フォーエバー・フレンズ -318ページ目

13、まけるもんか(5)

その後速見は気力で投げ続けた。

スクリューが落ちなくなり、カーブも曲がらない。

腕が重い。握力が無い。足が上がらない。

でもそれを跳ね返すかのごとく、恐ろしい程の気力で投げ続けた。

連打を浴びても、全員がファインプレーで速見を救った。

「速見さんみんながついている。頑張れ

選手達の励ましの声が、もうろうとしている速見を動かしていた。

そしてもうどっちが勝ってもいいと、観客は両校の決死のプレーに必死のエールを送っていた。


そして延長15回表

まで気力で投げていた速見は遂に淀商打線に捕まってしまった

2アウトランナー一塁で、大河内の放った打球は、陽一の頭上遥か上を越えて行って、そのままセンターバックスクリーンへと消えていった。

打った瞬間に入ったとわかり、大河内はバッターボックス上で吠えまくった。

。この大河内の本塁打で遂に淀商は勝ち越した。


15回表が終わると、時刻は午後4時半になっていた。

回全てを投げ終えた速見は、これから夕焼けが差しかかろうとしている甲子園の空を見上げた。

最後に点こそ取られたものの、なんとか投げぬいたのだ。

予選大会から全て一人で投げ抜き、そして今日ここに熱い200球で、速見の熱投は幕を閉じた。


ベンチに帰ると、速見は疲れた体を起こして、みんなに言った。

「みんな・・・今まで本当に有難う。こんな夢を見させてくれて本当にありがとう」と涙した。

すると陽一が「速見さん、まだ試合は終わってないですよ」と言って速見の肩を叩いた。

「そうだよ速見さん、まだ終わってねえよ」真言った。

「頑張って点取りましょうよ」修二も言った。

文麿は「絶対優勝だ!」と言って、大声で吠えた。

そしてみんなが一丸となって最後まで戦う事を決意し、円陣を組んだ。

そうだ、負けるもんか。

そうやって今までいろんな苦難を乗り越えてきたんじゃないか。


15回裏、港南学院高校の攻撃。

引き分けなら再試合となるが、もう速見にそんな力は残っていなかった。

なので港南学院はここで勝敗を決めなければならなかった。

だが8番の利根川、9番の慎太郎は凡打で終わってしまい、もはや万事休すとなった

2アウトランナー無しで、バッターは1番の文麿。

文麿はバッターボックスで天を仰いだ。

「由香子、目覚めているのか?教えてくれ。そしてお願いだ俺に力を貸してくれ」そう願ってバッターボックスに立った。

だが神はまだ港南学院を見捨てていなかった。

文麿の放った打球は、三遊間を抜けたのだった。

「よっしゃあ」

文麿は日が傾こうとしている甲子園の空に向かって、右手を高らかにあげた。

そして続く修二に「修二頼む!繋いでくれ!」と叫んだ。

その文麿の言葉に、修二はコクリとうなずき、バッターボックスに入った。

そして修二は渾身の力を込めて5球目のストレートを振り切ったのだ。

打った打球は、ライトフェンス直撃の2塁打となった。

これでランナーは2塁3塁となった。

もう淀商の優勝は決まったものだと、観客のほとんどがそう思っていたが、港南ナインはそれを許さなかった。


大河内は「しぶとい。ほんまにキツイなあ・・・」関西弁でつぶやいた。

次は3番の陽一だったが、大河内はまた立ち上がった。

大河内は、ファーストベースが空いているのを利用し陽一を敬遠させた。

陽一はバットをヒョイと投げて一塁へ向かおうとした際に、真と目が合った。

そして、昔を思い出したかのように拳を出して「真、頼むぜ」と言った。

すると真は小さくうなずいた。

15回裏、2アウト満塁となったフィールドに、真は最後の勝負出るのであった。

真のバッターボックスに立つ姿は、いつもより大きく見えた。

陽一がいつも言う(しん)4番とはまさしくこの事だった

何かをしてくれる。真なら何かをしてくれる。

1塁ランナーの陽一はそう信じていた。

第1球目真は大きな空振りをしたが、真は動じずにピッチャーを睨み付けた。

2球目はボールだった。

ブラスバンドはいつの間にか演奏をやめてしまい、静まり返ってしまった。

観客この一戦に固唾をのんで黙り込んだ。

球場内は、シーンと静まり返ってしまった。


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