フォーエバー・フレンズ -364ページ目

4、交わした約束(2)

野球部員は練習の合い間に、かつての栄光の遺産であるバッティングマシーンや、ティーバッティング用機材を補修し、少しずつ装備を整えていった。

日々活気付く野球部だが、今日の修二は気が重そうに練習用ユニフォームに着替えていた。

先日の陽一の「ワンテンポ遅い」発言が相当こたえていたのだ。

すると陽一は、そんな修二の肩をポンと叩いた。

「なんすか?」

「ランニングに付き合ってくれ」

「はあ・・・」


横須賀港から海岸線を走ると、風景はやがてコンクリートの海岸から、磯がポツリポツリと顔をだす美しい海岸へと変わる。
5月始めの暖かい潮風が心地よく、まさしく今日はランニング日よりだ。
はあはあ、と息を切らして、陽一と修二は海岸線のアスファルトで覆われた駐車場に寝転んだ。
陽一は自販機でスポーツドリンクを2本買い、1本を修二に投げ渡した。
「あっ・・・ありがとうございます」
そして二人はスポーツドリンクを、喉の渇きを潤すべく一気に飲み干した。
やがて水分に満たされた二人の体は「ふう・・・」という言葉を自然に出させた
「なあ修二、オレお前には人一倍厳しい。何故だか分かるか?」
「徳永さんが元ショートだからですか?」
「それもある。だけどそれだけじゃない。守りの要はショートだからだ」
「はい・・・」
「内野ゴロで一番多いのはショートゴロだ。そして内野でファーストベースから一番遠いのもショートだ。それだけじゃない。外野からの中継プレーから細かいベースカバーまでショートの仕事は山積みだ。それくらい状況判断が必要なポジションだ」
修二は黙って聞いていた。
「いいショートがいるチームはやはり強い。これは俺の考えだが、いいショートがいればある程度の他の守備のまずさは、ごまかしが利くんだ。だから守備はお前の腕にかかっている」
「徳永さん・・・わかりました・・・」修二は少し元気を取り戻した。
「さあ修二帰ろう。今日からメニュー変えるからな」

学校へ帰った陽一と修二は、特別練習を始めた。

修二へのノックである。

正しくは陽一と修二の二人がショートを守り、交互にキャッチをするノックだ。

陽一が修二に伝授した事、それは『ワンテンポ遅い克服法』であった。

何故修二がキャッチしてから投げるまでワンテンポ遅いか?修二はボールをキャッチしに向かう事だけを考えている事が原因なのだ。

一般的には正しいのだが、一ランク上のショートは打球が転がった瞬間に、どの位置で、どの体制でキャッチをし、そしてどのような体勢でスローイングするかを瞬時に創造しなければならない。

これを言葉で教えるのはとても難しい。

だから陽一は、マンツーマンで修二に教える事にした。

そしてこの日を境に修二の守備力は、メキメキと上達しだした。

陽一も教えるだけではない。

何しろショートからセンターにコンバートしてからまだ一ヶ月も経っていないので、足らない事ばかりだ。

外野のベテランの慎太郎は、陽一のポジショニングを指摘した。

それは陽一程の俊足強肩なら、通常より3~5m後方で守っても良いとの事だった。

お互いが励ましあい、そして教えあう。

みんなの自主性により築き上げた物は、やがて港南学院の『大きな強み』へと変わっていくのである。

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