じた。すると突然ピンポーンと音が鳴った。誰かなと思いモニター画面を見ると、なんと画面の向こうに優太の姿が映っていたのだ。