フォーエバー・フレンズ -372ページ目

2、消えぬ思い(6)

月曜日、陽一は学校を休んだ。

その事で恵はなおさら心配になってしまい、授業すら耳に入らなかった。

由香子が話しかけてきても、「ああそう」と上の空な感じで、珍しく由香子が恵を心配していた程だった。

幸いにして今日はバイトが休みだった。

こんな調子でホールに出たら間違いなくミスしてしまい、店長に怒られてしまう。

放課後のチャイムが鳴ると、恵は真を探した。

すると真は、簡単に見つかった。

いつも屋上にいるからだ。

「遠山君、徳永君の携帯番号教えて」

真は「なんだよ。お前陽一の事が好きなのか?」と言ってニヤリと笑った。

「じゃなくて急用なの!」

「なんだよ急用って」

「聞かないで!」と焦る恵に、「わかったわかった」と真は面倒臭そうに携帯電話をズボンのポケットから取り出した。

「08047・・・・」

「ありがとう」恵は自分の携帯に陽一の番号を登録すると、その場を走り去った。

「おい!山野!俺の番号も知りたいか?」

「いい!」



学校を出て、恵は陽一の携帯に2、3回電話したが、陽一は電話に出なかった。

恵は寂しげにトボトボと駅に向かって歩いて行った。

すると汐入駅の方角に向かって歩く陽一を見つけた。

大きいから本当によく目立つ。

「徳永君!」恵はとっさに追いかけた。

歩幅が人一倍大きい陽一に、すこし小柄な恵はなかなか追いつけなかったが、やっとの思いで陽一に追いついた。

そして「徳永君!」と言って、はあはあと息を吐いた。

「なんだ山野か。どけよ」陽一はぶっきらぼうに言った。

「怒ってるのわかってる!ごめんなさい!謝るから!」

「どけって言ってるだろ」

恵は大きな声で「どかない!」と叫んだ。

すると陽一は呆れた顔をした。

そして恵の後ろの建物を指差して「お願いだからこの店に入れてくれ」と言った。

恵は後ろを振り返ると『イワサキスポーツ』と書いてある店の自動ドアが視界に入った。

「えっ?」恵は今の状況を、全くつかめないでいた。



夕暮れの時の横須賀港。

テレビによく映る東京湾と違った方角から見る東京湾は、とても情緒のある景色だ。

遠くに川崎の石油コンビナートがうっすらと見え、さらに羽田空港が見えこの時間沢山のジェット機が羽田空港を中心に行き来する。

この文明の進化を、横須賀は東京湾の反対側からずっと見守ってきたのだろう。

その東京湾の裏側に、陽一と恵はなんとなくやってきた。

「ズル休みしたんだよ」と陽一は恵に珍しくお茶目な表情を見せた。

恵は、あっけらかんと「ズル休みした」と言う陽一の態度に、呆れかえってしまった。

心配した自分が馬鹿に思えてきた。

「スポーツショップなんて放課後行けばいいじゃない」

「駄目なんだ。道具は時間をかけて、よくよく選びたいんだ」

「じゃあ土日に行けばいいじゃん」

「土曜日まで待てないんだ。明日から始めるんだ」

恵は理不尽な事を平気で言う陽一を、一瞬変人だと思った。

陽一は袋からグラブを取り出して、自分の左手につけると、右手の拳で叩いてパンパンと音を鳴らした。

「何軒も廻ったけど、やっぱりイワサキの品揃えが一番いい」

道具のよし悪しなんてわからない恵は「みんな同じじゃん」と言った。

「違うんだよこれが。グラブやバットってものは、手にとって付けてみて動いてみて初めてよさが分かるんだ。そうしてみて一番いいものが揃ってるのは、このイワサキなんだよ。店の親父センスがいいよ」

「よく分からない。店内で素振りばっかりしたり、グローブ付けて右に左に動いたり」

「自分の手足になるんだ。だから徹底的に選びたい」

「ばかみたい。大体野球やってたんだから道具ぐらい持ってるでしょ。無駄遣いじゃん」

「もう野球なんてやらないと思って、仙台の寮出る時に全部捨ててしまったんだよ。おかげで今日一日で5万も使ったよ。明日から節約生活だな。そうだ!この海に潜って魚でも捕ろうかな。こうやってモリで突いてさ」

「やめてよ!黄金伝説みたいじゃん。あはは」




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