フォーエバー・フレンズ -335ページ目

10、決勝戦(3)

3回表、3塁コーチの司は帽子で汗をぬぐったり、空を見上げたり、スパイクについた土を両足でがちゃがちゃと落としたり。とにかくいろんな動きをしていた。

結局三者凡退で終わったが、小林の球数はこれで59球となった。



3回裏、またもや速見は先頭打者に打たれてしまった。

「速見さんガマンですね」司は不意にくちを開いた。

そんな司の言葉に古屋監督は「もうあいつには慣れたよ」と開き直った表情で言った。

「でも速水君って落ち着いてますよね。ほらまた笑ってる」仁科先生は速見を指差した。

すると速見は、また舌を出して笑っていた。

「速見には最初イライラしていていたが、最近はこれでもいいかと思っているんだ。これが逆に先制点を引っ繰り返す力になったりしてな」と古屋監督は苦笑いをした。

その時カーンと音がなった。またもやタイムリーを打たれてしまったのだ。

3回裏を終わって20、港南学院は2点のビハインドとなってしまった。



恵は目をそらさずに、じっと黙って試合を見ていた。

すると横で小さな双眼鏡であたりを見ていた茜が、恵の体を指でツンツンとつついた。

「ねえねえ見て、向こうの客席。ベンチの上の方」と言って、茜は恵に双眼鏡を手渡した。

すると1塁ベンチに、一人で日傘を差して座っている由香子がいたのだ。

「由香子・・・」

「こっちで見ればいいのにねえ」

「私に会いたくないのかな・・・」

恵はやはり由香子の事がまだ気になっていた。
茜は言わなければ良かったと思い「さあさあ。いいから野球見よ。もう由香子を見ちゃだめ」と言って、恵から双眼鏡を取り上げた。



速見は回を増すごとに、スクリューボールの切れがよくなってきた。

速見は30球程投げると、このスクリューボールが切れだし、調子が安定するのである。

そして4回、5回と三者凡退に仕留めた。

小林は、うなだれながら「ダメだ。調子が戻ってきた。だから一回の時に点が欲しかったんだよ!」と怒鳴って、再びマウンドへと向かった。

誰も小林にはものが言えないのである。



6回表、小林の球数は既に100球を超えていたが、港南学院はここまでヒットは1本。

そして小林の球数が100球超えた事により、古屋監督は遂にゴーサインを出した。

この37度の猛暑の中、遂に小林に疲れがでてきたのだ。



そして左打席に立った修二がセフティーバントを試みたのだ。

ボールはちょうど3塁とピッチャーの間に転がった。
小林はあわててキャッチしたが、1塁に間に合わなかった。
修二が内野安打で出て、バッターは陽一
3塁コーチャーズボックスの司は、修二に「一歩大きくリードをとれ」とサインを出した
セットポジションの小林は、修二が気になり、2回牽制球をなげたが、修二のリードは縮まらない。
小林が初球を投げると、修二がスタートするふりをした。
高めのボールだった。
そして2球目また修二はまた走るふりをした。
またもやボール。今度はスライダーだった。これで2ボールとなった。
司はまた陽一にサインを送り、陽一は古屋監督を見るふりをして、横目でちらちらと司のサインをみた。
3球目はカーブだった。そして陽一はからくもファールした。
さらに司はサインを送った。「次、逆球の内角高めがくるよ」
陽一はキャッチャーの早乙女に聞えるように「アウトコースかあ」といって、わざとリーチの長い素振りをした。
すると早乙女はまんまと引っ掛ってしまった「ここで逆球だ」小林は早乙女のサインに肯いた。

小林の投げた4球目は司の予測どおりインハイのストレートだった。

陽一は渾身の力を込めて、その球を叩いた。

そして陽一の放った打球はレフトセンター間へ弾丸ライナーとなってとんでいった。

「しまった」小林は目で球の行方を追った。

陽一の打った打球はフェンス直撃の2塁打だった。

あらかじめ深い守備位置を守っていた外野手は、すばやく中継プレーを行ったため、修二は3塁ベースで止まった。

「ちきしょー。ホームに行きたかった」と修二が嘆くと、3塁コーチの司は「これでいいんだよ」と修二に言った。


小林は危機感を感じてイライラしていた。
しかも状況はノーアウト2塁3塁で、強打者の真である。
武南は、外野を後退させ、内野はバックホーム体制の中間守備を取った。
「遠山君お願い」恵は神に祈る気持ちだった。
「真・・・」茜は両手を胸元ででしっかりと組んでいた。


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