フォーエバー・フレンズ -52ページ目

2、墜ちてきた星の王子様(3)

優太は「おじゃま」と言って、断りもなく冷蔵庫のビールを取り、その場でプシュッと開けた。昔から遠慮というものを知らない優太に圭一郎も慣れていた。

「お前だけ飲むなよ」

圭一郎はそう言いながら冷蔵庫の中からビールを取ると、優太と同じようにプシュッとフタを開けた。そして少しだけ口にすると、おつまみの柿ピーを用意しながら「どうしたんだよ、こんな時間にさ」と聞いた。

「野島、お願いがある」

「何だよ」

優太からのお願いと言えば、昔から大体お金の件だった。圭一郎はそれを察したのか咄嗟に「オレ今金ないぞ」と言った。

すると優太は「違うよ!」と言って、片眉を吊り上げた。そして「一緒に遊びにいこうぜ」と言って、ニターと笑った。

「はあ???」

優太が何を言っているのか、全く理解出来なかった。






その後の優太の説明で大体は理解が出来た。要は綾乃という女性と遊びたいが故に、当て馬になれという事だった。しかし話だけ聞くと、どう考えても優太に脈があるようには思えなかった。その女性に嫌われているとしか思えなかった。

「優太。その女多分無理だよ。お前嫌われてるよ」

「いいや。今はこうでも、絶対に落として見せる」

優太は自信満々にそう言ってのけた。

昔から欲しいものは意地でも手に入れようとする優太。ゲームが欲しければ、盗んででも手に入れた事すらある。野球部時代もチームの勝利より、自分が目立つか目立たないかが重要だった。とにかく強引で自己中心的な性格は、昔と何ら変わりは無かった。

「野島。俺はどんな事をしてでも綾乃を落とすつもりだ。その為に女に好かれる遊び方を教えてくれ」

「知らないよ。お前が決めろよ」

「無理。だって俺、養老の滝でしか飲まねえもん」

「メシは?」

「牛丼屋か焼き肉屋しか知らない」

「はあ???お前よくそれで女を誘えるな」

圭一郎は思わずあきれ返ってしまった。この後先構わずのイケイケ根性は昔のまんまだった。


男女4人のデートは何処がいいか?

「う~ん」圭一郎はそう言ってしばらく腕を組んで考え込んだ。しかし、いざ考えてみても中々思い浮かばないものである。そして「海開きもしたとこだし泳いでみるか?」と言った。

「何処でだよ」

「逗子なんてどうだ。大学の先輩の別荘があるんだ。海辺のログハウスで、泳いだ後にバーベキュー。こんなんでどうだ?」

「おお!いいなそれ!それでその後ラブホに直行」

「やめろ!」

すると優太はスマートフォンを取り出し、早速綾乃に電話をしだした。

「おお、綾乃?オレオレ。今度の件だけど逗子まで泳ぎに行こうぜ。・・・そう、俺、いいとこ知ってるからさ。ああ、まかしとけって」

この発言に、圭一郎は開いた口が塞がらなくなってしまった。






真夏の太陽の日がまぶしい程に照りつける逗子の海。波は穏やかで、ところどころにヨットが浮かぶ。しかし・・・。そんなのどかな海とは裏腹に、陸路は大渋滞。綾乃のピンクの軽乗用車は、逗子海岸の大渋滞の波に飲み込まれてしまっていた。


「やっぱり電車で行ったほうがよかったね・・・」

恭子は思わずそんな事を口にしてしまった。

「そうだね・・・あ、でももうすぐ着くよ。カーナビに後2kmって出てるじゃん」

「その2キロ、多分長いよ。ねえ、綾乃の友達はもう着いているのかなあ」

「多分ね。だってやる気マンマンだもん。ひょっとして前日入りしてるんじゃない?」

「あはは・・・」

恭子は思わず吹き出してしまった。すると綾乃が「ねえ、恭子。水着ちゃんと買ってきた?」と聞いてきた。

「うん・・・一応は・・・」

デートが海水浴と聞いて、恭子は少しブルーになっていた。スタイルの良い綾乃と違って、自分はチビの幼児体型。はっきり言って全く自身がない。しかも泳げない・・・。

出来ればこのまま着かなければいいとも思っていた。


しかしそんな事を思っていると、道路とは流れるものである。

それからあっという間に到着してしまったのだ。




海辺に建てられたログハウス。駐車場に車を止めると、二人は荷物を持って丸太で出来た階段を上がって行った。そして階段を登りきると、そこには広いテラスが広がっていた。


圭一郎と優太は、既に到着して、バーベキューの準備をしていた。

その二人の姿を見て恭子は「あっ!」と声を出して驚いてしまった。勿論、圭一郎も優太も、恭子の姿を見るや「あっ!」と言って驚いた。

しかし、もっと驚いた人がいた。

それは綾乃である。

今自分の目の前にいるのは、あの経済誌の表紙に載っていた、丸和工務店の御曹司。野島圭一郎である。


「あっ!星の王子様!!!」


綾乃は思わずそんな事を口にしてしまった。

「星の王子様???」

圭一郎はそう言うと不思議そうな顔をした。